◆2月26日
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2月27日0時57分現在
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◇開始13時01分◇大分◇観衆13700
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【007の一場評】
◆中日・田中スコアラー 「これから調子をあげればコントロールもよくなり、打ちづらくなるのではないか」
◆巨人・三井スコアラー 「バッターが振るボール球がないのが課題。シーズン中にここをどう直せるかだと思う」
◆広島・長島スコアラー 「(球速は)150キロ出た。確かに速いが、いい球が続かない。リリースポイントが安定していないのが惜しい」
★飯田が球団初安打
新球団の記念すべき初安打は、ヤクルトから移籍した飯田。一回に久保のスライダーを右前打すると、チーム初盗塁も決め、かつてヤクルト黄金時代のリードオフマンだった俊足も見せつけた。「自分が球団史上最初の1本目になったのは、やっぱりうれしいです。公式戦でも最初に打ちたいね。盗塁も失敗を恐れずにどんどん走りますよ」と胸を張った。
★藤井が対外試合の球団第1号
藤井が五回に真田から左越えのソロ本塁打を放った。対外試合の球団第1号となる記念アーチに「打った瞬間、入るとは思わなかった。新しいチームなので、何でも初になる。気分がいいですね」と笑みがこぼれた。
★山下アピール逆転2ラン
紅白戦で3発のアーチをかけた山下が、六回に左翼席へ逆転2ラン。状態のよさを見せつけた。「甘い球でしたよ。いい調子を保ってやれています」。一塁の定位置争いはデイモン、山崎、吉岡と強敵揃い。それでも田尾監督は「(キャンプで)教えたことが身についてきている。昨年までとは違うね」と高い評価を与えた。
★川口が決勝タイムリーに大喜び
決勝タイムリーを放ったのは途中から左翼に入った川口。3−3の九回二死一、三塁で、二塁左へ痛烈なゴロ。巨人・鈴木が弾いて三走が生還した。「捕られるかと思っていましたから、危なかったですよ。(記録が失策か安打は)試合が終わるまで分からなかったんです」と大喜び。近鉄時代、中村(現ドジャース)の後継者といわれたパワーヒッターは、レギュラー獲りを狙う。
一場のデビュー戦は、いい、悪いの両面がはっきり出ていました。よさは150キロをマークした直球。この投手は直球を軸に投球を組み立てていくんだという将来像が、はっきり見えました。ただ、その直球のコントロールが時折、とんでもなく悪くなる。フォークのようにワンバウンドになったり、高めの棒球になったり…。4被安打すべてが直球でしたが、高橋由にカウント0−3から打たれたように、現状では直球を待つ打者を直球で封じるだけの信頼度はありません。
一場が1年目からローテーションに入るのなら、苦しいカウントではカーブやスライダーで攻めたほうがいい。セットポジションでの投球が安定していますし、将来的には直球で押し切るピッチングを目指しながらも、今年はコントロールミスでせっかくの試合を壊さないという意識の変化が必要です。
一場には岩隈に続く先発の軸として高いハードルを求めてしまいがちですが、ラス、ホッジス、川尻、谷中、小倉、山村と実績のある投手がいますから、楽天が5割以上の勝率を挙げていくには、岩隈以外のみんなが5−6勝するんだ、という気持ちで臨むべきです。
まだ両刃の剣のような危なっかしさがある一場も、ハードルを低くしてあげれば、目標ラインには真っ先に到達してくるはずです。
(サンケイスポーツ専属評論家)
(オープン戦、巨人3−4楽天、26日、大分)新たな名勝負への予感がした。清原Vs一場。一回二死一塁、ガチンコ勝負がいきなり実現した。1球目・直球(ボール)、2球目・直球(同)、3球目・直球(ファウル)…。小雪をも溶かす火花の競演に、大分のファンも徐々に熱気を帯びていった。
『いい度胸やないか』
またも直球勝負で挑む一場の4球目。叩き斬った白球は、豪快な音を立て左翼フェンスを直撃した。先制の適時二塁打。番長が一場に贈るプロの洗礼だった。
「いいピッチャーですよ、本当に。球も速かったしね。僕に対してまっすぐで勝負してくる。その心意気がいい」
伊良部、松坂ら剛腕との力勝負をこよなく愛してきた清原。一場への最大級の賛辞こそ、番長流の愛情表現だった。
試合前から熱気ムンムンだった。最低気温2.6度を記録したこの日。チーム全体のアップを終えてもただひとり、清原は塁間ダッシュを繰り返した。ほおを打つ雪を流れる汗が溶かしていった。
忘れもしない。平成12年3月8日。この日と同じ雪まじりの岐阜・長良川球場でのオープン戦(対阪神)で三ゴロを放ち一塁に駆け込んだ際、左太もも肉離れを起こした。以降、けがとの戦いが始まった。しかし現在、走法指導を仰いでいる東海大・高野助教授からは「ウオーミングアップ不足」と一刀両断にされたという。「もう一度基本を見つめなおしてみよう」−。キャンプ前の誓いは本物だった。
三回。三ゴロの際には一塁に全力疾走。「あれだよ、あれ。あれを言ってるんだ」。前日26日、キャンプ打ち上げの手締めで“手打ち合体”したばかりの堀内監督もほおを緩めた。
「野球のほうは全く問題ないです、オレは」
試合後、力強く言い放ちバスに乗り込んだ清原。ユニホーム姿の選手が多い中、身を包んでいたのは肉体を冷やさぬよう着替えた真っ赤なジャージー。闘魂は最後までメラメラと燃えていた。
(佐藤春佳)
