マウスピースについて
マウスピースは奏者の体から吐き出された息が唇の振動(バズィングと言います)に変化する場所で、しかも楽器にも奏者にもその響きが伝わる場所であるため、楽器の音色や音程等を左右する最も大切な「部品」です。
マウスピースのみでも、上手にバズィングをコントロールすると、マウスピースの振動自体が楽器として通用する性格を持っています。奏者のコントロールで音色や音程、音量等、自在に変化をつける事が出来ますし、メロディを奏する事も出来ます。
奏者にとって最適なマウスピースとは、奏者と楽器との「相性」や「バランス」が良好な物です。
ユーフォニアムとトロンボーンはマウスピースのジョイント部の太さが同じです。ですから、ユーフォニアム用、トロンボーン用、どちらのマウスピースも使用する事が出来ます。ユーフォニアムの豊かな響きや音色を得る為には、トロンボーンよりもやや大きく深いカップを持つマウスピースを選ぶと良いでしょう。
一般的には、ヤマハ51や53、シルキー51D、バック5G等が多く使われています。これより大きなマウスピースを使う方もいますが、体力のある方です。
細管のユーフォニアムには、やや小さめで浅いマウスピースをお薦めします。また体力のない初心者も小さめのマウスピースを最初に使用するのが良いと思います。ヤマハ48、シルキー48、バック6 1/2等が初心者や細管のユーフォニアムに向いていますが、バック5GSやシルキー51等の大きめのマウスピースも細管でも深く豊かな音を出すことができると思います。
国内外のユーフォニアム奏者がデザインしたマウスピースや、マウスピースを専門に製作しているメーカーの製品も多数販売されていますので、これらのマウスピースに慣れた中・上級者は様々なマウスピースを試す事も楽しいですね。
カタログ上では同じサイズのマウスピースでも、これらの製品は使用する材質や仕上げのメッキの種類やその厚さ、細部のデザイン等にこだわりがあります。特に唇が当たるリムの部分の仕上げによっては、サイズが全く異なる印象をうける事があります。したがって、マウスピースは自分にあったものを探すために、試奏して選ぶことが必要です。必ずいつも使用している楽器を楽器店に持参し、マウスピースの試奏をしてから購入して下さい。
マウスピース選びは、楽器を購入するのと同じくらい大切な行為ですが、高価でなかなか買い替えられない楽器に対して、数千円から数万円のマウスピースは比較的容易に購入できます。
マウスピースは、その吹奏感や音色、音程、音量、音の移り変わり、音の立ち上がり、持久力等、奏者が演奏上必要とする様々な感覚や肉体的な制約の条件をも変えてしまう事ができますから、マウスピースを選ぶ事には細心の注意が必要です。奏者に合っていないマウスピースは、音色や音程に悪影響を及ぼすだけでなく、上達の妨げになります。
何十本ものマウスピースに投資をして、時には何日間しか使用しなかった筆者の苦い経験からのアドバイスです。参考にして下さい。
その1、楽器を買い替えるよりも安上がりで楽しいと思えるのならば、出費はいとわない。
その2、あまり極端な物は使わなくなった時の反動が大きいので、止めた方が無難。
その3、マウスピースは流行があるので、周りの人の意見に惑わされない。
その4、最低でも3ヶ月は使ってみる。本当によいかどうかは、すぐにはわからない。しかし、自分が何か新しい事をしたかった、新鮮な感覚が欲しかっただけだと感じたのなら、すぐにあきらめて元にもどす決断も必要。
その5、マウスピースを代えれば、吹けないパッセージや出ない音域が出来るようになるという安易な幻想は捨てる。吹き易いと感じて、吹く事が楽しくなるようなマウスピースが理想で、そのようなマウスピースを使用すれば上達出来る、と信じる。
その6、使わなくなったマウスピースは他の楽器に買い替えた時にまた試す事があるので、大切に保管をする。
その7、自分とって本当に大切なマウスピースが見つかったのであれば、それは楽器本体よりも価値がある一生物のお宝。
番外編
「その7」を読んだ方から、「数年でマウスピースの表面が摩耗して使い物にならない、マウスピースは一生使えない」というお言葉を頂きました。
私は1982年に購入したマウスピースを今でも現役で使用していますので、にわかには信じられなかった話なのですが、彼はヒゲが濃く、マウスピースにヒゲが当たって、リムが削れるのだそうです。このリムの中央が均等に削れているマウスピース(右写真)を見て私は驚きましたが、マウスピースは消耗品ですね。特殊な例ではあります。 |
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