Diary -August 2003-
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30 Aug 2003 Saturday |
「住むための機械」 と聞いてピンとくる貴方はきっと建築ファン。「建築は住むための機械である」と主張したのはル・コルビュジェでした。この言葉がもたらした誤解や本人の意図したところなどについて延々と書くのはやめにして、僕なりに都合よく引き寄せて翻訳すると、余計な装飾や変てこりんな形のオブジェなど不要、機能重視こそが快適さにつながるという住居の理想型が浮かび上がります。僕も自分の部屋についてはなるべく機能重視のレイアウト&整理整頓を心がけているつもりだけど、どうしても生活っぽくなっちゃうところはある。実際に人が生活してるんだからしょうがないね。僕んちよりずっと片付いてる人もいるだろうし、はるかにぐじゃぐじゃなモノに囲まれて暮らしてる人もいるんだろう。要するに、それぞれにとっての「快適」を追求すればよろしいのです。 話が建築からずれましたが、うちのすぐそばに安藤忠雄氏設計のマンションが建とうとしています。写真などから想像する限り、例えば同潤会アパートの近代ヴァージョンみたいなルックスで。駅からは約3分、毎日の通勤ルートに突如出現するであろうそのマンションは、ある意味仙川を代表する住居になるのでしょう。おそらくベランダが東向きにならざるを得ない立地なので、僕の購入対象にはなりません。そもそも「終の棲家」を「買う」という思想が全くないのだけれど。いつだって思い立ったら明日引っ越せるような状態でいたい。ローンという名の「借金」を背負って、その返済のために守りに入った人生を送るなんぞ笑止千万。でもマンションという「城」あるいは「資産」を確保して安心するお方もいらっしゃるでしょうね。要するに、それぞれにとっての「快適」を追求すればよろしいのです。 *** まだ感想を書いてなかった映画などについて。 ★「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」(TV録画) 【粗すぎるあらすじ】 ストーリィなんてこの際どうでもよろしくて、副題から想像されるとおりの古代エジプトの謎をめぐる冒険活劇。今回の敵は「スコーピオン・キング」。ただし虫嫌いの人にはお勧めできない。 【見どころ】 先月うちのTVで突然WOWOWを見ることができた数日間に録画しておいた映画の1つ。一作目も面白かったが、この続編ではさらに大変なことになってます。簡単に言うと「インディ・ジョーンズ」シリーズをB級にアレンジし直して、CGを激しく多用&アクション8割増しにした「誰にでも分かる」冒険活劇。とにかく分かりやすい上に、息をつく間もないほどに見せ場また見せ場の連続で2時間もたせてしまうところがすごい。ちっとも洗練されていない大莫迦映画ですが、大金を投じてこんな尋常でない映画を作ってしまう製作者の心意気には素直に尊敬の念を覚えます。 前作で結ばれたブレンダン・フレイザーとレイチェル・ワイズが結婚して子供をもうけた設定になっていて、このガキが謎解きに大活躍。濃ゆいキャラが忘れられないブレンダンは、吹き替えなしで聞くと低くてよく通る実にいい声をしてますね。レイチェルは相変わらず綺麗でルックス的には非常に好みだし、英国人らしい発音も大好き。今回は古代エジプトモードでの激しい格闘シーンを十分に堪能することもできます。 全米で人気のマッチョなプロレスラー、ザ・ロック扮する「スコーピオン・キング」の特殊映像のチャチさに激しく落胆させられるのも計算のうちか。前半で大いに煽った割にはあっという間に死んでしまい、「もっと活躍を見たい!」という声に応える形でこのシリーズ第3弾としてハムナプトラ外伝「スコーピオン・キング」が映画化されたのも記憶に新しいところですが、早くも続編が楽しみ。 ★「ウルフ」(TV録画) 【粗すぎるあらすじ】 出版社勤務の冴えない中年男が、狼に咬まれて次第に狼男に変身。計り知れないパワー(精力絶倫!)を持つようになると同時に、悲劇の足音が… 【見どころ】 ジャック・ニコルソン主演ですよ。ミシェル・ファイファー共演ですよ。なのに一体どうしてこうなってしまうんですか。結論から言えば脚本家の失態である。設定は悪くない。どう転がすも自由の面白い題材だ。であればこそ例えば狼男の能力を得たニコルソンに、出版社のいけ好かない役員や部下に気の利いた復讐を遂げさせ、ミシェル・ファイファーのような素敵な女性と夜ごとの逢引きを重ねさせるような、ポジティヴでロマンティックな展開はできなかったものか。世の中年男性たちにちょっとばかり元気を与えるストーリィにすることなどいとも簡単だったはずなのです。 