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ある奴隷市場。裸同然の姿で値踏みされる娘が一人。
娘は裸のまま、踊っていた。
自分のためではなく、孤児院に置いてきた義理の弟や妹たちのこれからの幸せを祈って。
それが奴隷商人や観衆たちの目には、娘自身が神の慈悲を得たいがために踊っているように映った。

観衆は裸同然で踊る娘を下卑た視線で嘲笑う。
奴隷が踊っても意味はなどなく、ましてや悪魔の刻印を持つ者が神の慈悲をなどと。
しかしその時、その奴隷市場にある青年が通りかかった。

奴隷商人と観衆は青年の顔を見ると下卑た笑いのまま表情を固めた。
その青年こそが当代の王。この果てしなく広がる黄金の大地の所有者。
亡き先王の姉の子、サリオンであった。

(奴隷の娘には知る由もないが、本来ならば先王の実の娘である奴隷の娘こそが王位の第一継承権を持っている。 つまり、今代の青年王と奴隷の娘は実は従兄妹なのだ)

奴隷市場で一人、見事な祝福の舞を踊る娘を見たサリオンは自分の亡き母の若い頃の面影を娘に見出し、
(サリオンの母親にとって奴隷の娘は姪にあたる。似ているのは当然である)
その美しさにも惹かれ、自分専属の踊り子として娘を買うことにした。

娘は自分の身分を知らない。
しかし父の面影を持つものに娘が惹かれるように、
娘もまた、次第に青年王サリオンに恋をしていった……。

奴隷と王。決して結ばれぬ身分違いの恋。
言葉ではなく、視線でもなく、 娘はその想いを踊りに隠し、情熱的に青年の前で踊る日々を送った。
青年王は娘をたいそう気に入り、妾にはしないが、滅多に娘を人前で踊らせることななく、 専ら自分のためだけに二人きりの場所で踊らさせた。

やがて月日は流れ……。
娘が青年王専属の「祝福の踊り子(神官のようなもの)」として世間に認知されはじめた頃。
(しかし、王が隠すためその顔を知る者は本当にごく少数)
ついに青年王の結婚が決まった。

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