artist : WADA akiko 【和田アキ子】 |
title : 『 和田アキ子リサイタル〜日劇に於ける実況録音 』 |
release : 1973年発表(CDでは'73年、アナログ盤では'74年になっている) |
label : RCA RECORDS |
tracks ( cd ) : (1)夏の夜のサンバ (2)その時わたしに何が起ったの? (3)卒業させてよ (4)孤独 (5)あなたにありがとう (6)どしゃぶりの雨の中で (7)夜明けの夢 (8)天使になれない (9)SPINNING WHEEL (10)CAN'T HELP FALLING IN LOVE 【好きにならずにいられない】 (11)PROUD MARY (12)YOU ARE MY SUNSHINE (13)GET IT ON 【黒い炎】 (14)この命奪って (15)あの鐘を鳴らすのはあなた (16)悪い奴 |
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(8) / side B...(9)〜(16) |
singer : 和田アキ子 |
director
: ロビー和田 music director : 馬飼野康二 mixer : 内沼映二 |
related website : 未確認 |
懐メロ番組などで'70年代の歌謡曲の演奏を見ると、たいてい、やたらバックの演奏がカッコいい。ジャズ系の音を通過した手数の多いドラマーや、ドライヴ感満点のソウル系ベイシスト、ソウルやブラス・ロックに刺激を受けたホーン・セクションなど、現在の我々が求めている音の宝庫だ。そんな時代の、歌謡曲の一番カッコいいところを真空パックしたようなアルバムが本作なのである。 |
(1)夏の夜のサンバ ▲tracks |
まずは軽快に飛ばす“サンバ・ソウル(そんな言い方あるのか?)”の(1)でライヴの幕が上がる。小気味いいドラムに、ゴイン・ゴインと曲を引っ張っていくベース、そして派手なホーン・セクション。オープニングにふさわしい曲だ。16ビートのニュアンスのある8ビートの中にサンバ系のパターンを組み込んだ、アップ・テンポなリズムに乗せて、彼女がのびのびと哀愁のメロディーを歌う。阿久悠/森田公一組のペンによる曲。 “客が日劇を一周するほど列をなしていたので「自分もスゴイ人気者になったものだと思ったら、隣で宝くじを買う列だった」”という小話などを挿み、次へ。 |
(2)その時わたしに何が起ったの? (3)卒業させてよ (4)孤独 (5)あなたにありがとう ▲tracks |
「デビューして5年間、ヒットする・しないに関わらず色んな思い出がありますが、大ヒット、中ヒット、小ヒット、そんな曲の中から色んな曲を集めてみました」という感じのMCで始まる(2)〜(5)は、メドレー。 ホノボノとして明るい曲調の(2)(3)、筒美京平作のいかにも歌謡曲なマイナー調のナンバー(ちょっと狩人の「あずさ2号」っぽい)(4)、フォーク・ダンスに使えそうなイントロで始まる(5)でメドレーは終わり。 “デビューした時の自分に対する批評は「和田アキ子、男か女か」「オカマかオナベか」という酷いものばかり。それが、自分は普通にしているつもりなのに「アナタも最近女っぽくなった」と言われるようになったのでおかしいなと思っていたら、化粧品会社が年々いいモノを出していて、化粧品会社と共に自分も成長している”というような小話を挿み、次へ。 |
(6)どしゃぶりの雨の中で ▲tracks |
“東京では日照りが続いたので「雨乞いをやろう」ということで、同じレコード会社のクール・ファイヴは「長崎は今日も雨だった」を、そして自分はこの曲を”ということで世に出た、歌謡ソウルの(6)。 この曲もホーンズがとても派手で、ベースはゴイン・ゴイン。かなりファンキーな演奏。彼女の太くドスのきいた歌声も、やさぐれた感じが出ていてこの曲調にピッタリ。 |
(7)夜明けの夢 ▲tracks |