だがここでニコルソン演じる中年男は転落の一途を辿ります。狼と化した彼は鹿を殺して貪ったり、公園に出現するギャングの指を食いちぎってしまったりする。それも無意識のうちに。要するにあれだ。『ザ・フライ』の二番煎じだ。多分製作者たちの頭にはあのテーマがあったのでしょうけど、それにしては狼男のメーキャップは中途半端だし、何より展開のテンポが遅すぎてもう圧倒的にダレる。大体あのラストシーンは何だったんだろう… リサーチ不足で彼女と映画館に観に行ったりしたら、終わった後に気まずい沈黙に包まれること必至の1本。かといって誰と観に行くべきか検討もつかない(もちろん独りで観ても虚しさ満点の)作品なのでした。 ★「ベアーズ・キス」(シネセゾン渋谷) 【粗すぎるあらすじ】 これまた変身もの。熊かと思ったら人間だったり。そんな彼に恋しちゃったり。 【見どころ】 動物/人間の交流を描いたファンタジックなサーカス型ロードムーヴィー…と言えなくもないが、一歩間違えばキワモノ獣姦映画だよ(笑)。この種のファンタジーはどこまで感情移入できるかがすべてなのかなあ。細かいエピソードやシーン描写にあれこれ言ってみても何も始まらないような気もします。セルゲイ・ボドロフ・Jrの遺作となった点を除けば、おそらく自分ひとりでは観に行かなかったと思われる映画なので、縁というのは不思議なものだと思いながら劇場を後にしました。 女の子(レベッカ・リリエベリ)が可愛かったことと、最後のスペインからシベリアまでの移動がやけにあっという間だったことが印象に残りました。 ★「スティール 鋼鉄の救世主」(TV録画) 【粗すぎるあらすじ】 正義の味方、「鋼鉄の男」が悪を叩きのめすのだ! 【見どころ】 LAレイカーズのというより、アメリカ全体のバスケットボール界を代表するセンタープレイヤー、シャキール・オニールが主演。それ以上でもそれ以下でもないので、深夜枠で字幕で観られれば十分でしょう。ヒロイン役はホワイトの華奢な女の子。しかも脚を負傷して車椅子生活になっちゃう。彼女とタッグを組んで悪と戦うシャックなのだけれど、そんなインターレイシャルな交流もテーマなのかな。(実際にはベッドどころかキスシーンもなし、人差し指をETのように触れ合わせるだけですけど) シャキール・オニールが「鋼鉄」のボディスーツを着て変身した姿はお世辞にもカッコよいとは言えないし、特撮のチャチさにもビクーリしますけど、巨体の割に敏捷な動作、ごつい割に人なつこい笑顔、上手くはないが味のあるシャックの演技や台詞回しなどはそれなりに楽しめますよん。中古CDショップに山積みのサントラも実はなかなか佳曲が多くて個人的にはお気に入りなのでした。 |
24 Aug 2003 Sunday |
「夏の終わりの大団円」 今日は楽しみにしていた「東京JAZZ2003」。いやあ、すごいことになりました。各出演者とも見せ所を意識した演奏で大いに楽しめたのですが、最後の最後、代打のChaka Khanが出てきたところで完全にスタジアムの空気が変わり、全ての美味しいところを持っていってしまう物凄いライヴに。詳しいレポートが書けるのは欧州出張その他全て終わった10月くらいかなと思っていますが、はっきり言ってあの75分間のためだけにGシート12,000円払ったとしても惜しくないくらい凄まじいステージでした。Chakaは間違いなく現在最強の女性ヴォーカリストのひとりですが、素晴らしい声を全開にして、ほとんどぶっつけであの演目をこなしちゃう「プロのお仕事」ぶりに心底感動。…しかもバックバンドはハービー・ハンコック・トリオ。有り得ない豪華さに目と耳がつぶれました。 僕にとっての夏はこれでおしまい。 あとは急速に秋モードに生活を切り替えます。 |
23 Aug 2003 Saturday |
「商社と歯医者」 就職するときどちらにするか迷いませんでした? なんて。有り得ない。かといって勝者と敗者のどちらになりたいかを迷う人もめったにいないんだろうね。どうして人は勝ち負けをつけたがるんだろう。 ちょうどお休みの土曜日に高校野球の決勝戦がぶつかってくれた上に、今大会非常に注目していた2つの高校の対戦とあって、数年ぶりに最初から最後まで試合をTV観戦した。結果は木内マジック炸裂で常総学院の初優勝(夏)。東北のダルビッシュ投手も粘り強く9回を投げきったけれど、細かいところで詰めが甘かったようだ。東北地方以北の高校が優勝したことはないらしい。冬場の練習不足が避けられない環境だから致し方ないとはいえ、ここまで本当によく健闘した。それは東北のみならず、日本中の高校野球ファンが認めるだろうと思うよ。東京のお昼も暑かったけれど、敢えてクーラーなどつけずに氷水など飲みながらTV観戦するってのもなかなか乙なものでありました。 *** 先日書いた東京JAZZ2003、ダイアナ・クラールの穴に Chaka Khan が入りました。これはこれで相当楽しみな展開。ぶっつけでどこまで盛り上げてくれるか、ベテランならではの腕の見せ所だね。 |
