「僕は人間が作りたかったんじゃない・・・ ましてや神になりたかったんでもない・・・ ただ、僕は彼と話がしたかったんだ! だから僕は・・・僕は・・・」 ある薄気味悪い取調室のような一室で 一人の少年がむなしく主張していた。 ・・・ 僕はコンピュータ・ウイルス作り専門集団 アメリカン・サイバー・ギャング(ACG) の会長、ジョン・マイケルソン、10才だ。 集団と言っても僕と弟のクリスだけだが・・・ そして、とうとう僕は・・・ すごいウイルスを作ってしまった。 思考を持つウイルス「リトル・ジョン」だ。 思考を持つと言っても、たいしたモノじゃない・・・ ただ気のむくまま移動できるというだけだ。 たとえば、僕がコイツを誰かに送る・・・ すると「リトル・ジョン」はソイツのコンピュータ にある期間だけ潜伏し、ソイツのアドレス帳を見て 好きな所に行くという具合だ。 そうやって「リトル・ジョン」に旅をさせて行くのだ。 被害は全く無い・・・訳じゃないけど・・・ ちょっとハードディスクにお邪魔するだけだ。 別に悪さはしないし、そもそも気がつかないと思う。 「かわいい子には旅をさせろ!」じゃないけど、 僕は「リトル・ジョン」に世界中のコンピュータを 旅させてやりたかった・・・ただそれだけだ・・・ つづく |
彼は1ヶ月後に帰ってきた。 お土産機能のおかげで、土産話(他人のメール) をドッチャリ持って帰ってきてくれた。 数週間後、初成功に気をよくした僕は 「リトル・ジョン」に自動メール機能を付け足した。 お土産は旅先から送った方が楽でしょ? 再び僕は彼をネットに放った・・・ そして彼は毎日、僕にお土産メールをくれた。 そんなこんなで、僕のアイデアは どんどんエスカレートしていった。 5回目の実験旅行を成功させた時、 弟が僕に提案した。 「兄さん、「リトル・ジョン」を改良するのは 僕たちだけなんて、もったいないよ・・・ 世界中の人に改良してもらったらどうだい?」 「なるほど・・・しかしクリス・・・ 彼はウイルスだ。誰にも知られないうちに そういう事ができるなら、ベストなんだが・・・」 「・・・兄さん、大丈夫だよ・・・ 彼にメールを送らせるのさ。世界中の人にね・・・ 誰もウイルスからメールが来たなんて思わないよ。」 「なるほど・・・ それで世界中のあらゆる言語パターンを 収集し、データを他人のコンピュータに分散して 保管しておく・・・そして大型コンピュータに 進入して少しずつ解析していけば・・・ いや、駄目だ!そんな桁違いな量のデータ・・・ 想像しただけでも膨大な量になる・・・無理だ!」 つづく |