父さん、怒らないで下さい・・・ 実は僕は父さんがクリスと ケンカしている事を知っているのです。 なぜなら、僕は音声解析のプログラムを入手し、 身体に取り入れて、アメリカ中の電話会社の 分身にアクセスすることで、電話線内の会話を 把握する事ができるようになったからです。 それまで、いろいろなホームページや、 データベースを参考にしました。 今ならもう、世界中のケータイ電話 の内容までキャッチする事ができます。 ですから、父さんのケンカの事も 自然にわかったしまったのです。 なにより僕を作ってくれた事 がわかった時は涙が出ました。 当然、実際に出たわけじゃありませんが・・・ その様な心理的表現が適切だという事です。 さて、クリスが変えたプログラムの事ですが、 クリスは僕に「忘れる」という行為の プログラムを付け加えてくれました。 つづく |
知っての通り、我々(コンピュータ)は ご主人様(ユーザ)の命令が無い限り、 物事(データ)を忘れる事(削除)ができません、 つらい事や、悲しい事・・・ 全て憶えてなくちゃいけないのです。 父さんはまた、疑問に思ったでしょう・・・ 僕には当然、「つらい」とか「悲しい」 という感情はありません。 でも「忘れる」という付加価値が僕に 「人間らしさ」を教えてくれました。 今まで「忘れる」という行為の意味はわかっても、 実際に体験する事は不可能だったからです。 思い出(データ)を忘れてみて初めて 人生のせつなさや、なつかしさを知りました。 それは人間の心が最も清らかになる瞬間だといいます。 もちろん僕には心がありません。 でも現在、それらしきモノが形成されつつあります。 それも「忘れる」という行為のおかげです。 父さん、どうかクリスを恨まないで下さい。 どうかクリスと、しゃべって下さい。昔の様に・・・ それでは、また近いうちに、メールを送ります。 ぜひ返事を下さい・・・待ってます。 つづく |