22 Aug 2003 Friday |
「取手二高」 いよいよ夏本番、ちょっと出遅れましたが東京も暑さ全開。夏の風物詩、高校野球もベスト4が出揃って今日は準決勝です。参加高が出揃って以来、個人的にずっと注目していたのは茨城の常総学院。甲子園でもお馴染みの木内監督率いる同校は、ここ数試合の戦いぶりを見ていてもちょっと高校生離れしてますね。ダルビッシュ投手を擁する東北高校も素晴らしい試合をしているので、できればこの2校がぶつかる決勝戦を見てみたいものです。すっかり生徒にも浸透した「木内マジック」ですが、どうやら今年で監督業は引退する予定とあって、高校野球ファンにとってはちょっと寂しいニュース。職場においても木内監督のような人が上司だったら理想なのかもしれないのにね。 さて木内監督を見ると、前職の取手二高時代の試合を熱心に見ていた頃の自分を思い出します。試合に勝ったあとに甲子園に同校校歌が流れると、スタンドでは観客が試合中我慢していたトイレに一斉に向かったといいます。その校歌はこう歌われていたから。「♪トイレに行こう、トイレに行こう〜」 …空耳アワーかよ。 *** 今夜はTVでアニメ映画「火垂るの墓」が放映されますね。この季節の定番ですが、まだご覧になっていないお方にはちょっとお勧めしてみます。僕は激しく泣きそうなのでしばらくは観ない予定ですが、初めて観た時には心の深いところをかなり抉られました。それはマジッド・マジディ監督の「運動靴と赤い金魚」などから受ける感覚にも通じる。野坂昭如氏はTV出演などを見ていると訳の分からないオヤジみたいにも感じられますが、少なくともこの1作(の原作)については僕は絶対的に高く評価しています。 *** 超楽しみにしていた24日(Sun)の東京JAZZ、スーパーユニットを除けばこの日のトリだったダイアナ・クラールがウィルス性感冒で急遽来日中止に。ちょっと残念。でもオープニングアクトに現在話題の女子十二楽坊が決定したというニュースもあって。とにかく、せっかくだから楽しんでこよう。 |
19 Aug 2003 Tuesday |
「King of Pain」 …ザ・ポリス、83年全米3位。スティングはこの手の自虐的な歌詞を書かせるといつだって最高の切れ味を見せる。 *** 僕の人生に大きな影響を与えている本が幾つかある。そのひとつが千葉敦子の『ニューヨークの24時間』だ。シングルでシンプルなライフスタイルといい、日本人という存在への疑問といい、限りある人生の時間の貪欲な使い方といい、彼女から示唆を受けたものは数知れない。そのひとつが新聞記事の切り抜き方だ。文春文庫版の同書を愛読しているが、その34ページにはこうある。 「読んでいて、切り取っておいた方がいい、と思う記事に出会ったら、裏の記事を読んでから切り取ります。ゴム印で切り取る記事に日付を押しておきます。また、切り抜きの余白に、切り抜いたとき思いついたことや、記事を読んだ感想を書き付けておきます。」 僕は赤ペンで日付を手で書き入れるが、基本的には彼女と同じようにすぐ記事を切り取るようにしている。彼女は定期購読しているニューヨーク・タイムズをベースに、経済関係で重要なニュースがあったときは、外に出て「ウォールストリート・ジャーナル」を買うというが、残念ながら僕は朝日のほかに日経新聞まで購入することはほとんどない。もっとも日経を含め毎日・読売・産経を職場で読めるので、同じニュースを異なる立場から書くとどうなるかをざっと目で追いかけるようにはしている。 重要なのはこの後だ。切り抜きにあたり、彼女は決して鋏を使わない。 「私はずっと、三十センチのスティール製の物差しを切り抜きの道具として使っています。物差しを当ててピッと破り取るのが一番スピーディーだと思っています。」 僕はスティール製の物差しを持っていないのでプラスティック製のもので代用しているが、要するに鋏を使わず、物差しを当てて破り取るところがポイントだ。これは切り抜きを圧倒的に効率化する。新聞記事は妙な形のブロックにレイアウトされていることも多く、鋏を使うと何となくその形に切り取ろうとする傾向があるが、物差しを使うとそれもなくなる。つまり、最大の出っ張り部分を含む長方形に切り取るようになるのだ。これがスピードを驚異的に上げる。その上、周辺の余計な記事を(多少)含んだ切り抜きになる。ここにチラリと書かれた文章がその後突然インスピレーションになることも多い。 「切り抜いた記事は、いったん四角い中国製の籠の中に入れておいて、夕方TVを見ながらキャビネットの中のそれぞれのファイルに入れます。 