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マイクは、ユールシドとNISの両バンドでソングライティングを担当していることになるわけですが、それぞれのバンドを意識した曲の書き方があったりしますか? Mike:ユールシドは活動休止中と言えるかもしれない。ここ2年間はずっとアルバムを作ってたけど、バンドとして実体のないような状態が続いてしまっている。あのバンドはNISとは全く違うもので、言ってみれば、僕の音楽概念みたいなもの、歌詞だけでは伝えきれない思いをギターを通じて表現しようという試みなんだよ。NISの曲は自然に沸き上がってくる。気付くと同じメロディが頭の中でまわっていて、それが基本のアイディアになるんだ。このバンドでは決まりごとが一切ないから、曲を書こうと意気込む必要は全くないんだ。ユールシドとNISは、昼と夜ぐらいキャラクターの全く異なるバンドだから、ソングライティングに関してはほとんど迷わないね。前に一度だけ迷ったことがあったけど、ユールシドの現状を考慮して、NISで採用したんだ。 先ほどサントスから、これからは“バンド”になるという話も出ましたが、このメンバーでヨーロッパ・ツアー等の活動を経た今、どんなものが掴めてきたと思いますか? また今後どのような展開を考えていますか? Santos:最後に一緒にプレイしてから今回ヨーロッパ・ツアーに出るまで、長いブランクがあったんだ。僕が加入したのはヨーロッパ・ツアーが始まる一歩手前頃で、ツアー中に、このバンドの持つ可能性や、今後どんな活動をしていきたいかとか、色んなことを話し合ったよ。仲間になれたことはもちろんだし、ツアーが始まって数週間後には、3人の音楽性やサウンドにおける今後の展望が見えてきたんだ。これからの活動としては、さっきも話したように、僕やスティーヴの曲を使ったり、メンバー全員でのソングライティングにも挑戦したいと思ってる。だから次のアルバムはドラムがもう少し増えるかもしれないね。とにかく今作とはまるで違うサウンドになるはずだし、すごくエキサイティングだよ。“プロジェクト”は一時的なものだけれど、僕達はいまや“バンド”なんだ。 日本から帰国後、この編成ですぐレコーディングに入ってニュー・アルバムを作る計画があるそうですが、それはやはりこのツアーで得た新しい何かを早く形にしたいという気持ちからなんでしょうか? Mike:まあ、新作っていうより、今作の楽曲でアレンジが変わったものや、ライヴでプレイしてきた旧曲を3人で再レコーディングしてみたくてね。この編成になってから大分変わったはずだから。 スタジオ・ライヴみたいな感じを考えているそうですね? Mike:うん、ライヴとスタジオの半々くらいかな。言い換えれば、トラックに分けず、そのまま録音して様子をみたいっていうか。 Santos:つまり、オーディエンスを前にした“ライヴ・アルバム”ではなく、スタジオでの一発録りだね。マイクも言ったように、曲のアレンジが変わったこともあるし、これから先に進む前に今の自分達の音をアルバムとして記録したいと思ったんだ。そうすればみんなの手元にも残るし。 その他に、今後のNISとしての予定はどんな感じでしょうか? みなさんそれぞれ別のバンド活動もあって大変だと思うのですが。 Mike:まだ決めてないんだよね。 Stephen:ケイヴ・インの新作リリースが控えていて、これから忙しくなりそうだから、そろそろ予定を立てなくちゃね。出来れば数日中に大まかなプランを立てたいと思ってる。 Mike:この2週間は忙しくてそれどころじゃなかったから(笑)。 ケイヴ・インの話が出たところで、少しケイヴ・インに関する質問もさせてください。前作『アンテナ』をリリースした後も順調に活動しているように見えたのですが、結局メジャー・レーベルやマネージメント会社から離れ、インディペンデントに戻ったのは一体何があったんでしょう? Stephen:RCA側の体制に色々と変化があって、ケイヴ・インに相応しい状況ではなくなってしまったんだ。それでRCAと同意の上でレーベルを離れることにしたんだよ。バンドにとっては良い選択だったと思う。古巣でもあるHydra Headのスタッフは、ケイヴ・インをすごくサポートしてくれているよ。新作『パーフェクト・ピッチ・ブラック』は、前作とは違った趣きになっているんだけど、それにも理解を示してくれるしね。 マネージメント会社まで切ってしまったのは何故ですか? Stephen:最大の理由としては、バンド活動自体も控えていた頃だったんで、特にマネージメントは必要ないと思ったから。