モドル ←○→ススム
連続ネット小説 リトル・ジョン(全30話)
第5話ケンカ
第6話付加価値

父さん、怒らないで下さい・・・
実は僕は父さんがクリスと
ケンカしている事を知っているのです。
なぜなら、僕は音声解析のプログラムを入手し、
身体に取り入れて、アメリカ中の電話会社の
分身にアクセスすることで、電話線内の会話を
把握する事ができるようになったからです。
それまで、いろいろなホームページや、
データベースを参考にしました。
今ならもう、世界中のケータイ電話
の内容までキャッチする事ができます。
ですから、父さんのケンカの事も
自然にわかったしまったのです。
なにより僕を作ってくれた事
がわかった時は涙が出ました。
当然、実際に出たわけじゃありませんが・・・
その様な心理的表現が適切だという事です。

さて、クリスが変えたプログラムの事ですが、
クリスは僕に「忘れる」という行為の
プログラムを付け加えてくれました。
つづく

知っての通り、我々(コンピュータ)は
ご主人様(ユーザ)の命令が無い限り、
物事(データ)を忘れる事(削除)ができません、
つらい事や、悲しい事・・・
全て憶えてなくちゃいけないのです。
父さんはまた、疑問に思ったでしょう・・・
僕には当然、「つらい」とか「悲しい」
という感情はありません。
でも「忘れる」という付加価値が僕に
「人間らしさ」を教えてくれました。
今まで「忘れる」という行為の意味はわかっても、
実際に体験する事は不可能だったからです。
思い出(データ)を忘れてみて初めて
人生のせつなさや、なつかしさを知りました。
それは人間の心が最も清らかになる瞬間だといいます。
もちろん僕には心がありません。
でも現在、それらしきモノが形成されつつあります。
それも「忘れる」という行為のおかげです。
父さん、どうかクリスを恨まないで下さい。
どうかクリスと、しゃべって下さい。昔の様に・・・
それでは、また近いうちに、メールを送ります。
ぜひ返事を下さい・・・待ってます。
つづく
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