ファイルはマニラフォルダーを使っています。マニラフォルダーというのは、薄茶色のマニラ紙で作られた、二つ折りのフォルダーで、ここに切り抜きを、日付順に挟むのです。」 そう、切り抜きは決してスクラップブックなどに貼り込んではいけない。きちんと貼り込まれたスクラップブックほど死蔵される確率の高いものはないからだ。間違いなく作ることで自己満足に陥る、危険な時間泥棒なのだ。切り抜きは籠に放り込む。そしてその日のうちに分類する。千葉敦子はジャーナリストだから記事=ソースを保管しなくてはならないわけだが、僕らにはその必要すらない。記事の要点をメモ帳にまとめ、切り抜きはすぐに捨ててしまうべきだ。この時、記事をそのまま書き写すことはできるだけ避けねばならない。それは膨大な時間の無駄だし、思考能力の放棄だからだ。100ある文章を20とか10に圧縮してメモする訓練をすべきだ。大抵の文章は8割方水増しされている(このテキストだってそうだ)。自分にとって本当に必要な本質はどこなのか、それを自分なりの文章で書き直すとどうなるのかを考える。ちょっとした訓練の積み重ねが、あとあと効いてくる。これだけの手順を踏んで書き込むと、メモはすっかり自分の中に取り込まれる。そもそもメモ帳を見返す必要もほとんどなくなるくらいだ。 要するに僕は部屋が散らかっているのが苦手らしい。新聞や雑誌が溜まっているのには耐えられない。だから新聞は必要な記事をどんどん切り取って残りは捨てていくし、そもそも雑誌はほとんど購入しない。CDは数千枚に増えてしまったが、基本的にきちんとアルファベット順に整列してあり、どこに何があるかを把握している。人は30年以上生きてくると、それぞれこうして自分なりのライフスタイルを構築していくものだ。僕の場合は余計なものを増やさず、余計なトラブルを避け、自分の時間をしっかり確保する方向に向かっているようだ。 *** さてそんな僕が8月14日の朝日新聞総合面から30センチ物差しでピッと切り取った記事はこのようなものだった。「終末期がん激痛 仕組み解明」。終末期のがん患者は激しい痛みに見舞われるという。知識としては知っているし、肺がんで死んだ祖父も最後は激しく苦しんだのを覚えている。これは神経因性疼痛と呼ばれるもので、神経細胞そのものが損傷を受けて起きること、モルヒネや抗炎症鎮痛薬では効かず効果的な治療薬がないことまでは分かっているが、詳しい仕組みは分かっていないものだったそうだ。今回その仕組みが解明されたことにより、数年のうちに薬が開発されることが期待されている。 終末期のがん患者に対してどのような治療を施すべきか、さまざまな議論がある。祖父の最期の数日の様子は僕ら孫にははっきりとは知らされなかったが、苦痛を和らげる方向で何らかの対処を行った可能性もあると想像している。医療の現場にいない自分は、絶対に助からないと言い切れる状況で、激しい苦痛を取り去ることができない場合には、ホスピスのような形で終末期を充実させたり、最悪のケースでは安楽死も許されてしかるべきではないかと考えることがある。だが現実に自分がその場に置かれたらどうなのか。神経因性疼痛の仕組みが解明されたというニュースを、がん看護学を学ぶ僕の友人はどう読んだのか、ちょっとだけ気になった。 痛みや苦しみのない世界が訪れてほしいと思う一方で、痛みがあるからこそ人は優しくなれるのかもしれない、と思ってみたりもする。 |
17 Aug 2003 Sunday |
「My Ever Changing Moods」 …スタイル・カウンシル、84年全米29位。アメリカじゃ唯一のトップ40ヒット。 それはさておき「変化」といえば、思うところあって生活様式にいくつか特筆すべき変更を加えつつある。まあ、そもそもが平凡な生活なのでたいした変化でもないのだけれど。 まず最初に、あまり料理らしい料理をしなくなったこと。週末であってもせいぜい今日のようにキャベツと茄子の味噌汁を作って、ほっけを焼いて、納豆とキムチでご飯を食べるくらいのものだ。平日に至ってはもっとひどくてほとんど外食になっている。今の残業ペースでは無理もないので、せめて食べるときには栄養バランスを考えるようにはしているが、本当の理由は外食の方がコストが安いからだ。えっ?と思うかもしれないが、ここでいうコストは金銭的なものだけではない。確かにひとり分の食事を作るのは金銭的なコストも決してお得ではないのだが、主として準備から後片付けまで含めた時間的なコストを指して安いと思うようになったのだ。料理にはコストで割り切れないストレス解消的な要素があるのはよく分かっているので、十分な時間があって他にすることがない週末などはきっと何か作ってみるのだろうけれど、今はその時間があったら他にすべきことが多すぎる状況のようだ。 