●ベンド、ビブラート、グライドのパラメータ(VIB/BEND、GLIDE) |
9.ベンド、ビブラート、グライドのパラメータ(VIB/BEND、GLIDE)
1VCOの音作り最後の項目です。ここではベンド・ビブラート・グライドを覚えます・・・が、すでにパラメータシート内には数値が記入されていますよね?
これはベンドやビブラート、グライドは特に個人差が大きい部分ですので、一応「汎用」と思える数値を入れてあるに過ぎません。
音色づくりにおいてこの3つのパラメータはその人その人の噛み方・噛み合わせ、ベンドプレートやグライドプレートの触り方、はたまたベンドプレートにセロテープを貼ってあるかないか、各種ツマミの位置等々様々な要因があるので、「コレ」と指定できるようなものではないんです。よって、説明と音色作成時のコツのようなものを記載しますので、後は個人個人で数値を上下させて自分に合った設定を見つけ出して下さい(まぁ、大抵はこの設定でツマミをいじれば済むようなものですけど・・・便利な使い方は9−3.で。)。
9−1.ビブラート
まず、EWIの場合、WXシリーズやLyriconに代表される「吹き口にリードのあるウィンドシンセ」や生木管楽器(サックス、クラリネットなど)とは違ったビブラート方式が採用されています。これらEWI以外のビブラートは大抵「ベンド」と言って、圧力によって音程自体を上下させる・・・つまり強く噛んだままなら音程が高く、力を抜いたままだと音程が低くなる・・・という方式です。ようするにEWIのベンドが口に付いたものだと思って下さい。
EWIのビブラートはどうかというと、マウスピースを一度噛むと、中にある「リップセンサー」が反応し、「LFO」という「波」を一回出す方式になっております。弱く噛んだ時には「弱い波」が強く噛んだ時には「強い波」が発生(つまり波の高さ)します。また、噛んでから離した(力を抜いた)時間が波の幅になります。
この「波」で音程を制御すればビブラートが出来るって寸法です。
なお、ここで言う「LFO」というのは3000mや3020mにある「LFOパラメータグループ」を設定するわけではないということに注意して下さい。名前が同じでややこしいのですが、「LFO」パラメータグループは外部音源として使うためのものですので。
さて、実際の設定方法ですが、VIBパラメータグループ(3020mは「MODパラメータグループ」の「VIB→●●●」)のパラメータを見てみましょう。
各々VCOだのOSC-AだのVCFだのお馴染みの名前がお目見えしてますね?
ようするに「波」で制御したい項目を選択(数値を入れる)してやれば望みの効果が得られる仕組みです(3000mは音程のみ制御可能)。
また、VIBパラメータグループは今までのように「SOURCEが2つあるから2つ」というような類の物ではないため、ひとつの音源にひとつしかありません。つまり、EWV2000・3000mの場合はSOURCE-1、SOURCE-2をひとつのパラメータがまとめて制御するということです。
では、以下各パラメータの説明に入ります。
●「VIB-VCO(EWV2000)」、又は「VIB DEPTH(3000m)」、又は「VIB→OSC-A,OSC-B(3020m)」
EWV2000は「VCO」、3020mは「OSC-A」、「OSC-B」と表記されます(3000mは後述)。
「OSC-A」、「OSC-B」の「OSC」というのは「オッシレータ」、つまり「VCO」と同じようなものなんだと思って下さい。そして、「VCO」というのは大元の音色と音程を制御するものでしたよね? リップセンサーで音色を制御・・・はできませんので、音程を制御するものだと解釈して下さい。
ようするに通常言われる「ビブラート」はここで設定します。
この数値を上げれば上げるほど噛む力と比例した「強い(高い)波」が発生します。
あまり数値を上げ過ぎると音程がヘロヘロになるので、通常は「8〜12」位の位置が適当だと思います。無論作りたい音(この音色は音程ヤバ目がいい!とかこの音色はビブラートなしとか)や個人差(噛む力が異常に弱いとか、ビブラートが苦手でちょっと噛むと音程がフラフラするとか)を考慮して設定して下さい。
EWV2000はVCOが2つあってもひとつのパラメータで制御しますが、3020mの場合は「VIB→OSC-A」、「VIB→OSC-B」の表記があるように、「OSC-A」、「OSC-B」別々に違う数値を設定して「うねり」を出したりもできます。まぁ通常素直な音づくりする時は「VIB→OSC-A」、「VIB→OSC-B」共に同じ数値を入れるのがよろしいかと。