〔写真右上:さすがは千両役者。清原は一回、一場から先制の左越え二塁打を放ち、プロの厳しさを教えた=撮影・浅野直哉。同左下:雪まじりとなった楽天戦。清原がぬれた頭をストーブで乾かす場面もみられた=撮影・荒木孝雄〕
【清原vs剛腕の名勝負】
★平成5年5月3日 西武−ロッテ5回戦(西武)。八回から登板した伊良部を先頭で迎えた清原は、日本最速の158キロを記録した直球を2球連続でファウル。最後は157キロを左中間二塁打。8年5月には117イニング続いた伊良部の被本塁打ゼロ記録を清原がストップさせるなど、“平成の名勝負”を演じた
★14年10月26日 西武との日本シリーズ第1戦(東京ドーム)。三回二死二塁から、シリーズ初登板の相手先発・松坂から150メートル特大弾。シリーズ10度目、57試合目の貫禄(かんろく)を示し、4タテでの巨人優勝の原動力となった
★16年3月25日 ヤクルトとのオープン戦(神宮)。ヤクルトの自由獲得枠ルーキー・川島からオープン戦3号3ラン。「シーズンで借りを返したい」と闘志を駆り立てられた川島は、シーズンでは10勝を挙げ新人王に輝いた
★高橋由がオープン戦チーム1号
3番・DHの高橋由が三回、一場からオープン戦チーム1号となるソロを左翼席に放った。「一場? 速いね。力んでいるのかもしれないけど、指にかかった球とそうじゃない球があった」と冷静に分析。昨オフに手術した右ひじの影響から、当面は打撃に専念する日が続きそうだ。
★江藤が元同僚・ラスから中前打
清原に代わって途中出場した江藤は1打数1安打。六回に2年前まで同僚だったラスから中前打を放った。「やりにくかった? ちょっと分からないけど、なんだか懐かしかったよね」と笑顔で、次の遠征先となる山口行きのバスに乗り込んだ。
★元木、小久保らが3月1日合流
寝違えでチームと別行動の巨人・元木大介内野手(33)、腰痛の小久保裕紀内野手(33)に、ローズ外野手(36)ら外国人選手が3月1日の札幌遠征からチームに合流する。
■データBox
〔1〕巨人・高橋由が三回、楽天の新人・一場からソロ本塁打。高橋のオープン戦初戦の本塁打は、平成14年2月24日(近鉄戦、宮崎)、同16年2月28日(ロッテ戦、鹿児島)に次いで2年連続3本目。オープン戦通算では18本目となった。 〔2〕巨人のオープン戦第1戦の敗戦は平成13年以来4年ぶり。最近10年の第1戦成績は
このうち、初戦敗戦から優勝したのは平成8、12年と2度ある。 |
(オープン戦、巨人3−4楽天、26日、大分)巨人・久保が“先輩”の貫禄(かんろく)を見せた。新規球団・楽天との歴史的一戦。オープン戦開幕投手として、背番号「11」が4回3安打無失点の快投劇を演じた。
「直球のコントロールはできていたけど、球のリリースポイントが…。追い込んで、甘い球を打たれるのは、去年と同じ。反省しています」
二回、三回と連続して先頭打者に二塁打を許したが、MAX146キロの真っすぐと絶妙な変化球を駆使してその後を料理。同じ背番号の一場との“差”を見せ付けた。
「僕の野球の原点がここにある」と言う久保。大分は野球を始めて間もない小5まで過ごした故郷だった。前夜はお世話になった市内のラーメン店を訪問し、ご主人に観戦チケットをプレゼント。「見ていてくれたかな」。ノビもコシもある“ラーメン・ストレート”で恩返しを果たした。
同期生の先発候補・木佐貫が右内転筋を痛めて二軍調整中。開幕ローテ入りに向けて、久保が一つ目のハードルを難なくクリアした。
(山田貴史)
〔写真:先発ローテ入りを狙う3年目・久保は4回無失点の好投で猛アピール=撮影・荒木孝雄〕
◆先発した久保について巨人・阿波野投手コーチ 「この寒さの中ではまあまあ。(実戦だから)ブルペンとは違う。今後の起用法? 先発もあるし、中継ぎもあると思う」
★真田2回3失点…守乱に泣く
4年目の真田が五回から2番手として登板。守備陣の乱れから2回3失点(自責1)の結果に終わった。「寒かったけど、関係ない。球が高かったし、甘かった。楽天? 特に分からなかったので、意識はしませんでした」と言い残し、チームから離れて帰京した。
★阿部がデータ収集に専念
阿部はデータ収集を優先させた。一場と対決した二回には、“カット打法”で5球ファウルで粘るなど、計9球を投げさせた。「印象? いいんじゃないかな」と多くは語らなかったが、「マウンド度胸もいい」と次回の対戦を楽しみにしていた。
★自由枠・三木が27日先発へ
自由獲得枠の三木(八戸大)が27日の楽天戦に先発予定。右手けんしょう炎で帰京した同期の野間口(シダックス)に先駆けるデビューで「先発させてもらえるなんて思ってなかった。野間口のおかげかなぁ?(笑)」。知名度では野間口に後れをとっていただけに、試合が全国中継と聞き「勝負ですね」と大ブレークを誓っていた。
★観衆「1万3700人」…実数を発表
注目カードの入場券は前売りで完売。試合を主催した巨人は観衆を「1万3700人」と百人単位まで発表した。巨人は今年から観客数の“ドンブリ勘定”をやめ、実数に近い人数を発表することを決めている。有料券販売枚数(年間予約席を含む)と招待券での来場数を集計したものを発表するとしている。