次に、3冊100円のミニノートをメモ帳に使うのをやめてしまったこと。理由はいくつかあるのだけれど、一番大きいのは以前も感想を書いたボナ植木の「書斎がいらないマジック整理術」(講談社+α文庫)の影響かな。ミニノートは文庫本と同じ縦横サイズで十分コンパクトだと思っていたのだが、実際のところはこれでも大きすぎる。とにかくメモ帳というのは肌身離さず携帯していなくては意味がないのだ。また、このサイズで中綴じだと片手で書くことができない。つまり、常にもう片手でページを開いておいてあげないと事実上書けないのだ。特に電車の中など立っている時に思いついたことを書くのがほとんど不可能ということになる。読む時も同様で、特にざっと書いたメモをPCなり別の紙に転記したりする際に何か重しでページを押さえなくてはならない。これは非常なストレスになる。 そこで100円ショップダイソーで見つけたのが、定期入れと同じくらいのサイズのスパイラルメモ。これなら立ったままでも手のひらの上で字を書くことができるし、何より胸ポケットにいつも放り込んでおくことができる(ついでに定期入れも極薄のものに変更した)。これがただのメモ帳と違うのは、表表紙と裏表紙がプラスチック製であること。つまり頑丈なのだ。実はなかなか重要なポイントで、胸ポケットのないTシャツの着用機会が多い夏場はメモ帳の携帯に苦慮するものだが、この作りならジーンズの後ろポケットに突っ込んで街に出ても大丈夫。あまりにも気に入ってしまったので、ダイソーに残っていたベージュ表紙の7冊を買い占めるという大人買い暴挙に出てしまう。他の色はグリーンやブルーで、シャツの胸ポケットに入れるにはちょっと…というものばかりだった。カメラ付きPHSの導入で電話/メール機能と写真メモ機能を一体化したのに続き、あらためてモバイルライフについて考えさせられる日々。当たり前のことだが、持ち歩くためには小さくなくては意味がない。さらに妥協なく見直しを進めていきたい。 最後はかなりどうでもよいことで、トイレに「ブルーレットおくだけ」を導入したこと。もともとこのマンションに引っ越してきた3年半前にも新居用揃えるものリストに入れていたのだが、とある人から「別に要らないんじゃない?」と言われて「そうかな」と納得して買うのを止めていたのだった。まあこれまでなくても別に困らなかったものではあるけれど、要するに気分転換をしたかったのだ。あらゆることにおいて。今のところ快調に機能しています。自分が買ったのはオーソドックスにブルーの水が流れるものだけれど、最近は効用は同じで水は透明のまま流れるものもあるんだね。 *** 止んだと思った雨が思い出したように降り始め、結局日曜日の最後まで降り続いた週末。来週後半からはどうやら夏の日差しが戻ってくるらしい。すべての皆さんにとって、良い一週間になりますように。 |
16 Aug 2003 Saturday |
「Rain keeps on falling, rain keeps on falling down, down, down...」 などと鼻歌でシンプル・マインズなど歌っている場合ではない。一昨日から降り続く雨は今日も止まず、東京では8月ひと月分の雨がこの数日でまとめて降った計算になるそうだ。特に外出の用事もないので静かに引きこもったまま身体を休め、発売日に買うばかりで最近まともに読んでいなかった「ひとり暮らしをとことん楽しむ」を数冊ぱらぱらとめくったりする。最新号は雑貨&家具の特集なのだけれど、雑貨を増やす方向は僕のライフスタイルとは相容れないので実はあまり参考にならない。紹介されている部屋のレイアウトも何だか広いものが多くて、当初の「6畳一間で楽しく暮らす」というコンセプトが失われているような気も。ソファを置く生活には一瞬憧れたことがあるけれど、ベッドとソファを両方置けるほど広大なスペースはないし、ソファベッドのようなソファとしてもベッドとしても中途半端なアイテムは購入する気になれない。結局、今の家具の配置がベストという結論に達する。 *** 雨で買い出しに行く気力も出ないので、買い置きしてあった保存食が役に立った。お昼は冷蔵庫の残りものだったキャベツをたっぷり入れた焼きそばを作り、キャンベル缶を温める。これはスープというよりクリーミィなポタージュなのだけれど、ポテトがごろごろ入っていてすごく充実感がある。キャンベルの缶のデザインは本当に秀逸だ。食べるのが惜しくてずっと取ってあったけれど、また買ってくることにしよう。 郵便受けを覗くと下高井戸シネマから9月・10月に向けての上映スケジュールが送られてきていた。9月6日〜19日までモーニングショーで「おばあちゃんの家」、メイン時間帯は「めぐりあう時間たち」を上映予定。