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Tokyo, 2003.3
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Ikuko Ono
photo by Tatsuya Hatta

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世界でも最も強固なアンダーグラウンド・スピリットのもと、長きにわたって活動を続けるインディペンデント・レーベル=ディスコード。D.C.ハードコアの拠点とも言うべき同レーベルの20周年を記念するボックス・セットで、その歴史に参加した所属バンド群のラインナップ最後にエントリーしているのが、このQ AND NOT Uだ。彼らこそ、BLACK EYESとともに今後のディスコードを担う役目を期待された若手のホープなのである。03年3月に実現した初来日公演では、ほとんどエンドレスで叩き続けるドラムを起爆力に、手前のメンバー2人がギターから次々に楽器を持ち替えて様々な音を鳴らしまくり、トリオ編成から繰り出される最大限のポテンシャルを見せつけていってくれた。ここに掲載するのは、最終公演の直前に行なったインタビューである。ちなみに、東京公演は2日ともソールドアウトという盛況ぶりで、もはやメジャーの流通ベースにのっからないアーティストでも着実に浸透することは可能なのだと改めて実感させらた。

「僕らにとっての戦いとは、できる限りいいバンドになることだから。自分達で最高だと思える音楽を作っていくことに奮闘してかなければいけないと思ってる」

最初に、テープをおこす人のために、自分の名前と、最近のお気に入りのバンドとかレコードをコメントしてください。

John:ドラムを叩いてるジョン・デイヴィス。最近気に入ってるバンドは、ザ・ビートというバンドなんだ。70年代末に活動してたロサンゼルスのバンドなんだけど、最近それに凝り始めたよ。

Harris:僕の名前はハリス・クラーで、最近気に入ってるレコードはMorton Feldmanの『Untitled Piece for Piano and Cello』っていう1981年の作品。

Chris:僕はクリス・リチャーズ。今回のツアー中に買ったもので一番気に入ってるのは、カエタノ・ヴェローゾがロンドンに亡命中の1971年に作ったソロ・アルバムなんだ。ブリティッシュ・トロピカリアものはアメリカでは入手困難だけど、こっちではどの店に行ってもいろんなフォーマットで売ってるから、大満足してる(笑)。

どうもです。さて、昨日は素晴らしいショウをありがとうございました。

Chris:こちらこそ!

今夜これから最後の公演が残ってますけど、今日まで日本でツアーを廻った感想を教えてください。

Chris:今のところ、すごくうまくいってるよ。アメリカ国内を回る場合だって、新しい都市での反応はやってみないと分からないものだけど、ブッキングから何から他人がやってくれてる外国での経験は、すべてが驚きの連続だったんだよね。みんな熱烈に歓迎してくれたし、僕らの音楽に本当に親しんでくれてて、興味を持ってくれてるってことが分かるような反応をもらえた。本当にラッキーだと思ってるよ。

John:嬉しいサプライズだよね。

共演した日本のバンドについてはどうですか?

John:トリコだっけ? あのバンドもよかったし、僕らの友人であるユタカがやってるディグ・ア・ホールもよかったし。それに、ベイルート・ファイブもね。

Harris:200MPHのベースはすごかったね。

Chris:うん、どのバンドもよかったよ。日本でやってみて思ったのは、どのバンドもリハーサルをきっちりやってそう、ってことだね。ヨーロッパで一緒にプレイしたバンドはあんまりやる気がないような演奏をするやつらばっかりでさ。こっちのバンドはみんな、真剣に取り組んでるように見えた。これは多分、リハーサルスペースが限られてるために、いい加減な態度ではバンドをやっていけないからだろうな、って思ったよ。僕が話をすることができた人達はみんな、献身的に練習してきてるってことだったし、実際、すごくタイトな素晴らしい演奏を見せてくれた。敬意を表したいね。

逆に、日本で初めてやってみて、戸惑ったこととか困ったことはありますか?

Chris:日本の観客って、もの静かな傾向はあると思う。演奏を始める前に静まり返ってるよね。会場内でかかってるBGMも、アメリカでは普通、低音を目一杯きかせたうるさいダンス・ミュージックなんかだけど、こっちでは邪魔にならない音楽がかかってて、みんな落ち着いて低い声で喋ってる。僕らが慣れてるのはもっとヤジが飛んできたり(笑)、お互いに大声で怒鳴りあってるようなフロアなんだよね。だから、こっちの傾向を知ってからは、曲と曲の間が途切れずにシームレスに聞こえるように、曲間を工夫するようにしてるんだ。演奏中あんなに静かだったのに、ショーが終わってから興奮した様子で「素晴らしい! 最高!」って言いに来る人がいるのには、ちょっと面食らったよ。

そう、静かに見えても心は燃えているんですよ。で、その曲間がほとんどない演奏にもかなり驚いたんですが、セットリストを作るときに繋ぎ方を相談したりとかしたんでしょうか?

Harris:ストップさせない場所だけ打ち合わせてあるんだ。ギターのチューニングをしなければならないところや、キーボードへ移動しなければならないところではストップする必要があるから。主にクリスがセットリストを決めてて、それに対して僕らが「ここはこう変えた方がいい」とか注文を付けてるけど、実際に演奏する内容については決めてないんだ。

Chris:メインに担当する人間は決めてあるけどね。そいつの判断によって何をプレイしてもいい、ってことにしてる。

John:大体、僕の役目なんだよね。

Chris:そう(笑)。

John:あとの二人は大抵、チューニングしてたり機材をいじってたりするから、そういう必要のない僕が適当に繋げてる感じなんだ。

Harris:ジョンが雰囲気を作ってくれて、僕らがそれをフォローするってパターンだね。

Chris:うん。そういえばダンス・ミュージックってずっと続くリズムが基本だよね。ハウスでもエレクトロニクスでもゴーゴー・ミュージックでも。ビートが続いて、メロディが現れたり消えたりする。考えたことなかったけど、そういうものに無意識に影響されたのかもしれないな。

ダンス・ミュージック系のイベントとかにも、よく行ったりするんですか?

Chris:よく行くよ。

Harris:DCでは大体1週間おきにあちこちのクラブでイベントが行われてるから、そこに踊りに行くこともあるし、家でも聴いてるし。実際、僕自身は踊るより聴く方が好きなんだ。ダンス・ミュージックは僕にとってそんな不思議な存在なんだ。

Chris:クラブへ行くのは金がかかるし。やたら金がかかるシステムになってるから、レコードを買ってきて好きなだけ家で聴く、って方が理にかなってると思うよ。

ダンス・ミュージックのイベントの方が値段が高いっていうのは、日本と逆ですね。

Chris:へえ、そうなんだ。

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