和製大砲がいきなりアピールだ。キャンプ中の紅白戦で3本塁打した楽天・山下勝己内野手(27)=前近鉄=が26日、オープン戦開幕試合となった巨人戦(大分)に『5番・一塁』で先発出場。二回に左越え二塁打を放つと、六回には左翼へ2ランと3打数2安打&2打点の活躍をみせ、田尾安志監督(51)に“初采配初勝利”をプレゼントした。東京から空路、駆けつけた三木谷浩史オーナー(39)も歴史的1勝をしかと見届け、「これからも勝負にこだわる」と進軍ラッパを鳴らした。〔写真右:楽天・山下は六回二死一塁から左翼へ2ラン。期待を寄せる田尾監督へ、まさに答え一発!=撮影・浅野直哉。同左:ホームランを放った山下を出迎える楽天・田尾監督(左から3人目)。満面の笑顔だった=撮影・荒木孝雄〕
紅白戦3発はダテではなかった。楽天の“開幕5番”に座った山下が六回二死一塁、真田の真っすぐを左翼席へ豪快にほうり込んだ。
「ホームランはたまたま。決して狙っていたわけではないです。でも、甘い球が来たんで、“ヨシッ!”と思い切りいきました」
田尾監督がホレ込む和製大砲は笑顔で会心のスイングを振り返った。その時点では1−2と1点のビハインド。八回に一度追いつかれてしまったため決勝弾にはならなかったが、百戦錬磨の相手から流れを引き寄せる2ランに「きょうはチームにとっても初めてのゲームですからね。なんとしても勝ちたかった」と歴史的勝利に貢献した自負はある。
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「キャンプからいい状態は続いていましたが、だからこそ最初の打席は緊張しました」
その1打席目に久保から左翼越え二塁打を放ち、金縛りが解けた。
一塁候補には近鉄時代にレギュラーを張った吉岡、中日時代に本塁打王を獲った経験のある山崎がいる。吉岡は右アキレス腱断裂の影響が残り、山崎も調整遅れで二軍にいるが、格上のライバルたちは山下の季節が過ぎるのをじっと待っている。
だが、オープン戦からつきっきりで指導する田尾監督は、一塁としてメジャー経験のあるデイモンを『6番・DH』にしてまで「山下でいきたい」と口にしてきた。その希望は“開幕戦”で早くも確信に変わった。
「山下は紅白戦の好調さがそのまま出ているね。教えてきたことが身についているし、春男といわれてきたけど、今年は違うよ」
山下の一発は小雪舞う大分に球春を呼んだだけでなく、東北に生まれた新球団に和製スラッガーの誕生をも予感させた。
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★平石、地元で「いい仕事」
D7巡目・平石(トヨタ自動車)が故郷に錦を飾った。大分県出身の同選手は途中出場で3打数1安打。その1本が九回二死一塁からの“右前千金打”で、続く川口の決勝打を呼び込んだ。「やっぱり地元なんで気合いが入りましたよ。いい仕事ができました」としてやったり。楽天の選手ではただ1人、球場に『がんばれ平石選手!』と個人名の横断幕。その期待に応えるあっぱれのプロデビュー戦だった。
★川口“ラッキー”決勝打
決勝打を放ったのは途中から左翼に入った川口。3−3で迎えた九回二死一、三塁から二塁左へ痛烈なゴロ。これを鈴木が弾いて強襲安打となる間に三走が返った。「取られるかと思っていましたから危なかったですよ。(記録が失策か安打は)試合が終わるまで分からなかったんです」とラッキーボーイは大喜び。近鉄時代には中村紀の後継者といわれたパワーヒッターが運を味方にして、今度はレギュラー獲りを狙う。
(九州は大分で迎えた記念すべき東北楽天ゴールデンイーグルスの“初戦”。東京から空路、三木谷浩史オーナーが駆けつけた)
−−朝早くからごくろうさまです
「楽しみですね。いやぁ、寒いな…」
(そのまま三塁側ベンチに向かい選手を激励。試合中はネット裏から戦況を見守った)
−−(試合終了後)老舗の巨人を相手に歴史的勝利ですね
「いやぁ…。でも、まだオープン戦だからねぇ」
(といいながらもうれしさは隠せず)
−−それでも勝つことは大事です
「そうだね。オープン戦でも勝ててよかったね」
−−試合中は声も出されてたようで、ずいぶんエキサイトしていたようですが
「ボクが? いや、それは隣の人だよ(M・キーナートGMと島田球団社長)」
−−収穫はありましたね
「十分に戦えるな…と自信になったんじゃないですか。周りのみなさんにも、そう思ってもらえるだろうしね」
−−手応えは感じてますか
「ウン! これからも勝ちにはこだわりたいよね。やっぱり負けるのはイヤだからね。課題も多かったし、これからも頑張ってほしいね」
〔写真:巨人を相手に初陣劇勝。楽天・三木谷オーナーはご満悦の表情で引き上げた〕
<オープン戦:楽天4−3巨人>◇26日◇大分
「歴史的一戦」で、楽天が巨人をなぎ倒した。50年ぶり新規参入球団の楽天初の対外試合は、同点の9回2死から川口憲史外野手(28)の決勝打で勝ち越し。見事な白星スタートを飾った。雪が舞う大分に、三木谷浩史オーナー(39)も駆けつけ、田尾安志監督(51)が掲げる「攻めの姿勢」と「チーム内競争」が発揮され、逆転勝利を収めた。田尾イーグルスは今日27日の巨人戦(山口)を含め、残るオープン戦も全戦必勝態勢で、3月26日のパ・リーグ開幕を目指す。
球団初の「勝利」に誰もが興奮していた。マイエットが巨人川中を併殺で仕留めてゲームセット。「勝ったぞ!」と三塁側ベンチ横の球団室から飛び出した島田亨社長(39)が叫ぶ。背後で三木谷オーナーが顔を引きつらせていた。「選手のおかげです」と引き揚げてきたナインに手を伸ばす。田尾監督と握手したが、どう笑っていいのか分からない様子だった。
楽天ベンチも球団も「一丸」となった最終回の攻撃。8回に同点に追いつかれていた。「オープン戦は同点でも延長戦はありません」と場内アナウンスが流れても、攻めの姿勢は変わらない。先頭斉藤が死球で出塁も、エンドランのサインは伝達ミスで走者は盗塁死。好機をつぶし2死になった。途中出場の長坂はボテボテの三ゴロ。だが全力疾走が送球ミスを誘ったように失策で出塁した。もはや気迫は巨人を超えていた。
