22.アドリブを上達させるために

 これはこのホーム・ページを開設してから最も多い訪問者からのフレーズです。もしメールでそんなことが簡単にアドバイスできたら素晴らしいんですが、ジャズの神様の悪戯は永遠に続きそうです。適切な返事ではないかも知れませんが『オリンピックの100m競走に出場するにはどうしたらいか』と考えたらまず、それなりに着替え外に出て軽くストレッチをしジョギングして体が温まったところで十分なストレッチをしてそこから始めるしかないですね。それに、オリンピックに出場するには才能が必要ですが、努力を惜しまず時間ををかけ、怪我さえなければ誰でもそれなりに速く走ることが出来るでしょう。

 前述のことを踏まえて来訪者の質問に対して僕のメッセージを伝えます。

@まず第一にあげたいのは楽器を上達させる訓練をすることです。このことはすべての土台となり、土台を押し上げることが総合力(アドリブの)のアップとなります。

A次に自分の最も好きな即興演奏(アドリブ)が行われている音楽ジャンルをよく聴くことです。それはほとんどの場合最初は個別のプレーヤーに限られるでしょうが、徐々に視野を広げることが可能性の拡大になるでしょう。これはコピーすることも含まれるかもしれません。

Bとにかく実践で演奏することです。それはどんな状況でもかまいません。可能であるならば少しでも上級者とやることがベストでしょう。どんなに上手くなくても(下手でも?)他人と演奏することは不可能ではありません。アドリブが出来なくても無理やりやってしまいましょう。どんな上級者でも最初の一歩はそこからです。

Cそれに加えストリートでもライブでも公開のジャムセッションでも何でもかまいません、とにかく聴衆の前でやること。恥をかくことを気にしていては上手くなりません。聴衆なくしては得られないことが多々あります。また、ジャムセッションなどで同楽器に上手い人が居ると参加しない人をよく見かけますが、それではダメだと思います。恥をかかないと絶対だめです。

D先生・先輩・友達・プロなどとにかくよい指導者を見つけること。独学でもかまいませんが他人のアドバイスは結構身にしみるものです。

E情報の収集に時間を惜しまないこと。分からないことがあれば自分で調べるなり他人に聞くことです。

F柔軟性をもつこと。何でもそうですが、音楽の世界も矛盾だらけです。それらに直面したときにこんなのもありかな・・・ぐらいの心の広さも必要です。がちがちに凝り固まった頭は時として人を破滅に導きます。

Gライバルは自分です。他人は関係ないです。互いに切磋琢磨することを日本人はよく口にしますが、常に前を見続けていればやはり己が敵です。それに個々に合ったペースというのも実際に存在します。

H年齢は若いにこしたことはないですが、前向きに努力していればよほど上級者でない限り年長者でも後退することはありません。年齢と共にパワーは下降することもあるでしょうけどそれを補うものもたくさんあります。

I楽譜はある程度読めた方が色々楽になります。ある程度以上の楽器の技術に加え完璧な耳とリズム感それに抜群の記憶力があれば楽譜を否定してもやって行けますが、そうでなければある程度は読めた方が総合力向上の助けとなるでしょう。ただし楽譜を否定するだけの確固たるポリシーをもっていればその範ちゅうではありません。

 音源を含めアドリブ(インプロヴィゼイション)を学ぶ為の情報源はたくさんあります。それらを参考にすればその道筋は見えてくるでしょう。それをしっかり見据えて努力を惜しまなければ道は必ず開けてきます。それに進歩に対して個人差は当然あります。すぐに上手くなってしまう人もいればスローペースの人もいるでしょう。しかし成長の過程を楽しむ(苦しむ?)のもひとつの生き方だと思います。それに楽器の音色やニュアンス(味?)もアドリブの重要な要素であることも忘れてはいけません。それによくありがちですが、ろくに努力もしないで遠くを見つめても何の肥やしにもなりません。
 
 可能性の扉は当然誰にでも開かれている思いますが、意識を改めないとその可能性も閉ざされてしまいます。何年か前のことですが、あるまじめな大学生とレッスンを始めて2ヶ月ほど経過したときのことです。アドリブのレッスンで基本的なコードぐらいは覚えるよう諭したところこんなことを言いました「結局は自分でやらなければアドリブはできないんですね(覚えるのが面倒というニュアンス)」、こういうのは論外ですよね。