5. ユーフォニアムのレパートリィについて

1 ソロ作品について

ユーフォニアムの為に作曲、編曲された作品は時代とともに変化をしています。日本のユーフォニアム奏者が演奏する作品は、主に米国、英国、仏国の作品と邦人作品がその多くを占め、特にフランスのサクソルンバスの為に作曲されたソロ曲は重要なレパートリィとなっています。また、トランペットやトロンボーン等の作品を演奏する事もよく行われています。

代表的なソロの作品を紹介します。

・戦前の作品
戦前に作曲された作品は、バンド伴奏の作品が多く、スーザバンドで活躍したマンティアの作品等が挙げられます。その多くは変奏曲の形式で作曲をされています。

Mantia/Belive Me All Those Enduring Young Charms
Boccalari/Fantasia di Concerto
Ponchielli /Concerto per flicorno basso
DeLuca/Beautiful Colorado
W.Grant Jones/Euphonion solo "Celia"

・戦後の作品
吹奏楽が盛んな米国と、金管バンドが盛んな英国等からそれぞれの特徴に合わせた作品が発表されました。またピアノ伴奏等、様々な形態の作品が作曲されるようになりました。

Hutchison/Sonatina
Jacob/Fantasia
Ross/Partita
Horovitz /Concerto for euphonium and brass band

・1970年代後半からの作品
要求される音域が拡大し、特殊奏法や高度な内容を伴った作品が登場しました。邦人作品も増えてきました。特に1990年代からはユーフォニアムの協奏曲が次々と発表され、オーケストラの伴奏による作品も増えました(協奏曲については次項を参照して下さい)。

Jan Bach/Concert Variations
Butterworth/Partita
Curnow/Symphonic Variants
Gillingham/Blue Lake Fantasies
Sparke/Pantomime
Stevens/Soliloquies
伊藤康英/幻想的変奏曲
千秋次郎/うるわしきもの流れゆくなり
小山和彦/佇みて

2 編曲された作品について

弦楽器や声楽曲等からの編曲、特にバロック時代から後期ロマン派時代の作品からのアレンジが多く、平易に編曲されたものが多くを占めますが、オリジナルの楽譜をそのまま演奏する事もあります。

Bach/Cello Suites
Capuzzi-Catelinet/Andante and Rondo
Klengel/Concertino
Marcello/Cello Sonatas
Vaughan Williams/Six Studies in English Folksong

3 主な協奏曲の一覧

Amilcare Ponchielli (1834-1886) : Concerto per flicorno basso (1872) (Tuba-Euphonium Press)

Joseph Horovitz (1926-) : Concerto for euphonium and brass band (1972) (Novello)

Jan Bach (1937- ) : Euphonium Concerto (1990)

Vladimir Cosma (1940-) : Euphonium Concerto

Martin Ellerby (1957-) : Euphonium Concerto (1995) (Studio Music)

Philip Sparke : Euphonium Concerto (Studio Music)

Golland : Euphonium Concerto No.2 (Studio Music)

Jukka Linkola (1955-) : Euphonium Concerto (1996)

Philip Wilby (1949-) : Concerto for Euphonium (1996) (Rosehill Music)

Elizabeth Raum (1945-) : Concerto del Garda for Euphonium (Tuba) and orchestra (1998)

Elizabeth Raum : Pershing Concerto for Euphonium (Tuba) and band (orchestra) (1999)

Vaclav Nelhybel (1919-1996) : Concerto for euphonium and band (Tuba -Euphonium Press 1998)

天野正道 (Amano Masamich, 1957-) : Euphonium Concerto

John Stevens (1951-) : Euphonium Concerto (2004) (Editions Bim)

伊藤康英 (Ito Yasuhide, 1960-) : Euphonium Concerto (2005)

4 オーケストラの中のユーフォニアム

 オーケストラ作品の中で、ユーフォニアムはスコア上で「Tenor Tuba」のパートが指定される事が多いのですが、これは作曲家や時代背景によって想定されていた楽器が異なるので注意が必要です(「テナーテューバについて」の項を参照して下さい)。

 ユーフォニアムがオーケストラで使用されるのは、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」や「英雄の生涯」が有名ですが、この他にも、「Bombardino」や「Flicorno Basso」「Saxhorn Basse」「Baritono」等の指定をされたオーケストラ作品が存在します(付録「関連する楽器等の名称および説明」を参照して下さい)。


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