それにマネージャーとかブッキング・エージェントとか大勢の人間が絡んでいたんで、そういった状況を簡素化した上で再出発したいと考えたんだ。 では、メジャー・アーティストとしての経験は、あなたにとってどんなものでしたか? Stephen:いちばん大きかったのは、ツアーのサポート資金だね。予算をたくさんもらえたし、それまで行ったこともなかった国でライヴをすることも出来た。サポートがしっかりしてないとツアーってほんとにキツいから。その点、RCAはがっちりサポートしてくれた。 そこでの経験が、自分の人生においてどんな位置を占めていると思いますか? Stephen:20代前半を過ごすには良い経験だったよ。メジャーに所属していた経験自体はもちろんのこと、それを若い頃に体験できて本当に幸運だった。失敗も多かったけど(笑)今後はどうやって自分たちのビジネスを進めていけばいいかも勉強できたしね。 ちなみに、現在はケイヴ・インのメンバー全員が離れたところに住んでいて、特にJR(ジョン・ロバート)はベルリンにいて、新作をフォローするツアーではコンヴァージのベンがヘルプで叩くそうですね。状況としてはどうなっているのでしょうか? Stephen:JRのことで言うと、今のところはベンが望む限りずっとケイヴ・インでやっていってほしいと思っているし、ベンも可能な限り続けるって言ってくれてる。JRは……今後またいつか、あいつと一緒にバンドができるかどうかは何とも言えないな。前のツアーで手首を痛めてしまって、もう1年近くドラムに触ってないような状態なんだ。だからたとえJRがアメリカに住んでいて、本人がやりたいって言ってたとしても、一緒にできたかどうかは怪しいと思うよ。レコーディングもできない、ライヴにも出られない状態では……特に今ケイヴ・インは、インディーに移籍したばかりで、ライヴを続けていくことが僕たちにとってはものすごく大事な時期だから、なおさらね。 わかりました……とにかく今後のケイヴ・インの活動には期待してますので。 Stephen:クール! じゃあマイク、ユールシドの今後はどうなりますか? Mike:10月頃にアルバムをもう1枚出すつもりだけど、とりあえずツアーの予定はない。ライヴは今のところ、NY、ボストン、ワシントンDCの3公演が決まってる。メンバー同士、遠く離れたところに住んでるからライヴだけでも大変なんだ。ベーシストは僕の住んでる街から車で17時間のところにいるし。 ではサントスの予定は? Santos:NIS以外では、ForensicsとOld Man Gloomっていうバンドに参加してるんだけど、ForensicsはワシントンDCを拠点にしていて、夏にはレコーディングを控えてる。僕はNYに住んでるから、帰国したらDC通いが続くだろうね。ライヴも出来たらいいなと思ってる。それからOld Man Gloomは、昨年アルバムをリリースしたよ。今年の冬にはケイヴ・インとのツアーを予定していて、そのラインアップで来日できたらいいんだけど、ヨーロッパになるかもしれない。Old Man Gloomのメンバーも全員他のバンドがあるから、ライヴする機会が少ないんだ。ベースのケイラブはケイヴ・イン、 ネイト・ニュートンはコンヴァージ、それにアーロン・ターナーはIsisでそれぞれ活動していて、みんなすごく忙しいからさ。 自分のバンドを離れて、他のバンドのメンバーとまた別のバンドを結成するのは、交流関係が深いボストン周辺のシーンが持つ特徴だと思うのですが、たまに混乱することがあったりしませんか? Mike:どれが自分のバンドか分からなくなってくるって(笑)? Santos:コンヴァージ、ケイヴ・イン、Isis、ユールシド──それ以外のバンドも──みんな仲の良い友達なんだ。そういった素晴らしいミュージシャンに囲まれた環境にいると、とりあえずスタジオに入って一緒にプレイしてみたり、「別のバンドやってみようぜ!」って話が自然に持ち上がるものなんだよ。それに何より一緒に演ってて楽しいんだよね。 Mike:積極的に何かを作り出そうとするミュージシャンが多いんだと思う。ユールシドも、コンヴァージのカートや、パイボールドのトラヴィスと結成したバンドなんだ。 わかりました。では、明日のライヴを楽しみにしてます。 全員:サンキュー! アリガトウ! Mike:じゃ、明日ライヴ会場で! Stephen:耳栓を持ってきたほうがいいよ(笑)。
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