狩人やピンク・レディーの仕掛人〜都倉俊一作曲の(7)。性急なリズムや全体を覆うマイナー調の雰囲気が、かなりピンク・レディーっぽい曲。軽妙なリズムに乗ったホーンズの切れもよく、かなり引き締まってタイトな演奏を展開する。 |
(8)天使になれない ▲tracks |
続けて都倉俊一作、8分の12拍子の(8)。歌謡曲でありがちな、歌い出しの前にsus4を使うタイプの曲。この“歌い出しの前にsus4を使うタイプ”はかなり沢山あって、沢田研二の「勝手にしやがれ」や、青い三角定規の「太陽がくれた季節」など、数え上げたら切りがない。 |
(9)SPINNING
WHEEL (10)CAN'T HELP FALLING IN LOVE 【好きにならずにいられない】 (11)PROUD MARY (12)YOU ARE MY SUNSHINE (13)GET IT ON 【黒い炎】 ▲tracks |
ここからは洋楽メドレー。ブラッド,スウェット&ティアーズの(9)や、プレスリーの(10)、C.C.R.の(11)、有名な(12)(ブルージーなアレンジは誰か黒人アーティストのカヴァー・ヴァージョンか?)に続いて、ブラス・ロック・バンド〜チェイスの(13)。 威勢のいいホーンズと共に飛ばしまくる(11)もいいが、このメドレーのヤマは何といっても(13)。部分的にはホーンズがやや拙いところがあるものの、サックス・ソロでの、聴き手をグイグイと引き込んでいくバック・バンドの乗りと、そこに喝を入れていくような彼女の掛け声は鳥肌モノ。ほんとカッコいい。 |
(14)この命奪って ▲tracks |
「アタクシも好きに“なれそうな”曲でございます」と紹介して始まる、当時の新曲(14)。これもいかにも歌謡曲な感じの曲なのだけど、“好きな”曲と言い切らない微妙な言い回しをするところを見ると、彼女自身はこういうタイプの曲があまり好きではないのではないだろうか。洋楽ロック・メドレーでの生き生きとした感じを聴くと、どうもそう思えてならない。 |
(15)あの鐘を鳴らすのはあなた ▲tracks |
本作最大のクライマックス(15)。皆さん既にご存知かと思われる彼女の代表曲なのだが、普段テレビで見聞きするのとは大違いの、大迫力の演奏が聴き手を感動の渦へと巻き込んでいく。 彼女の曲紹介と共にヒッソリと始まり、Bメロではちょっと擬似タンゴ(ジミ・ヘンの 『 ELECTRIC LADYLAND 』 に収録の「HOUSE BURNING DOWN」や、ドゥービー・ブラザーズの「LONG TRAIN RUNNIN'」で聴くことのできる、タンゴっぽいアレンジ)な感じでピシッと引き締め、いよいよサビへ。 このサビで、このバンドのドラムが大活躍。あえて極端に言うならば、キング・クリムゾンのマイケル・ジャイルズの如きスネア、ハイ・ハット、バス・ドラムのコンビネーション。「ドンドン・タカッタ・タチタチ・タチタカ」と、細かい組み合わせが小気味いい。とにかくカッコいいオカズのオンパレード。それを引き立てる華やかなホーンズがまたいい。そして何よりも和田アキ子の豪快かつ朗々とした歌いっぷりが、胸にジィ〜ンとくる。思わず涙腺の蛇口が壊れてしまう。演奏、歌唱、そして阿久悠/森田公一組による楽曲の、三位一体による感動攻撃の嵐。ホント心の底から「生きててよかった」と思える曲である。 |
(16)悪い奴 ▲tracks |
最後はアップ・テンポのシャッフル(16)で終わり。マイナー調の割には実にカラッとした曲。メリハリの効いた演奏は生き生きとしていて、とてもライヴ感覚に溢れている。「それでは今日ご出演の皆様もう一度お呼びしたいと思います」というところでカットしてあるのだけど、どうやらこの曲でメンバー紹介をしているようだ。このバンドのドラマーとベイシストの名前が知りたかった! |
蛇足ながら、内ジャケットにある和田アキ子の写真の中の何枚かは、“痩せたアレサ・フランクリン”といった趣き。 |
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