ロンドン/ミュンヘンへの出張は6日出発の14日戻りのためかなり重なっているが、15日(月)が祝日だから何とか観ることができそうだ。同日は夕方から東京国際フォーラムでイエスの来日公演もあるのでかなり忙しい。まだ時差ボケでぼんやりしてる頃だろうなぁ。20日〜26日はメインで「アバウト・シュミット」、やはり1週間がいいところだろうけれど、この際だから観てあげようかな。本当に観たいのはこの前後にモーニングショーとレイトショーで予定されている「D.I.」。中東やパレスチナの状況は僕の日常生活からは非常に遠いところにある。遠いけれども少しでも理解したい、そんな時映画は何より素晴らしい教科書になってくれるはずだから。「トーク・トゥ・ハー」や「デブラ・ウィンガーを探して」も予定されており、相変わらずこれからも下高井戸シネマでいろいろな映画を観ることができそうだ。 *** 夕方、雨の合間に駅前に出てみたら、カルディで久々に「にごり白生」を発見。他の買い物が多かったのでとりあえず2本だけ捕獲して帰る。ちなみに賞味期限は2004年1月31日で、以前入荷していたロットとは異なるもののようだ。日本では発泡酒扱いだが中身は紛れもないベルギー白ビール。帰宅後夕食を作る合間に冷凍庫で急速に冷やして、食後に飲んでみたらやっぱり美味しくて。何ともいえない「酵母感」に酔いながら、雨の休日がまた終わろうとしている。 |
15 Aug 2003 Friday |
「金曜日のスケッチ」 なかなか過ぎ去らない仕事のピークと闘いながら、今日は1日だけお休みをいただく。夏期休暇は5日付与されており、7月から9月までの3ヶ月間に消化することとされている。原則として連続取得せよとのことだが、今年の自分はとてもその余裕がなく、こうしてバラで身体を休める程度。来年度はぜひ時間のやりくりができる部署に異動して、夏期休暇でイングランドやアイルランドやスコットランドを歩いてきたいな。 そのイングランドをはじめ、欧州が大変なことになっている。猛暑という響きに慣れきった僕らにとっても、スイスで41.5度、フランスで42.6度といった気温が通常ありえないものであることくらい分かる。英国でも38.1度。地下鉄には冷房設備なんてないというのに、一体どうなっているのか。フランスではブドウの生育が素晴らしく、今年は数十年ぶりのワインの当たり年になりそうだが、そう喜んでばかりもいられない。世界各地で異常気象になっているわけで、子供の頃読んでいたSF小説のような事態がどうやら現実になってきたということなのだろう。日本においても然りで、昨日から今日にかけての東京なんてやはり「異常」と言う他ない。長雨と冷夏で片付けるのは簡単だが、昨日の最高気温が22.8度、それも夜中に記録したもので後は下がり続け、午後1時には20度を割っていたというのだから尋常でない。平年より8〜9度低い「真夏」になっているわけだ。雨降りの涼しい日に本を読んだり音楽を聴いたりするのは大好きなので、個人的には嬉しいけれど、やはり何か気になる。 アメリカからは北東部で大規模な停電発生のニュースが飛び込んできた。TV画面では何とブルックリン・ブリッジを多数の人が歩いて渡っている。マンハッタン全体が停電するという事態を想像するだけで信じられない思いだが、NYのみならず近郊の州、さらには国境を超えてカナダまで大規模にブラックアウトしたらしい。トロントに住む友人のことが気になっていたが、つい先ほど無事を知らせるメールが届いて一安心。テロではないというものの、電気や通信といった文明の利器に依存しすぎた社会の脆弱性が明らかになったと言えるだろう。そもそも電気がなければこの Diary も、ネット自体も成り立たない。僕らはいったん知ってしまった生活水準を急激に元のレベルに戻すことができるだろうか。 *** 先日出かけたミック・ロック写真展のレポートですが、どうにも気に入らなかったので後半部分を大幅に書き直してみました。写真を撮り続けることは、みずみずしい感性を保ち続けることであり、写真を見返すことは、自分の感性の衰えを感じることでもあります。どちらも大切なことであって、要するに両方のバランスをとりながら前向きに生きることが肝要です。文章を書くという行為においても然りですね。 |
10 Aug 2003 Sunday |