そして3000mですが、これは「VIB DEPTH」の名が示す通り、音程の深さしか設定することができません。まぁ通常はそんなに問題があるわけではないので、そんなに悲観しないで下さいな。
●PWM
PWMは「PULSE WIDTH MODULATION」の略です。PULSE WIDTH、覚えてます?「6.VCOをいじってみよう」の「6−2.PULSE WIDTHってなんだ?」でやったアレです。
ようするに噛んだり離したりするたびにPULSE WIDTHの値が変わります。
まぁ、普段はあまり使わないパラメータですね。複雑な音色を作りたくなったらいじってみて下さい。
EWV2000はSOURCE-1、-2共にひとつのパラメータで制御しますが、3020mの場合は前述のOSCと同じく「VIB→PWM-A」、「VIB→PWM-B」と、それぞれ設定できます。
●VCF
噛んだり離したりすることによりVCFのカットオフが制御できます。
カットオフを忘れちゃった人は「7.フィルターを開閉させよう(CUTOFF FREQ、BREATH VCF)」を見て思いだして下さい。
こちらはPWMに比べたら「まぁ使うかな」程度ですね。特にカットオフを存分に使いたい音色を作る時はかなり有効です。前述の「VIB→OSC(EWV2000はVIB-VCO)」と一緒に使うとより効果的です。
●VCA
「VCA」は音量を変える部品でしたよね? よって、リップセンサーで音量を制御するパラメータです。管楽器奏者は「トレモロ効果」と言えば話が通じる方もいるでしょう。
一般的に「ビブラート」というと「音程変化」ですが、プレイヤーによっては音程と共に若干息圧も変化させるんです。そうすることにより、ビブラートの効果がより強調されますので、ジャズやフュージョンではよく使われます。しかしながら、口での音程と同時に腹で息圧を制御するのは非常に難しく、慣れないうちは非常に大変な思いをします。よって、EWI初心者さんが簡単に効果を得る場合、このパラメータは結構有効でして、苦労なしに「口だけ(噛んだり離したり)」で音程と共に音量も変えてくれるありがたいものです。
まぁ、この辺は好みもありますが、自分の作りたい音色や、奏法の補助で必要になったら是非試してみて下さい。
コツとしてはVIB-OSC(VIB-VCO)の数値より若干低めにかけてあげると良いでしょう。
音量変化はあくまでも薄く、ちょっとした表現力アップのために使うのが得策かと。
中級者の方で、作る音色によって狙って使うのではなく「奏法の補助」として使う場合、便利だからと言ってコレばかり頼ってしまうのはやめましょう。息圧の変化はパラメータで設定するのではなく自分の腹で変化できた方が「音程のみ」・「音程と音量」と使い分けが出来ますし、音量制御の幅を自分で調整できるほうが表現力のアップになりますので。
●その他のパラメータ(3020mのみ)
3020mの場合、他にもリップセンサーで制御できるものに「RESON」、「BALNC」、「FM」というものがありますが、ほとんど使うことはないでしょう。以下簡単に概略だけ説明します。
「BALNC」は「8.音量関係のパラメータ(BALANCE、OUTPUT LEVEL、BREATH VCA)」で覚えた「VCA-BALANCE」の割合を変化させるもので、よほどでない限り使う機会はないでしょう(面白い使い方あったら教えて欲しいぐらい)。
「RESON」はこの先やっていく「RESONANCE」の略で、音の出始めに「ミョン」とするのを制御させるのですが、普通はVCFで固定して使うか、BREATH RESOを使い「ミョン」の程度を制御しますので、これまたほとんど使うことはないでしょう。
「FM」というのもまた然り。VCOにある「OSC-FM」を制御させるものですが、これまた使うかどうか・・・といった所です。
●総括
VIBパラメータで主に使うのは「VIB→OSC(VIB-VCO)」。それに「VCF」、「VCA」の2つを場合によって足してあげる・・・という使い方を初めはしていきましょう。
9−2.EWIの命!ベンド設定
指で行なうベンドはEWIの命といっても過言ではありません。が、通常は音源本体に付いているツマミでベンド幅を好みの量に設定していると思います。
よって、このパラメータはそんなに重要ではないと思われがちですが、ビブラート同様使い方次第では非常に便利なパラメータです。
まずは説明から。
