5.小細工という名の
 
と同時に彼は、
 【名前はなんていうんですか?あと、年はいくつですか?】
と聞いてきた。こいつ、大胆にも年を聞いてきやがった。もし私が30歳と送ったら奴はどうしたのだろう?おそらく彼の性格からして、
 【…すみませんが、やっぱり無理かもしれません…。僕は大学生なんです
となぜか嘘をついて断わるだろう。うまくは言えないがそういう奴なのである。
 しかしそれでは意味無いので質問に答えることに。
 【えっと、愛川希(←読める?)っていいます。中学校の三年生です☆】
 とまあ、一見なんの変哲もないメールに見えるが、実はかなりの小道具が仕掛けられている。一つ目は冒頭の「えっと、」である。男(特に高橋君)はこういうものにかなり弱い(当然女のメールに限るが)。この「えっと、」だけで高橋君は間違えなく「かよわい女の子」を想像したはずだ。(ちなみに、「えっとー、」「えっと〜、」など、のばし棒が入ると駄目)
 二つ目は名前である。前にかわいらしい名前だと書いたが、今考えてもいい名前である。例えば
 「百目 ダダ」
という名前だったら、即関係を絶つはずだ。それだけ名前の第一印象というのは大切なのである。
 三つ目に優しさである。「(←読める?)」。これは今考えると(読める?と聞くなら自分から教えろ)という感じだが、ようするに男に甘えてるという事実が高橋君に伝われば本望である。
 最後は☆である。このマークは今後のメールでも頻繁に登場するが(星也は嫌々ながらも使ってくれた)やはり明るさを強調させる。
 つまり、一つのメールだけで、かよわく、かわいらしく、優しく、甘えやすく、明るいという、男に気に入られる五大要素が全てつまった女を高橋君にインプットすることに成功したのである。
                                      6へ続く
     

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