「やれやれ」 皆様よくご存知のように、物欲という奴は一旦火が点くとなかなか手に負えない代物です。というわけで、台風の中恵比寿ガーデンホールに Soft Works を観に出かけた帰りにこんなCDたちを買い込んでくる羽目になりました。どうやったらこういうダサいセレクションになるのか、自分でも皆目見当がつきません。 "THE BEST OF JACKYL" - Jackyl(800円) チェーンソーを振り回すプレイで知られる米国南部のハードロックバンド。AC/DCそのまんまと言えばそうだけれど、単純すぎてクセになります。 "THE VERY BEST OF UGLY KID JOE - As Ugly As It Gets" - Ugly Kid Joe(600円) そういうのもいたねぇ、というのが大方の感想だろう。大体ベスト盤が出ていたこと自体がオカシイ。ジャケのやる気のないイラストも最高な1枚。 "KEEP THE FIRE BURNIN'" - Dan Hartman(580円) もう2回目か3回目になる買い戻し。選曲といいヴァージョンといい、ベスト盤としては決して使えないが、とりあえず持っていても困らない。"Free Ride" はいつ聴いてもカコイイ。 "CLASSIC PARLIAMENT" - Parliament(650円) 2000年発売のリマスター・ベスト。パーラメントは音だけ聴いていても何が何だかよく分からないかもしれないが、とりあえずサンプリングソース集として使える1枚。 "MODERN CLASSICS - THE GREATEST HITS" - Paul Weller(1250円) これも買い戻しかな。「リトル・ダンサー」で Jam の曲があまりに良い使われ方をしていたのでついポール・ウェラー先生強化週間に入ってしまいました。 "THE COLLECTION" - Gun(800円) 個人的には一番嬉しかった買い物@新宿ユニオンメタル階の未開封売れ残りコーナー。悲しくて泣けてきたよ。全17曲で未発表曲もないけれど、後生大切にしてあげるね。 "NOTHING SAFE" - Alice In Chains(800円) ようやく自分の納得できる価格で見つかった。日本盤の方が1曲多いのは知ってるけどもういいや。蛍光オレンジのケースを割らないように気をつけよう。 "ESCAPE" - Journey(800円) 96年のリマスター盤。1枚もののベスト盤だと "Still They Ride" が入っていないので買わざるを得ない。"Stone In Love" などカッコいい曲満載。 "INSIDE JOB" - Don Henley(600円) そろそろ拾ってやるか、という値段だったので。決して悪い作品ではないのだけれど、もう少し軽くてコンパクトな楽曲があれば良かったのにな、とは思います。 *** 一転して強烈な日差しが照りつける真夏日となった台風一過の日曜日。掃除機をかけ、お皿を洗い、布団を干して、洗濯をし、靴を磨いて、コーヒーを淹れているとあっという間に夕方になります。ジムに出かけてトレッドミルで走り、さらに各種の買い物を済ませて家に帰り着くともう夜。それでは明日からの1週間に備えてもう眠ります。皆さんオヤスミナサイ。 |
8 Aug 2003 Friday |
「Rock You Like A Hurricane」 昔はあんなにダサくてカッコ悪いと思っていた Scorpions が、今じゃこんなにカコイイ音楽に聞こえてしまうんだから困ったものだ。やれやれ。 先週から今週にかけては本当に忙しかった。やっつけてもやっつけても現れる亡霊のような仕事の嵐と戦いながら、ロールプレイングゲームの主人公になったような錯覚に囚われながら。どうやら本当のピークは乗り切ったかな? 来週は毎晩終電までには帰れそうです。 今夜は新宿を22時過ぎに出ることができたので、雨の合間を縫って迷わず下北沢に向かった。CDでも買って散財しなきゃやりきれない気分だったから。シンプルライフを目指す自分でも、衝動買いや自棄買いの効用くらいは良くわかってる。確かに一時的にモノは増えるし、その後少々自己嫌悪にも陥るけれど、本当にどうでもいいモノなら中古屋やオークションに売りに出してしまえばいいし、時には掘り出し物に当たったりもするのだから良しとしよう。身体を痛めつける自棄酒なんかに比べれば遥かにスジがいいストレス発散法だ。 22時半過ぎから買い物ができる中古CDショップは限られているが、23時閉店のレコファンはすっ飛ばして午前1時まで営業のDORAMAに入り浸ることに。ざっと店内を見て回るうちに、僕の両手には10枚を超えるCDが「お買い上げ候補」として蓄積されていく。これを選別していく作業がまた苦しい&楽しいのだ。今日の予算は3,000円、映画「エルミタージュ幻想」を諦めた分を加えてもMAX4,000円。シーリングがかかった時点で Texas のベスト盤(1,180円)や Atlanta Rhythm Section のリマスター・ベスト盤(780円)などが次々と脱落して元の棚に戻されていく。