EWV2000は「VIBパラメータグループ」の中にある「BEND WIDTH(ベンド幅)」、3000mは「VIB/VENDパラメータグループ」の中にある「BEND WIDTH」。3020mはちょっと特殊で、「VCO-A」「VCO-B」それぞれの中にある「BEND UP」「BEND DW」でベンドの上と下両方の設定が可能です。まぁ、通常は全部同じ数字を突っ込んでやれば間違いありません(例外として、下はちゃんと触れるけど上が少ししか触れない・・・というような上下で個人差がある方はUPの数値を上げるぐらいかな?)。
数値は「1=半音」です。つまりこの数値が「2」だったら指をベタっと付けた時に1音下がる(上がる)し、「3」だったら「1音半」下がり(上がり)ます。まぁ前述したようにこれは「ツマミ」の位置によっても変わりますので、あくまで「目安」だと思って下さい。
3020mはベンドプレートで音程以外も制御できます。「MODパラメータグループ」の中の「BEND→●●●」という機能がそうなんですが、これまた何でこんな機能が付いているのか理解に苦しみます。よほど変態的な演奏をしたい場合以外での使い方が私には想像できません(笑)ので、触る必要ないと思います。
9−3.「VIB」、「BEND」の便利な使い方
で、便利な使い方ですが、私の例をお話しますね。
私は普段、乱暴に言うと2種類の奏法でEWIを吹いています。ひとつはEWIの特性を活かした「EWI奏法」、もうひとつはLyriconをシミュレートする「Lyricon奏法」。
これは吹き方や表現の仕方が違うのですが、ハードウェア(設定)的に違う点が存在します。
●EWI奏法
・ビブラートの幅は普通
・ベンド幅は深めに●Lyricon奏法
・ビブラートは深めに
・ベンド幅は浅めに
各々の奏法で吹く際、音源に付いているビブラートツマミやベンドツマミをいちいちいじるのはメンドクサイですよね?
それに奏法によって使う音色は大体決まっているモンです。
そこでツマミをいじらなくても、音色を変えればビブラートやベンドの設定が変わるようにしてはどうでしょう?
具体的には、
●EWI奏法
・VIB VCO:8
・BEND WIDTH:04●Lyricon奏法
・VIB VCO:12
・BEND WIDTH:02
のように。
こうすることにより、ツマミは関係なく、ボタン一発で音色を切り替えれば設定も変わるようになりますよね?
買った時すでに入っている「プリセット音」を使う場合でも、音色によって奏法が変わるというのはよくある事ですので、ツマミの設定が固まったらこれらの数値を変えて好みのものにする方が楽チンですよ。
余談ですが、私は普段ベンドプレートにセロテープを貼ってますので、数値は多少多めになっております。
この「セロテープ技」は、わざとベンドプレートの感度をニブくすることにより、ベンドの効き方が「ジワっ」と来るような効果になる定番の裏技ですが、ベンドの反応がストレート過ぎると感じる人や、触り方がどうしても急になってしまう人には本当にお勧めです。
セロテープを重ねる枚数を1枚にしたり2枚にしたり、セロテープの代わりにビニールテープやマスキングテープにしてみる・・・等など色々方法はありますので、色々試してみて下さい(普通はセロテープで充分だろうけど)。
それからツマミの位置が固まったら、ツマミが差している部分に鉛筆等で小さく印をしておくと、何かの拍子でツマミの位置がズレても簡単に元に戻すことが可能になります。ぜひやっておきましょう。
9−4.グライドの設定
グライドの速度を制御するパラメータです。EWV2000にはありません(ツマミ設定のみ)。
3000mは「VIB/BENDパラメータグループ」内の「GLIDE TIME」が、3020mは「VCO-A,Bパラメータグループ」内の「GLIDE」で設定します。
まぁ、グライド自体はそんなに頻繁に使うものではありませんし、ビブラートやベンド同様音色によって使い分けるように設定するぐらいですが、「ツマミ」と「グライドプレートを触る面積」でいくらでも制御できますので、あまり使わないパラメータです。現在作ってる音に入っている数値を適当に入れておきましょう。(^_^;
3020mの「MODパラメータグループ」には「GLID→●●●」というパラメータが存在しますが、これまた「何に使うのやら」といった感ですので割愛します。
まぁ、音程と共に「GLID→VCF」辺りを設定してEWIをリボンコントローラとして使用したいという方がいないとも限りませんが、そういう変態技はここでは触れませんのであしからず(笑)。
さて、ここでひとまず「1VCOでのお手軽音づくり」は完成です。まずは今まで学んだ部分だけで色々音づくりして復習しておいて下さい。
次からはいよいよ「2VCOの音づくり」に突入します。
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