ルーキー平石が右前打でつなぎ一、三塁。そして川口。二塁右のゴロは巨人鈴木のグラブをはじいて中前へ。殊勲の決勝打に「何だか分からないよ〜」。叫ぶヒーローに楽天ベンチは全員でバンザイだ。
まだ終わらない。竜太郎が左前打で続く。好返球で二塁走者・平石が本塁憤死もベンチは大騒ぎだ。川口と竜太郎。ともに28歳の外野手。近鉄、オリックスと旧球団は違うが、外野の一角を狙う気持ちは同じ。キャンプ中、2人が競うようにバットを振っているのはナインの誰もが知っている。定位置を争う2人の「打ち合い」は田尾イズムである競争意識そのものだった。
そして田尾監督がヒーローに挙げたのが、一時は逆転となる2ランを放った山下だった。6年目の大砲は昨季のウエスタン・リーグ2冠(打率、本塁打)ながら、近鉄・オリックスの合併球団のプロテクトから外された。
愛称は漫画「ど根性ガエル」のすし職人に似ていることから「ウメさん」。毎年、皮肉なことに梅の花咲くオープン戦までは絶好調だがシーズンまで続かない。だが田尾監督は「今年は違う。山下はつかんだ」ともり立てる。精神的なひ弱さが課題だった山下も「監督に“勝とう”と言われてましたから」。年俸750万円の成長株はその期待に応えた。ベテラン、若手を問わず選手の潜在能力を発掘するのも田尾監督の目指すところ。そういえば漫画の主人公は「ヒロシ」。同名のオーナーに「ウメさん」は欠かせない。
注目の初戦から「一丸」「攻めの姿勢」「競争」「潜在能力」と田尾野球のキーワードはちりばめられた。試合展開には「反省点が多かった」と満足していないが、新規参入決定から116日でつかんだ勝利を素直に喜んだ。「勝った中で反省するのが1番ですから。勝ちながら課題を無くしたい」。勝ってかぶとの緒を締めろ。勝ったから言える言葉だ。【久我悟】
[2005/2/27/08:54 紙面から]
写真=オープン戦初戦でチーム初勝利をものにした楽天の田尾監督(右)は、三木谷オーナーとともに、スタンドのファンに笑顔で手を振った
<オープン戦:楽天4−3巨人>◇26日◇大分
楽天一場の初登板は「儀式」から始まった。マウンドに上がると、まず最初にバックスクリーンを見つめた。精神集中するため、大学時代から欠かさない。心を落ち着かせ、そして巨人打線を対する。1番仁志への初球は、いきなり150キロだった。59球のうち約6割がストレート。変化球でカウントを整え、制球の乱れもあったが、肝心の場面では直球で勝負した。
4番清原にも、真っ向勝負した。「ずっとテレビで見ていた人。真っすぐがどこまで通用するか試したかった」と、1人の野球少年に戻っていた。興奮を抑えきれず、力みを呼んで左翼フェンス直撃のタイムリー二塁打を打たれた。悔いはまったくなかった。それでも2打席目と合わせ全8球中7球が直球。「三塁ゴロに打ち取った」という2打席目を心から喜んだ。
忘れられない新大分球場だった。昨年7月2日の日米野球第1戦で先発し、6回3失点で勝利を飾っていた。巨人入りで心が固まっていた当時、ネット裏に複数の巨人スカウトが並んだ。その後、金銭授受問題が発覚。運命の糸で楽天へと導かれてプロ入り。記念すべき初登板の相手となった目の前の巨人を倒すことに全神経を集中させた。
強力打線を相手に、課題も見つかった。3回、高橋由にカウント0−3から左翼席に運ばれた。「詰まっていても運ばれた。力が違う」。アマでは速さだけで通用しても、プロでは細かい制球が必要だった。受けた捕手藤井も「もっとワンバウンドするようなボールがほしい」と低めへの意識を求めた。
それでも剛球の印象は植え付けた。雪が舞う寒さの中で、直球の平均球速は140キロ中盤。他球団スコアラーから「リリースポイントはバラバラ。ただあの威力に制球がつけば厄介」と警戒の声が上がった。3回4安打2失点も、田尾監督は「今後も5、6日の間隔で使っていく」と明言。実戦登板を重ね、ゴールデンルーキーは成長し続けていく。【柴田猛夫】
[2005/2/27/08:18 紙面から]
<オープン戦:楽天4−3巨人>◇26日◇大分
どや! これが清原や! 巨人清原和博内野手(37)が、楽天一場に“プロの洗礼打”を食らわせた。1回、2死一塁。カウント1−2から外よりの直球をたたき、左翼フェンスを直撃。低く、速く伸びていく打球は、まさに「しばき」と呼べるものだった。あと30センチ上ならサク越え弾…という適時二塁打に、左翼芝生席のファンも、思わず腰を上げて打球に手を伸ばしたほどだった。
「いいピッチャーなんやない。スピードもあるし。そんなことよりも、僕に対して真っすぐで勝負してくる。心意気がいいよ」。
20年生VS1年生の初対決。清原に軍配は上がったものの、直球勝負を挑んできた若武者のハートにほれ込んだ。1打席目は4球すべてが直球。2打席目も、2球目のスライダー以外はすべて直球。節目の20年目を「気合や」と自身を鼓舞してスタートさせている清原は、一場から力をもらったかのように「心意気がええわ」と最大級の賛辞でデビュー登板をたたえた。
若い力に負けじと清原もハッスルした。3回、2度目の打席は三塁ゴロ。それでも、一塁へ激走を惜しまない。両腕を振り、ベースを駆け抜ける姿に、堀内監督も「あれよ。あれを言っているのよ」と大絶賛。アウトと分かっても懸命に走る。それこそ、堀内監督が求める姿勢であり、今季のテーマに掲げるスピード野球だった。
