8.スケールの設定(その1)

 今回は、一般的に使用可能なスケール枠をもう少し広げて(曲のイメージを最低限残す範囲で)から本題に入りたいと思います。以下青字で示したのがそれです。

Chord Scale Chord Scale
Cm7 Dorian Am7♭5 Locrian
Locrian#2
(Super Locrian
)
G harmonic Minor/Am7♭5
F7 Altered
Mixo-Lydian
Combination of Diminished
Lydian 7th
Whole Tone Scale
D7 Altered
Combination of Diminished
Whole Tone Scale
G harmonic Minor/D7
B♭M7 Ionian Gm Tonic Minor(Melodic)
Natural Minor
E♭M7 Lydian G7 Altered
Combination of Diminished

 個々のスケールは資料のページを参考にして頂くとして、理論の知識がある程度あるひとはそれなりに考えがあったり納得したりするでしょうが、そうでないひとは率直に「わけがわからない」とか「何だ、何だっていいんじゃないか」とかいった反応があると思います。これにアウト(論理的に音をはずすこと)する理屈を付け加えれば要するに「なんでもOK」状態になります。その枠組みを決めるのは、或いは枠組みが決まるのは演奏者自身の理性と耳によります。その辺の所をしっかり踏まえた上で本題に入りましょう。

 前ページに記したあるスタンダード曲(枯れた葉っぱ)のコード進行の調性圏はGmで二つの♭がつきますが、大きく分けて二種類の進行からなります。

 @Um7−X7−T(Cm7 - F7 - B♭)・・・・・・・メジャーの進行だが調性圏がGmと同じ。

 AUm7♭5−X7−Tm (Am7♭5 - D7 - Gm)・・・・・・・曲の土台となる進行。

 それぞれのコードに二つの♭の調性圏を無理矢理押し付けてスケールを以下のように簡易的に創ってみます。スケール(音使い)を構築するにあたって当然メロディーは重要な要素です、スケール等を設定する場合に十分参考にする必要性があります。たとえばAABA形式の曲の場合1カッコと2カッコのコード進行が同じ場合が多いのですが、メロディーが異なる場合当然ハーモニーの構成も変化する場合があるからです。

 最後のG7に関しては全体の流れを考えて(メロディーがそうなっていますので)B♭の音を加えてみました。D7はE♭が、GmはFナチュラルがそれぞれ入るのでコードネームをとりあえず変化させてみました。ここまでですでにG7を除くすべてのコード・スケールが一般的な理論上のものと合致します。

 ここでは脇役で単につなぎのG7が非常に気になってきますが、あえてメロディーをハーモニーから独立したものあるいは経過音を含むラインとしてアドリブのスケールに絶対的影響力がないものとすると、ルートがKeyと同じGでメジャー3rdの音Bナチュラルを含むこともありここでは主な調性圏を持たないCombination of Diminished あたりを持ってきてから自分の耳で確かめてそれぞれの音を変えてけばよいと思います。下記のスケールは僕自身の長年演奏してきた結果として自然に形成されたものです。これは一個人の感覚から出てきた物なので当然名前などありませんし理屈とは無縁です。しかし、ここでの過程は非常に重要です、なぜならそれがすべての原点だからです。

 ここからは個人の好みやフレーズの流れで自由に変化させて行くべきだとおもいます。この曲(枯れた葉っぱ)の代表作としてはMiles Davis と Bill Evans の演奏があまりにも有名ですが、この両者はアンチ・ビバップとして共に内声の動きにとらわれず自由に演奏していますが、テンポの速さの違いはあるものの、前者は一つ一つの音をいたわるように感情をクールに込めて、後者は怨念を感じるぐらいのグルーヴ感をわき立たせて対称的な世界を生み出しています。