13.束縛−7度・3度−

 この項でやっと本題めいたところへ触れるような気がします。というのは、これまでの内容については僕自身別に強く意識することなく、その原点が自分の内にあったものをランダムに示しましたが、ここでの発想の発端は僕の友人の一言からだからです。20年以上前にその友人のピアニストと一緒に練習していた時のことです。僕は結構自信をもってソロをしたつもりだったのですが、彼に「もっと内声の動きを考えなきゃ駄目だ。」と言われたのです。しかしその時の僕にはその言葉の真意が読み取れず、それ以来コードの変わり目には必ずコード・トーンで入れるようにかなり訓練しました。その時の副産物としてクロマティック(詳細は後日)の習得があったのです。後になって理解出来たことですが、彼の真意はどうやらコード楽器的発想にあったようです。

 たとえば次の例を見て下さい。僕は形としてはこういう感じのことをよくやっていました。そして、仮に伴奏者が下段のように演奏したとします。そしてそのハーモニーはごくシンプルなものだとします。

 テンポはミディアムぐらいだとして下さい(以下同様)。僕は別に間違った音は出さなかったのですが、Dm7の後半では9thと11thを使い、G7の頭で9thで入りルートのCに至っては4thで入って解決は3拍目になっています。彼は几帳面に伴奏するタイプと言うよりは先行型で、その時の僕のソロに強い違和感を感じたのだと思われます。

 別にアドリブは何でも良いんですが、とりあえず僕自身興味があったのでそういう方向性もありだと思いあれこれと考えながら練習したわけです。他人のフレーズや雰囲気を絶対に真似しないと決めた僕にとって、発想の助けは必要不可欠だったからです。自分の心には嘘はつけませんから。

 基本的にトラディショナルなジャズではベースはルート或いは5度を弾き、ピアノはコード・トーン或いはテンションを含むハーモニーを弾くわけです。そのとき、テンションを含む含まないに関わらずハーモニーの中に必ず存在するのが3度7度です。もちろん4声以上の場合です。そうでない状況も考えられますが、あくまでトラディショナルの範ちゅうですのでそう断言してもよいと思います。

 下記のフレーズを見て下さい。その3度と7度をスムーズに連結することによりコード進行に吸い付いた吸盤のようなソロが展開出来ます。左上側のフレーズは各コードの連結音が7度から3度へつながっています。その右はルートへのつなぎめにちょっと変化を持たしてみました。下段左は最初のU m7− X 7の3度と7度が同音なのを利用してからX 7の3度からルート音へ、右はX 7からルートに7度3度の連結を使いました。

 次のフレーズはリズムチェンジの進行におけるソロ例ですが、一連の流れのなかで3度7度の連結をがちがちにならずにほどほどに使ってみました。こういった適度な束縛感が可能性への道を開いて行くのではないかと思います。

 この項での最後にドミナント進行での練習曲を付け加えておきます。

 コード・トーン以外の音もちらほらありますが、流れのなかでそうなったのであまり深い意味はありません。