先輩は私に聞いた。
「お前は高校どこ行く気なの?」
「俺はJ高校に行くよ」
「ってことはあれか。野球部に入るのか」
「たぶんね。そうなると思う」
 J高校といったら野球。それほどに野球部が有名な学校であった。しかし次の瞬間、先輩は私の予想しなかった返事をしたのだ。
「J高校で野球やるのはやめたほうがいいよ。監督が変わって評判がすげー落ちたよ。J高校の野球部の奴が嘆いてた」
 私はこの言葉を聞いて非常に悩んだ。J高校にはうまくいけば推薦で入れるかもしれない。しかし目的の野球部がそれでは行く気が失せてしまう。それなら毎年三回戦まで行くR高校のほうがいいのではないか。これから勉強すればまだ間に合うのではないか・・・
 この時十月。二回目のVもぎも、前回と同じ結果に終わった。ちなみにD判定というのは合格率約40%前後である。ちょいと厳しい。そこで私は神田の三省堂へ行き、問題集という問題集を買い漁った。また全国の過去問を全教科買い、一日一県やることにした。
 だが問題があった。担任と親への説得である。二年の頃からJ高校へ行くと言っていた私が、いきなりそれ以上のR高校を受けようというのである。黙って見過ごしてくれるわけが無い。担任には長いこと話して納得させたが、親は一筋縄ではいかなかった。しばらく険悪なムードが続いた気がする。
 そしてついに二学期期末試験。この試験の結果で高校に推薦で入れるかどうかが決まるようなものだ。ちなみに私の一学期の内申だとR高校の標準内申に4つも足りない。推薦レベルの話ではなかった。
 期末にはそれなりの自信があったが、一学期の評定も加味するということなので内申の大幅アップは望めないということだった。実際、私の二学期の内申は一学期と少しも変わらなかった。この時点で私は推薦をあきらめ、一般に全力を注ぐことに決めた。
 しかしである。私は担任から思わぬ言葉を浴びせられる。
「あー、お前は推薦受けろ」
「え?」
                                        7へ続く        

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