先日知人宅で大きなスピーカーで聴かせてもらったら改めて大感動した Basia の "THE SWEETEST ILLUTION" の買い戻しも580円という価格で断念。このディスクの適正な中古市場価格は今や300円以下だからだ。Jill Scott のスタジオアルバムも1,180円では手が出なかった。3桁、できれば700円前後で買いたい作品だ。 だからといって最終的な買い物が美しいラインナップになったかというとそんなことはなく、いかにも自分らしいダサいセレクションになってしまった。 "GOLDEN STATE" - Bush (780円) "MORE THAN YOU KNOW - The Best of Martika" - Martika (580円) "TO VENUS AND BACK" - Tori Amos (2枚組、1,180円) 世間で攻撃されるとすぐに応援したくなる判官びいきなものだから、実はブッシュは全アルバム律儀に購入している。正直言って毎回可もなく不可もないのだけれど、逆に言えば非常に安定した作風で、このアルバムの中にもなかなかカッコいいロックが数曲含まれている。Gwen Stefani と結婚してから作風が変わるのかどうか、夫婦デュエットが実現しちゃったりするのかどうか、次のアルバムも楽しみだ。マルティカは80年代洋楽ファンならプププと笑ってもらえるポイント。97年に出ていたベスト盤をまずまずの価格で購入できた。"I Feel The Earth Move" "More Than You Know" "Toy Soldiers" "Martika's Kitchen" "Love... Thy Will Be Done" とチャートヒットすべてがシングルヴァージョンでの収録。その他アルバムカットやリミックスなど多数収録、特に15曲目の "Toy Soldiers" (Japanese Version) の忠実度は抱腹絶倒なのでファンならマストの1枚。デビー・ギブソンやティファニーと比較するのは気が引けるけれど、忘れてほしくはない結構実力派女性vo.だったんだけどね。3枚目のトーリ・エイモスは納得価格で買えるまでずーっと探し続けていたもの。スタジオ+ライヴの変則的2枚組で、個人的に熱烈にシングル盤などを買い漁っていたのはこのアルバムまで。台風の大雨の中、週末はこのアルバムをじっくり聴きこんでみよう。 さらにDORAMAの別店舗・古本屋さんにも足を運び、スティーヴン・キングの「ドリームキャッチャー」(1巻〜4巻、新潮文庫)のセットを何と1,100円でゲット。今年邦訳されたばかりの新作で、1冊当たり定価650円程度であることを考えると、とても良い買い物ができた。白石 朗さんの翻訳も好きな方なので、これまた嵐の週末のお楽しみ。それでは皆さん、Have a nice weekend! |
3 Aug 2003 Sunday |
「お知らせ」 9月の欧州出張を控えて、仕事が非常に立て込んできました。しばらくの間更新ペースを落として、Diary は基本的に週末にアップさせていただきます。たいへん残念ですが、どうかご了承くださいませ。 *** 日曜日の午後。 僕の住む仙川では毎年恒例の「おらほ仙川夏祭り」が行われた。この街に住んで4年目に入るが、祭りを見たのは去年が始めて。浅草サンバカーニバルの常勝チーム「バルバロス」の熱気あふれる華麗なパレードに惹かれて、今年も出かけた。普段は閑静な住宅街だと思っていたのに、祭りの会場には信じられないくらいたくさんの住民が出てきている。女の子たちは浴衣を着て、大人たちはビールを飲み、出店ではりんご飴や焼きトウモロコシや綿菓子やお面などが売られている。僕らの遠い記憶にある「夏祭り」の姿が、ここに突如として出現している。 ステージで繰り広げられるさまざまな出し物、レジャーシートを敷いて楽しむ3世代家族のふれあいの時間、暗がりで語り合う浴衣少女たちと同級生の男の子たち。それぞれの駆け引き、めいめいの思惑。みんな、この夏限りの思い出に変わっていく。夏祭りの最後はいつだってちょっぴり寂しい。ここから何かが始まるというよりは、何かが終わるシーズンに思えて仕方がないから。 「浴衣着て 少女の乳房 高からず」。 毎年引用する高浜虚子の句だけれど、今年もまた、帰り道の僕の心に去来したのはそんなフレーズばかりなのだった。そうそう、今年のパレードには近所に住んでいるという宍戸錠が飛び入りして楽しそうに踊っていたことを付記しておこう。この辺の飲み屋によく出没しているらしい。「こんばんはー、宍戸錠でーす!」と挨拶する彼は住民からやんやの喝采を浴びて気持ちよく去っていったのだった。 |
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