音楽の要素
音楽の4要素を順に並べると、
1. 拍子
2. リズム
3. メロディー
4. ハーモニー
拍子がないことには音楽にならないので、これが最初に示されます。リズムの要素しか含まない楽譜でも拍子は与えられるものです。拍子なしでは音楽の緊張や弛緩は生まれません。もしかしたら拍子は楽譜に書いてあることのなかで最も軽視されているかもしれませんが、作曲家たちは曲を作るときものすごくよく考えて拍子を指定するのです。
この例を見てみましょう。
これは、次のように演奏されなくてはいけません。
こうなっては絶対ダメ。
こんなふうに演奏してもよいのは、拍子が 18/16 と書かれているときだけっ!
作曲家は、ときにはアクセントなどの記号を使って拍をずらして強調したりもします。.
アクセントがあるので、この譜例は
正しくはこんなふうに演奏されることになります。
ヘミオラ(2:3の比)はおんなじことをさらにこっそりとあらわすものです。とくにバロックの曲では拍の強調をずらす目的でよく使われたのですが、スコアにはっきりと示されているわけではありません。楽章の終わりによく見られます。次の例はMarcelloのOboe協奏曲ですが、
楽譜上はこう書かれています。
これがどのように演奏されるかというと、
こうした例はバロック作品ほとんどすべてに見られるし、ロマン派でもよく使われています。作曲家はヘミオラを決して明示しないので、演奏者が見つけ出さなくてはいけないモノなのです。.
楽譜を読むこと
ここまで見てきたように楽譜はコトバなので、読み書きのチカラが要求されます。楽譜を読んで、それにイノチを与えなくてはいけません。楽譜に書かれた記号に対応して音色を変えられるように、ボキャブラリーを増やすことも必要です。
楽譜の読み方を勉強しましょう。新しい曲に取りかかるときは、その曲のCDを捜したり演奏会に出掛けたりするんじゃなくて、楽譜を見るのです。世界初演の曲(^o^;)だと思って取り組みます。
最もスバラシイ録音や演奏だって、いま自分の譜面台に載っている楽譜と同じモノから生まれたわけです(自分の楽譜がちゃんとした版ならば、ですが)。かな〜りしっかりその曲を研究して、ちゃんと曲がつかめたな!と思ってから、今度は見つかる限りの演奏を聴いてみます。伝統的な演奏も知らないといけないし、ほかの演奏家がどうやって問題を解決しているかを聴くことも参考になります。でも、録音を聴くことから始めてしまったら、自分自身の考えを発展させることができないかもしれませんよね。
楽譜に書いてあるすべての記号を見て、自動的に反応できるようになりましょう。多くの若い演奏家は注目する点に優先順位をつけていたりします---
まず音符、次にスラー、それから強弱記号、最後に細かい記号…というふうに。見過ごされてしまう記号だってあるかもしれない。とにかく最初っから見ていくやりかたを身につけましょう。まず音符、次にスラー…のように一度にひとつしか見ないのではなくて、全部いっぺんに見ていきます。これをやるにはすばやく考えてゆっくり演奏することが必要になります。でも、結果的には自分の演奏に楽譜に書かれた指示がしっかり固定するはずだし、それがこの方法のよいトコロなのです。
フランス語やらドイツ語やらでちょっと複雑な指示が書いてあったら、ほったらかしのままになることもあるかもしれません。でも、楽譜を読む勉強です。すべての指示を理解して、それをもとに自分の音をどう変化させたらいいのかを考えるのです。これは外国語で書かれた指示を見るときにはとくに大切なこと。外国語の指示を当たり前のものだと思ってほっておいたり、大体の意味を推測してそう思いこんではダメ。多くの外国語の単語は英語と似た音でもまったく違う意味を持っていたりします。絶対的な自信がなかったら辞書で調べましょう。音楽辞典になかったら、フランス語の辞書で…辞書が役に立たなかったら、フランス人を捜して訊いてみます(^o^;) 作曲家が何と書いたのかが正確にわかるまで、あきらめないこと!
すべての記号を注意深く見ます。作曲家は長い時間をかけて一生懸命演奏者への指示を考えてくれたのです。自分が作品を作ると想像したら…こんな音が鳴らしたい、こういう雰囲気で、こういう色彩で、このくらいのテンポで、とか考えるはず。でもそのことを演奏者にゆっくり会って説明するチャンスはないわけで、自分の思いを記号にして楽譜に書くしかありませんね。そうなると点を書くか、ダッシュを書くか、両方とも書くか、という記号選びはとっても重要だということになります。
楽譜の中でおんなじ部分を調べてみます。まったく同じでしょうか? そのまんまの繰り返しのこともあれば、少し違っていることもあります。何かの要素が変えてあることも少なくはありません。その違いをどんなふうに演奏にあらわせばいいか、考えます。
自分の演奏する音楽のスタイルを知っておかなくてはいけません…たとえばどんな衣装を着るのか?とか。古い曲を演奏するなら独創性がより強く求められたりします。譜面上の音符は音楽がどんなふうに聞こえるかを正確にはあらわしていないので、テンポやアーティキュレーション、オーケストレーション、音程まで演奏者が決めなくてはいけないのです。逆に最近の曲なら、きちんと記号が示してあるので、それに正確に従うほうがいいかもしれません。たいていMozartはpとfのふたつの強弱記号しか使っていないのですが、これは「大きい」「小さい」を唐突に変化させるだけでいいのか、それとも違うのか…? それは演奏者が研究して決めなくてはいけないのです。
音楽家=音楽を翻訳するひと として責任をもたなくちゃいけません。楽譜のすべての記号をしっかり見て、ちゃんとに聞こえるように表現します。たとえば、アクセント記号を見つけたら、荒っぽく不快な感じで鳴らしたり。アクセントを無視しないで、その音符を強調するために違う方法で吹くわけです。「アクセント」とは、音が始まったあとでつくものかもしれないし、タンギングではなくて息で作るものかもしれないし、となりの音符を強調しないためについてるのかもしれない…いろんな可能性があるわけです。
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