12.束縛(コード・トーン)

 Jazzという音楽は『自由』という言葉とは切っても切り離せないものがあります。それゆえ音楽を演奏する上での形式主義に反発して独自の世界を切り開いている音楽家も少なくありません。そのような人たちには大変申し上げないのですが、ある程度の『束縛』があってこそ『自由』の大切さを感じられる ―― ということでかなり強引なこじつけですがこの項を進めていきたいと思います。

 コード・トーンだけでソロをとるということが、実際の演奏において適切かどうかという問題については別として、アドリブの幅を広げるということや、マンネリの打開策として非常に効果があると思います。常識的に見て幅を広げる為の切り口は、より多くの情報の蓄積によって広げられます。しかし、視点を変えてみると、発想に柔軟性を持つという方法は情報量を増やすことよりもある面でプレイに幅を持たせます。

 次の譜例はCのリズム・チェンジ(循環)のコード進行上のものですが、このように比較的コードが頻繁に変わっていくものはコード・トーンだけを使用しても結果的にダイアトニック・スケール上のすべての音を導き出してしまうのです。とりあえずその性質から音の動きは縦の変化になりますが、それもまた目的に適うでしょう。

 次は「Someday My Prince....」の出だしのところですが、3/4(拍子)の場合はコード・トーン縦移動はリズム的に非常に効果があるので(スピード感がある)十分に練習する価値はあると思います。AとBを比較してみて下さい。同じようなラインでもその発想の原点は明らかに違い、かけ離れた位置にあります。

 

 最後にFのブルース進行にコード・トーンでラインをつくってみました。コード進行そのものが非常にメロディック(変な表現ですが)なのでコード・トーンだけでも十分対応出来ます。トニック・コードをF7ではなくFmajorにすることによってB♭7とのメリハリをつけ、B♭7のコード・トーンをブルーノートの代役として前面に出すことで、ブルース進行の原点の片りんをここに感じ取る事が出来ます。

 @のくだりは通常一音上の「Am7−D7」のルートのGあるいはG7への伝統的ブルース・ラインで、僕的にはちょっと違和感がありますが音的には間違ってないのであえて修正しませんでした。

 これらの練習方法は、ある程度ソロを取れるようになって伸び悩んだりしている人や、かなりの上級者でも発想のマンネリに陥っている人に対してそれなりの効果を十分期待出来ると思います。