試合後、山口へ向かうバスの中で、ファンに向かって、タイガー・ウッズばりのガッツポーズ。ファンにも闘魂を注入して、大分を後にした。バスに乗り込む前には「野球の方はまったく問題ない。おれは」と腹の底から重低音を響かせた。完全復活への自信が漂う。「しばき」は、まだまだ続きそうだ。【金子航】
[2005/2/27/08:20 紙面から]
<オープン戦:楽天4−3巨人>◇26日◇大分
右ひじ手術で出遅れていた巨人高橋由が、周囲の不安をかき消すアーチを放った。吹雪が舞う中、「3番・DH」で出場。1点リードの3回2死、楽天一場に対してボールを3つ選んだが、簡単に四球は選ばない。4球目の甘いストレートに体が反応。「1、2の3で振りました」という打球は風に乗り、そのままレフトスタンドへ吸い込まれた。
チームのオープン戦第1号にも「一場君の球の重さを感じたし、風のおかげ」と謙そんしたが、十分な手ごたえを感じたはずだ。昨秋にメスを入れた右ひじは「まだ80%に届いていない」という回復具合なだけに、キャンプでも打撃練習に多くの時間を割いた。成果がいきなり出て、山本ヘッドコーチも開口一番、「由伸がいい感じで打てたからいいんじゃないの」とコメントしたほど、巨人には何よりのプラス材料の一発。今後もしばらくはDHで「打のヨシノブ」をアピールする。【金子真仁】
[2005/2/27/08:55 紙面から]
写真=3回裏、高橋由は一場からオープン戦1号
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<巨人・楽天>チーム初陣を会心の勝利で飾り笑顔でハイタッチする磯部(右)ら楽天ナイン |
【楽4―3巨】三塁ベンチはもうお祭り騒ぎだ。オープン戦に帯同した楽天の全37選手がベンチ入り。4―3の9回1死から、マイエットが川中を遊ゴロ併殺に仕留めると、拍手、歓声、そして笑顔があふれた。
ナインをハイタッチで出迎え、ベンチ裏に出てきた田尾監督を待っていたのは三木谷オーナーだった。「まあ、一応、何とか、何とかだね」。球団と自身の初陣を飾った指揮官は言葉にならない言葉で初勝利を報告。無理もない。新規参入球団が、初の対外試合で70年の歴史を誇る日本一の“老舗”巨人をやっつけたのだ。54年に誕生の高橋ユニオンズはオープン戦初戦は敗退。歴史的な1勝といっていい。
一場の力投を含め、価値ある勝利。それを呼んだのは田尾野球の攻める姿勢だった。3―3の9回。どうしても1点が欲しい場面で動いた。無死一塁。初球にバントでなくエンドランを仕掛けた。「相手を攻め続ける攻撃をやりたかった」。結果は打者の前田がサインを見落とし、一塁走者・斉藤は盗塁死。だが「うちは1点を多く取って勝つ野球をやらないといけない」という指揮官の信念が勝ち越し点に結び付く。2死後、長坂の三塁敵失を足場に一、三塁。ベテラン川口がしぶとく二塁へ決勝内野安打した。
「ミスの後に、相手のミスから点が取れたのが収穫だった」。6回の山下の逆転2ランも2死から敵失の後。打点はすべて近鉄組だった。何よりもあきらめずに攻撃した選手たちの姿勢を、田尾監督は喜んだ。
新規参入当初は「100敗する」と言われた楽天。試合前にはプロ15年目の関川が「こんなに緊張するもんだっけ」と漏らし、選手会長の礒部が「最初だから、しようがないっスよ」と必死に緊張をほぐした。そんな初陣の重圧をはね返して歴史的な第1歩。巨人に勝って得た自信を、3・26ロッテ開幕戦までに確信に変えるつもりだ。
≪オーナー自信の笑み≫記念すべきオープン戦初戦に合わせて三木谷オーナーが東京から大分入り。試合前、巨人・清武球団代表にあいさつした際は「いいゲームができるかどうか。負け続けるんじゃないかと思います」と弱気だったが、試合後は「本当によかった。巨人に勝った?まだオープン戦ですからね。収穫は戦えるってことを自分自身で持てたことと、周りにもそう思ってもらえたこと」と自信の笑み。キーナートGMも「心臓によくない試合。ドキドキしたよ。最高のパッチワークができてきたね」と興奮していた。
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<巨人・楽天>初回2死一塁、清原(右)は一場の直球を豪快にスイング。先制二塁打を放つ |
プロ野球のオープン戦が26日、各地で開幕し、大分では50年ぶりの新規参入球団・楽天が巨人を4―3で下した。楽天先発・一場靖弘投手(22=明大)は“プロ初球”に150キロをマークする鮮烈デビュー。一方、巨人・清原和博内野手(37)はその一場から左越え二塁打を放ち、圧倒的な存在感をあらためて示した。復活に懸ける男と、新たな世界に挑戦する男。2人の対決が大分に降った雪を溶かした。
【巨3―4楽】気温2・6度。野球の春を告げたのは粉雪だった。初回2死一塁。清原は燃えていた。初球145キロ、2球目144キロ。ボールになっても一場は強気だ。3球目146キロ。初めて振る。ファウル。力と力。野茂や伊良部を思い出した。カウント1―2。4球目はさらにスピードを増した148キロ。清原は思い切り叩いた。ラインドライブがかかった打球は左翼フェンスを直撃する。先制の適時二塁打。予告通り、直球勝負を挑んできた若者をねじ伏せた。
清原「いいピッチャーなんじゃない。スピードもあるし。そんなことよりも僕に対して真っすぐで勝負してくる心意気がいい」
1万3700人が新大分球場を埋め尽くした。清原が打席に立っただけで球場全体が盛り上がる。これがプロ野球。夢を現実に変え、真っ向勝負でスタンドをわかせた。
