18.ちょこっとOut

 いろいろな音楽ジャンルの中でも完全に固定された音程(ピッチ)で演奏されているものは少ないと思います。キーボード(ピアノ)のように楽器自体に固定音を持つものは有りますが、それぞれの音楽そのものでは音程を微妙に動かす場面が出てくる(クラシック等を含めて)のが自然なようです。
しかしながら音やフレーズを完全に外す(アウトする)ということが大手を振ってまかり通るのは前衛的な音楽以外ではジャズ(モダン、コンテンポラリー等呼び名は何でもいいですが)ぐらいなものではないでしょうか。もちろんジャズと言っても色々なスタイルがあるので違和感が生じるものもあるでしょう。でも、もともとそれが目的なのでそれを良しとする流れもあっても良いと思います。
たとえばディキシーなどでかっこ良くアウトしたらちょっと奇抜かもしれません(前例があったらすいません)。

 アウトすると言ってもいくつかの方法が考えられるますが、それぞれの方法を分類し系統だって考えるより感覚的にとらえた方が個々に発展の可能性があると思うのでそこのところを考慮しながら進めたいと思います。
それとコードが頻繁(時間的に)に進行しているような曲などではあまりよい効果が得られるとは思わない(僕的に)のでシンプルな状況下ということに限定していきたいと思います。

 最初の譜例は半音上下のトライアドの音をごくシンプルに使用しています。ただあまり取って付けたようなことをやると流れが決まらないので、普段から使い慣れることがポイントだと思います。

 次の譜例は発想(使い方)は上記と同じですがA♭のところでは流れに応じてそれぞれトライアドに1音加えてスケールとしD♭は半音ではなくT(G)に対し♯W(D♭)のトライアドを使っています。これはよくあるパターンですがあまり深く考える必要はないと思います。ここではまず実感することが大切です。

 次のフレーズはG7というコードの上にGメジャーの一般的なコード進行を設定したものです。完全なアウトとは言えませんがその発想の原点となり得るでしょう。

 楽譜資料の「Out Phrase No.1」は僕自身が勝手に創ったエクササイズですが各八分音符4つが一つのコードと思って下さい。コード・ネームは色々考えられますが、とりあえず納得したい方は最初の音をルートとするマイナースケールだと思って下さい。たとえば次のようになります。これはあくまで一解釈(表示)です。実際の使い方は次項で説明したいと思います。これらはコード進行ではなくてあくまでコード・ネームです。だがしかしそんな概念はこの項の目的にはそぐわないのです。なぜなら「ちょっと・アウト」することが目的だからです。ただしこれらのメロディー(コード進行を含む)自体が非日常的なものなのでそれを「ちょっと・アウト」ととらえることもまた別の概念かも知れません。何も難しく考えることはありません、なぜなら「アウト」の定義はあなた自身の感性よるところが大きいのですから。特別なものなんかは全く必要ありません。場合によっては知識(能力)そのものが障害になることもあるでしょう。そのことは管楽器奏者や歌手にとってとりわけ言えることかもしれません。

 結局、ある音楽スタイルの王道を伝承する場合何に重きを置くかによってその方向性は大きく変わってきます。たとえばチャーリー・パーカー等に代表される「Be Bop」のスタイルを継承する場合硬派と呼ばれる人々のほとんどが形式を重要視し、現代において古典的音楽「Be Bop」を演奏します。しかしながら精神面(Spirit)では当時の彼らの状況を考慮に入れれば彼らの遺産の現代における古典的扱いはその望むところではないのかも知れません。