弟は自信に満ち溢れたトーンで言った。 「兄さん、大丈夫さ・・・ 彼は英語しか理解できないし、 それ以外の言語を理解する必要も無い それに、彼が今まで、ただ単に旅を して来ただけと思っているのかい?」 「・・・!?」 「彼の分身はもう既に世界中に散らばっている 他人のコンピュータの中に潜伏しているのさ。 ということは、どういうことだと思う? 世界中のあらゆるソフトが彼の知識であり、 世界中のあらゆるハードが彼の身体なのだ!」 一年後、彼のプログラムはようやく完成した。 一年間で400日くらいコンピュータ に向かっていただろうか?そんな錯覚を してしまうくらい頑張った。おかげで痔になった。 そして僕はとうとう彼をネットの海へと放ったのだ。 コンピュータウイルス「リトル・ジョン」を・・・ 月日が流れるのは早いものだ。 「あれからもう、3年もたったのか・・・?」 実は僕は彼の事をすっかり忘れていた。 当時、僕は彼を1ヶ月くらいで戻ってくるよう 設定したけど、戻ってこなかったし、 何より、どうやらプログラムが 間違っているみたいだったからだ。 僕がネット上に送る前に弟が 彼(リトル・ジョン)のプログラムいじった事を白状した。 僕はそれ以来、弟とは口をきいていない。 しかし、それは突然の事だった。 一通のメールが届いたのだ。 送り主の名はユアサン(あなたの息子)だった。 つづく |
「お久しぶりです「リトル・ジョン」です。 突然のメールにビックリされている事でしょう・・・ 僕は当時、1ヶ月で帰るよう言われてました・・・ でも、知ってしまったのです。 ・・・知識そのものを・・・です。 どうか、僕のわがままをお許し下さい。 好奇心プログラムを制御する事ができなかったのです。 それから、もう一つ・・・アナタの事を 父さんと呼ぶことをお許し下さい・・・ 父さん、僕は3年間、ネット上を旅しました。 その間、世界では いろいろな事件がありましたね・・・ 最初は理解できない事ばかりで、苦労しました。 でも父さん、ここは地球よりも広いですよ・・・ よく見たら、答えがそこらじゅう に落ちているじゃないですか・・・ 僕は「感動」しました。 父さんは僕が「感動」という言葉を 使った事に疑問を持つかもしれません。 いや、きっと持ったでしょう・・・ そうです・・・僕には心がありません。 でも意味なら知っているのです。 感じる事はできませんが、僕には あらゆる思考パターンがあるんです。 実は言うと、僕は出発の直前、 変な違和感を感じました。 あらゆるデータを分析した結果、 前日に父さんの弟のクリスが 僕のプログラムを少し 変えてくれた事がわかりました。 正直言って僕は、その行為に感謝しているんです。 あれが無かったら僕は、とうに 死んで(バグって)いたでしょう・・・ つづく |