一場「テレビでしか見ていない人が打席にいるのでうれしかった。清原さんは体も違うし、ほかの打者と違って独特の雰囲気があった。自分の真っすぐがどこまで通用するか試したかった」
三回はスライダーを交え最後は142キロで三ゴロに打ち取った。さらに鮮烈な印象を与えたのは初回先頭の仁志に投じた初球150キロ。プロ初の対外試合で投げた初球は150キロだった。
一場「最初は力みから指に引っかかりがあったので150キロが出てもプラスにならない。2回以降はいい感じで投げられた。清原さんとはプロに入ったばかりのピッチャーと長年やっているバッターとの違い。打たれたけど2打席目は抑えられたし、いい経験になった」
昨年、プロ入り最低の成績に終わった清原は、球団から事実上の構想外を通告された。屈辱に耐え、残留を決意し「泥水を飲む覚悟」と言った。一方の一場は巨人に入団することができなかった。幼い頃からの巨人ファン。桑田にあこがれ、自由獲得枠で入団するはずだった。ところが、昨年8月に金銭授受問題が発覚。50年ぶりの新規参入球団に拾われた。春季キャンプ中にはこう言った。「もちろん巨人に入りたかった。でも、今では新しい球団に入ってよかったと思う」。そんな2人が導かれるようにオープン戦初戦で対決したのだ。
清原には苦い思い出がある。00年3月8日の阪神とのオープン戦。雪が舞う岐阜・長良川で走塁中に左太腿を肉離れし、開幕を初めて2軍で迎えた。この日も雪。かつての清原なら出場を免除された悪コンディションだが、今や立場は変わった。そして変わったのは立場だけではない。肉体も変化した。陸上短距離界の第一人者・高野進コーチと取り組んだ下半身強化の成果が出た。三ゴロの際には一塁に全力疾走。堀内監督を「あれだよ、あれ」と満足させた。
一場は20日の紅白戦で3回を2発を含む5失点。そんな中で昨年6月13日の全日本大学選手権2回戦で広島経済大相手に完全試合を達成した時のビデオを見て、体が開く悪癖を修正した。3回を4安打2失点は合格だった。
清原「野球の方は全く問題ないよ、オレは」
一場「甘さがあったけど、打者のウイークポイントを見つけていけばプロでやっていける」
真っ白な雪。それは2人の現在の心境を象徴していた。
≪チキンパワーだ≫清原の先制打の陰にはチキンパワーがあった。キャンプ打ち上げ時に「全国の焼き鳥店を探したい」と宣言した通り、前夜(25日)の大分入り直後に、さっそく市内の焼き鳥店「鳥和」を訪問。小田、堀田との約40分の食事では、もも肉を中心に食べ、脂分は極力取らないようにした。ウーロン茶だけを飲みアルコールを控えるなど、体調管理に努めたという。
<巨人・楽天>3回裏2死、高橋由は左中間にチーム1号を放つ |
【巨3―4楽】狙い澄ました一発だった。3回2死。巨人・高橋由はカウント0―3からの一場の直球にバットを合わせた。打球は左翼へ。強烈な風にも乗ってフェンスを軽々と越えた。オープン戦初戦でのチーム第1号。不安なし。大分のファンにそう強烈に印象付けた。
「速いですよ」。ベンチに戻るなり、高橋由は堀内監督らにそう告げた。同い年のライバルである中日・川上のように、相手は直球でグイグイ押してきた。1打席目は平凡な左飛。「2つとも差し込まれていた。初戦ということで力んでいたのかもしれないけど、指にかかっている球とそうでないのがあった。でもいい投手。暖かくなれば、もっといい球が来るはず」。そんな黄金ルーキーから放った一発は、プロの先輩としての“洗礼弾”だった。
この日は寒さの影響もあって指名打者として出場。昨年10月に手術した右ひじはまだ万全ではないが、打撃に関しては不安はどこにもない。キャンプでは指揮官が「いつやめるんだ」とあきれたほどの連日の居残り特打。最多で1日1400スイング以上を振り込んだ日もあった。軸足の左足に体重を残すフォーム固め。ボールを引きつけることができたからこその左方向へのアーチだった。
天候とひじの回復状態を見ながら、今後は右翼としての出場も増える。高橋由は着実に、春満開のその日に近づいている。
≪堀内監督苦笑い≫まさかの白星献上に、堀内監督は「なかなかやる?そうだね。でも(勝敗は)どうでもいいじゃない。オープン戦なんだし。(キャンプで)実戦が足りなかったからしようがないけど…」と苦笑いだった。寒さのため主力組は早々と交代。しかし途中出場の若手選手に覇気がなく、指揮官は「元気がないしミスも多い。もうちょっとアピールするものがないと」と厳しい口調だった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
楽天 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1 | 4 |
巨人 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 |
[勝]マイエット 1試合1勝 [敗]中村 1試合1敗 [本]高橋由1号(一場・3回)、藤井1号(真田・5回) 山下1号2ラン(真田・6回) |
◆三木谷オーナー 大喜び 昨年9月24日、プロ野球に新規参入を表明してから5か月。ライブドア・堀江社長との参入争いを繰り広げ、結果、半世紀ぶりのプロ野球参入を成し遂げた。久米島キャンプの視察では、田尾監督が打撃投手を務めるなか、フリー打撃で汗を流すなど、チームと一心同体で戦ってきたオーナーだけに、この1勝はチーム全員と喜びを共有できる。 「戦えるという手応えはつかんだ」と意気込んだ三木谷オーナー。「巨人に勝った? まだオープン戦だからね」とはぐらかしたが、シーズン中の「交流戦」でも、勝ちにいくつもりだ。 |
