○…「冬はマイナス30度になるとか。寒いの苦手だから演奏できるかな」と、おっとりした口調で冗談を言い笑う。2月、ラトビアで開催される『第5回国際サクソフォーンフェスティバル〜サクソフォニア』にサックス奏者として日本人で初めて出演する。きっかけは05年の「現代ラトビア音楽」コンサート。演奏がフェスティバル関係者の目に留まった。「コンサートまではラトビアの場所すらよくわからなかった。実は、若い音楽家たちが活躍している国。いろいろな方とのつながりで、出会えたことがうれしい」と微笑む。
○…サックスの音色は物心ついたときから耳にしていた。両親が好きで常にCDやテレビから流れていた。演奏し始めたのは中1。吹奏楽部に入り、迷わず選んだ。「競争率は高かったのですが運良くなれて。うれしくて、たくさん練習しました」。周囲が驚くほどの「練習好き」。一心不乱にサックスを吹いていたそうだ。
○…プロを夢見出したのは高2。進路を考えたとき、サックスを続けたいと強く思った。「気づくのが遅過ぎて、自分なりに大変な受験でした」と振り返る。ピアノや楽典なども猛勉強し、はれて昭和音大に合格。「応援してくれた両親に感謝しています」。在学中から仕事が入り、自然とプロの道へ。02年に日本クラシック音楽コンクール1位になるなど、輝かしい受賞歴を持つ。
○…現在は演奏活動を中心に、音楽教室講師としても忙しい毎日。教え子いわくアイドル的存在でもあるようだ。「多くの方と接して、やっと相手が求めているものを考えながら演奏するようになった」と。好きな音楽家はドリームズカムトゥルー。「ボーカルの歌心が好き。サックスは人の声に近いって言われているんです。私も、歌うように演奏したい」。心の込もった優しい音色は、海の向こうでも聴衆を魅了するに違いない。