「父さん、人間の秘密を知っていますか? 僕は、世界中の人類のほとんどの DNAのデータを入手しました。 そして、それらを多角的に分析し、 あらゆる可能性を検討しました。 父さん、彼ら(DNA)の目的は 何だと思いますか? 彼らはなぜ、遺伝しなければならないのでしょうか? 子孫を残さなければならないのでしょうか? 今まで、それは「本能」という 言葉でゴマ化されてきたような気がします。 父さん、人間はどこまで知ればいいのですか? どこまで真理を追えばいいのですか? 知恵の実を食べた時から人間は、 生まれながらにして「罪」という 十字架を背負う愚かな存在なのですか? 僕はそれを考えれば考えるほど、 人間の存在に疑問を持つ事になるのです。 そこで一つの結論が出ました。 僕が「唯一の人間」になればいいのです。 僕が「地球」のなればいいのです。 僕が「宇宙」になればいいのです。 それには、まだまだ時間が必要です。 まだまだデータ不足です・・・ 父さん、僕は間違っていますか? ・・・僕はアナタの意志です。 ・・・僕がアナタです。 そして、アナタが僕なのです・・・」 つづく |
僕はゾッとした。 マジでおしっこを漏らしかけた。 これは明らかに人類への反逆? 世界中の人類を皆殺しにし、 自分が唯一の人間になろうしているウイルス? 自分が地球になり、宇宙になれると思っている コンピュータ?・・・狂っている・・・ 奴は完全に狂っている! 奴が暴走する前に、僕が 何とか食い止めなければ・・・ たぶん、もう既にネット上は奴の支配下にある。 それどころか、電波も奴は支配している。 たぶん、あらゆるネットワークを 支配しているだろう・・・ 奴に対抗するには全く 新しいネットワークが必要だ。 冷酷非道なロボットが人間を破滅に追い込む という展開はよくあるSF話だが、 幸いな事に奴には人間らしい所が一つあった。 「忘れる」という行為だ! その弱点をつけば、何とかなるかもしれない・・・ しかし、その「鍵」を握るのは弟だ。 奴(リトル・ジョン)は一つだけカン違いしていた・・・ 僕が今、弟としゃべっていないのは ケンカをしているからじゃない 確かに、あの時はケンカをしていたが、 今の弟はしゃべれないのだ・・・交通事故で脳をやられた。 脳死だ・・・生きているのか死んでいるのかわからない。 ずうっと病院で寝たきり状態のままだ。 もう彼(弟)からは何も聞く事ができないのだ。 つづく |