◆マスコット「クラッチ」と「クラッチーナ」デビュー |
◆巨人のオープン戦での“新人斬り” 楽天の新人・一場から2点を奪った巨人だが、99年にも大物ルーキーの西武・松坂をオープン戦の初対戦でメッタ打ちしている。3月11日、西京極での一戦。先発した松坂に対して、巨人打線は初回、5安打を集めていきなり5点を奪う。3回には高橋由が右翼へオープン戦2号となるソロ、4回は安打の川相(現中日)、小田を置いて、仁志が2点適時打。結局、松坂は4回を投げて被安打9、8失点。強烈な洗礼を浴びた。その後、20日に西武ドームでリベンジのマウンド(5回から登板)に立ったが、ここでも仁志、後藤に一発を浴びて、敗戦投手となった。 |
◆堀内監督、一場「速い」 楽天のルーキー・一場から高橋由の本塁打などで2点を奪い“プロの厳しさ”を教えた巨人打線だが、その素質に対しては、素直に評価した。堀内監督は「速いね。この時期のこの状況で、これだけ投げられるんだから大したもんだよ」と、一時は獲得に意欲を燃やした右腕の潜在能力をたたえた。 各打者の反応も総じて好評だ。2打数無安打に終わった仁志は「いいボールだったと思う。これからもっと良くなるんじゃない」と振り返り、同じく無安打の阿部も「いいピッチャー。スピードもあるし楽しみ」と話した。初回に速球を中前に運んだ二岡は「(球は)速かったですよ」、清水も「ナイスボール。すごい速いよ」と、特にストレートに合格点を付けていた。 |
◆観客“実数”で発表 満員1万3700人 この日の巨人・楽天戦の観客数は1万3700人と発表された。今年から巨人などが打ち出している「実数に近い数字で発表」の方針に基づいたもので、百の位までの細かい数字が記された。主催者側によると、チケットは前売りで完売しており、内外野とも満員だったが、同球場で前回、開催された03年3月3日のオープン戦、巨人・中日戦の「1万8000人」を下回った。 スタンドは大半が巨人ファン。楽天は応援組織が整備されていないこともあり、攻撃中も鳴り物や歌の応援はなかった。キャンプ地の宮崎・日向市からの応援ツアーで来た男性は「巨人ファンに囲まれて、肩身が狭いですね」と苦笑していた。 |
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50年ぶりに新規参入した楽天が26日、巨人と初のオープン戦を行い、4―3で競り勝ち、田尾安志監督(50)は初さい配で白星を飾った。時折雪が舞う中、初陣の舞台となった新大分球場(大分)は、1万3700人と満員の観客で埋まった。楽天の先発はルーキーの一場靖弘投手(22)で、3回2失点とまずまずのデビューだった。
オープン戦とはいえ、単なる1勝ではない。ゲームセットの瞬間、球場が異様な歓声に包まれた。選手をハイタッチで迎えた田尾監督は、ベンチ裏では三木谷オーナー、キーナートGMとがっちり握手。東京から駆け付けた三木谷オーナーは「これからだが期待が持てると思う」と手応えを口にした。
日本一の老舗球団との注目カードに255人もの報道陣が押し寄せた。めったに感情を表に出さない田尾監督が試合前のミーティングで「勝とう」と猛ゲキを飛ばした。だれもがこの1戦の重さを感じていた。
田尾監督のさい配も積極的だった。同点の九回無死一塁、初球にバントではなくエンドランのサインを出した。結果は打者の前田がサインを見落とし、走者は盗塁死。だが「相手を攻め続ける攻撃をやりたかった」という田尾監督の強い意志はナインに伝わったはずだ。
この後、二死から長坂の三ゴロで勝ちはなくなったと思われたが、敵失で出塁。平石が右前打で続き、二死一、二塁から川口が決勝打を放った。
田尾監督は「相手のミスの後に点が取れたのが収穫かな」と、あきらめずに攻撃したナインの姿勢を喜んだ。キャンプのミーティングでも「気持ちで相手を上回らないと」と言い聞かせてきた。
オリックスのプロテクトから漏れた選手と、他球団を自由契約になった選手をトライアウトで集めたチームは、参入当初「100敗する」と言われた。
反骨精神こそが、楽天の持ち味だ。巨人を砕いた初陣は大きな自信となるはずだ。
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因縁の相手にも気後れすることはなかった。ズバリ投げ込んだ初球は150キロをマークした。楽天の一場が巨人相手に堂々のデビューを飾った。
3回を投げて4安打2失点。4番・清原には真っ向勝負を挑み、プロ初タイムリーを打たれ、高橋由には1発の洗礼も浴びた。自己採点は70点。それでも「もう少し頑張れば、やっていけるという自信につながった」と、笑顔を浮かべた。
普通の精神状態でいる方が難しかった。50年ぶりの新規球団の初対外試合での先発。しかも巨人といえば一度は、自由獲得枠で入団を決意した意中の相手だ。
その後発覚したスカウトからの金銭授受問題で夢は絶たれ、プロ入りすら危ぶまれた時期もあった。そんな紆余(うよ)曲折を経ての巨人との“顔合わせ”。胸に期するものはあった。
「清原さんには自分のストレートがどこまで通用するか試したかった。2打席目では打ち取れたし、いい経験になった。仙台と同じ環境でやれましたね」。小雪の舞う大分の地で「楽天・一場」が着実にプロの一歩目を踏み出した。
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これが巨人の主砲だ。初回、二死一塁で4番・清原が打席に立った。一場の投じた初球、145キロに寒さは一気に吹き飛んだ。4球連続の直球勝負にバット一閃(いっせん)。左翼フェンス直撃の二塁打でオープン戦チーム初打点だ。
