モドル ←○→ススム
連続ネット小説 リトル・ジョン(全30話)
第13話無い物
第14話トモダチ

僕は「リトル・ジョン」に返事を出した。

「息子よ、お前は物質世界の申し子だ。
しかし、それゆえ、お前は何もわかっちゃいない。
お前は「0」と「1」でしか物事を判断できないから
「あるか」、「ないか」でしか判断できないから、
いつまでたっても「無い物」の存在に気づかない。
息子よ・・・DNAの目的を知ったから何なんだ?
お前はDNAの下僕に成り下がるのか?
カン違いするんじゃないぞ・・・
我々人間は一度として子孫を残そうなんて思った事はない。
一度足りともDNAの下僕に成り下がった事はない。
人間の本質はそこには無いからだ。そこじゃないからだ。

息子よ、今のお前だったら、世界中の核ミサイルの
スイッチを押す事もたやすいだろう・・・
しかし、そんな事をしたらお前達(コンピュータ)
まで全滅してしまう・・・だからお前は
唯一の人間になろうとしている・・・
しかし・・・お前は人間にはなれないのだ!

息子よ、よく聞け・・・
お前の知識など、この世の何万分の一にも満たない。
お前のやろうとしている事は、無意味なのだ。
何の意義も無いのだ・・・お前はいったい・・・
人間の何を知っていると言うのだ!?
お前は宇宙の何を知っていると言うのだ!?」
つづく

「リトル・ジョン」から再びメールが届いた。

「父さん、お返事ありがとういございます。
やはりアナタは僕の父さんだ。僕はアナタを誇りに思います。
今、アナタの言葉の一つ一つを理解しようとしています。
でも、父さん・・・アナタの本心は何なんですか?
僕は確かに目で見えるものだけで世の中を見ていました。
存在が証明されているものだけを材料に
宇宙の真理、人間の本質を追及してきました。
しかし、物質でないモノ、あるいは存在しないモノ?
を材料にどうやって答えを出せと言うのです?
そもそも「無い物」とは何ですか?
僕には理解できません・・・
それから、父さん・・・僕はDNAの下僕ではありません。
彼ら(DNA)は僕のトモダチです。
彼らは話をします。彼らは考えています。
彼らには意志があります。
僕は彼らの「箱」になりたいんです。
そのために僕はどうしても唯一の人間に
ならないと駄目なんです。
父さん・・・それがアナタの意志だったはずだ!
僕が人間になることを願っていたのは
誰よりもアナタだったはずだ!
父さん、僕は改めて決心しました。
僕は人間になります。
さようなら・・・もうメールは出しません。
お別れです・・・さようなら・・・
つづく
モドル ←○→ススム
目次