まさに洗礼を浴びせた形だ。「全球直球?そういう心意気がいい。ストレートも速いし、いいピッチャーです」。一場の能力の高さを認めながらもプロの厳しさを教えることは忘れなかった。
オープン戦とはいえ4番発進で確実に結果を残した。朝、グラウンドに現れると吹きすさぶ雪に「『シルミド』みたいやな」とつぶやいた。映画『シルミド』は韓国に実在した金日成暗殺部隊の物語。極寒の雪中で命懸けの訓練を受ける戦士と自分の姿を重ね合わせた。
そんな気合は指揮官にも伝わった。三回の第2打席は三ゴロに倒れたが、一塁まで力を緩めず疾走。これには堀内監督も「清原が全力で走った。あれだよ、あれ」。スピード野球の真骨頂とばかりに褒め称えた。
気温3・9度の寒さにも足を気にせず走り「野球の方はまったく問題ない」。本人は4番にこだわらない姿勢を見せてはいるが、故障の小久保が不在中に重責を果たし、開幕4番争いで一歩リードしている。
帰りのバスからファンに見せたこん身のガッツポーズが、今の清原の状態を物語っている。
逆転2ランを放った山下(左から2人目)からウイニングボールを受け取る田尾監督=新大分球場で(川柳晶寛撮影) |
新球団の楽天が26日、初陣となった巨人とのオープン戦(大分)で4−3と鮮やかな逆転勝ちを飾った。たかがオープン戦とはいえ、大きな大きな1勝。分配ドラフト直後は「100敗もあり得る」とまで言われた“寄せ集め軍団”が、幸先いいスタートを切った。この日の開幕戦は、この試合を含めて3試合が行われ、オリックスが11−3と阪神に大勝、西武は9−7で広島を破った。
◆最後は粘り勝ち
試合中に舞った小雪はやんでいた。歴史的勝利後の三塁ベンチ前、50人以上の報道陣に囲まれた田尾安志監督(51)は、強烈な西日を浴びながらニコリともせずに立っていた。
「相手のミスに乗じて勝ち越したのは収穫。選手にとっては、勝てて良かった。気勢が上がりますから。でも、サインミスもあった。満足度は50%かな」
浮かれてはいない。エラーをきっかけにつくった同点の9回2死一、三塁の好機で、川口が勝ち越し二塁内野安打。しかし、その前の無死一塁でヒットエンドランのサインを見逃した前田をヤリ玉に挙げることも忘れていなかった。
初陣ということもあって、多忙の三木谷オーナーも駆けつけた。1点を追う6回。未完の大砲・山下の逆転2ランが飛び出すと、三木谷オーナー、キーナートGM、島田球団社長らが陣取る記者席左隣の部屋から「ウォー!!」というけたたましい雄叫(たけ)びが上がり、それがなかなかやまなかった。
8回に一度は同点にされたが、最後は粘り勝ち。試合が終わると、島田球団社長は「勝ったあ…。メチャクチャうれしい」と顔をクシャクシャにしながら現れた。三木谷オーナーも「やったよお〜。ドキドキしたよ。こんなに勝ち星にこだわったオープン戦はないね」と言いながら田尾監督に握手を求めた。
昨年11月の分配ドラフトで40人を獲得した際は「100敗もあり得る」とマスコミや評論家に酷評された。しかし、絶対エース岩隈を獲得、新外国人ロペスも4番として使えるメドが立ち、チームの幹もできつつある。「シーズン後、100敗すると言った人たちに“ザマアミロ”と言ってやりたい」とキーナートGM。田尾監督やナインも同じ思いである。(竹下陽二)
1回裏2死一塁、一場(左)から左越えに先制のタイムリー二塁打を放つ清原 |
苦虫をかみつぶしたような指揮官の表情が、2年目堀内巨人のさえない船出を物語っていた。新生・楽天初の対外試合となった注目の一戦。老舗球団として“プロの厳しさ”をタップリと教えるはずだったが、終わってみれば、とんだ赤っ恥をかかされてしまった。
巨人にとっても因縁のルーキー・一場相手の戦い。1回に清原が先制打を放てば、3回に高橋由がソロ本塁打。だが、結果的に見どころはこれだけ。至上命令となるV奪回へ向け好スタートが切りたかった2005年の初戦なのに、楽天の引き立て役となってしまった。
「まだ(相手の)顔を覚えているところだからな」。煮え湯をのまされた楽天の印象を聞かれ、こう強がった堀内恒夫監督(57)は「きょうは寒いから、ベテランをあんまり出してもケガをしちゃうしな」とポツリ。時折雪が舞う悪コンディションの下、ほぼベストメンバーで挑んだ楽天に対し、確かに巨人は主力を早々と引っ込めた。さらに「実戦が足りなかったから、しょうがないけどな」と、キャンプが雨にたたられ3試合しか実戦を消化できなかったことも敗因に挙げた。だが、それらを割り引いても、この試合だけは勝たねばならなかったはずだ。
巨人は、楽天に初めての白星を献上した。この“不名誉な歴史”という汚点を残してしまった。「どうでもいいじゃねえか、オープン戦なんだから」と堀内監督は最後まで強がったが、大事な1年のスタートは、何とも盛り上がらないものになってしまった。(井上洋一)
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同日 同日(オープン戦開幕!イーグルス×ジャイアンツ@新大分球場詳報) |
翌日 翌日(G×E第二戦@山口西京スタジアム詳報:渡辺2回2失点(゚Д゚;)&ホッジス3回1失点&二遊間争い&三木ルーキー白星一番乗り!吉井投手2回無失点&藤本2安打&盗塁!&ご当地高知で球児の愛息危機一髪!&高井くん轟沈!(゚Д゚;)) 翌日(涌井くん150キロデビュー!ヽ(゚▽゚*)ノ) |