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やはり、アンディ・ウェザオールとかシカゴ音響派の人達と交流を持ったことによって、サウンド・プロダクションにおけるクリエイティヴな欲求が以前より深められてきたのでしょうか?

Joey:ああ、その通りだね。尊敬するミュージシャンと一緒に仕事をする機会に恵まれたら、インスパイアされる事ばかりだし、そこでは自分のベストを尽くしたいって願うからね。自分の全てを注ぎ込もうって思いながらやるんだ。特に誰かのリミックスをやる時は、自分の仕事であると同時に、原曲を作った人とのコネクションを感じることができる。相互作用というか、その人も僕と同様に満足できるように仕上げようって思うんだ。僕自身、他のミュージシャンが僕らのリミックスをした曲が大好きなんだよ。誰かと繋がっているってことを実感できるからね。

わかりました。ところで今さっき「スタジオは図書館みたいに素晴らしい」って表現してましたけど、あなたは実際に読書が好きなんだと思います。よくあなた達の楽曲は小説からインスピレーションを受けたりすることがあるようですが、作曲の段階から一個のストーリーが思い描かれていることはよくあるのでしょうか? あるとすれば、どうしてそういうスタイルを取るのでしょうか?

Joey:そうだなぁ……僕自身、伝統的じゃない歌詞を持った曲に魅力を感じている。例えば“彼/彼女、僕/君”みたいな限定された括りの中で歌われる曲じゃなくて、もっと叙述的で抽象的なストーリーがある歌詞が好きなんだ。まるで詩みたいな歌詞が好きなんだよね。僕の場合、音楽そのものがある種のストーリーを生み出していくっていう場合が多いかもしれない。そして僕は、歌詞をつけることで音楽の中に込められたストーリーを追っていくんだ。音楽がストーリーを語っていて、歌詞はそこにマジックを吹き込む。でも、もちろん全部の曲に歌詞が必要ってわけじゃない。僕らはインスト曲も大好きだからね。そして、物語を綴った楽曲とインストだけの楽曲を両方盛り込むことで、いいコントラストが生まれて、それぞれが際立つとも思ってる。両者があることで、ストーリー的なイリュージョンが感じられて、全体に動きが出てくるんだ。まるで映画のようにね。僕達の音楽は、サウンドトラックみたいだという指摘をよく受ける。流れがあるのが僕らのスタイルの特徴なんだ。

なるほど。例えば女性ヴォーカルをフィーチャーしている曲では、自分達を表現するために、曲の中に女性の声が必要とされる部分があるということなのでしょうか?

Joey:ああ、そうかもね。う〜ん、よく分からないけど……男女間の繋がりってどんな物事よりも強力だと思っているし、世界共通のユニヴァーサルな感情なんじゃないのかな? その両者の感情を1曲の中に詰め込んだっていう感覚だね。これはすごく自然な流れなんだ。例えば“ホット・レイル”っていう曲は、セルジュ・ゲンズブールがジェーン・バーキンや……あともう1人……えーと、なんて名前だっけ? 思い出せないなぁ……すごく綺麗な人……ああ、ブリジット・バルドーだ。彼女達をフィーチャーしながら作った曲にインスパイアされたんだ。あとリー・ヘイゼルウッドがナンシー・シナトラを使って作った曲とかね。そういう感覚で曲を作ろうとしたんだ。特に曲をプレイする時って……そうそう、今日もダブル・フェイマスのミユキが僕らと一緒に“バラッド・オブ・ケイブル・ホーグ”をプレイするけど、彼女の場合はフランス語の歌詞を日本語に翻訳して歌うんだよ。僕らはヨーロッパもツアーしたし、今こうして日本にも来てつねづね感じ入っている事なんだけど、人々は言語に強く反応するんだよね。特に自分達自身の言語には強く反応する。強いコネクションを感じるからだと思う。言葉は世界を1つに繋ぐかけ橋になるんだよ。だから僕らは女性ヴォーカルと男性ヴォーカルを両方使うし、ツアーする国々ではその国の言語を使った曲をプレイするんだ。

女性ヴォーカルは曲の中のストーリーで、女性の登場人物のキャラクターを担わせているっていうことなんでしょうか?

Joey:そうだね。特に“バラッド・オブ・ケイブル・ホーグ”の中では、女性のキャラクターを女性に歌ってもらってるわけだし。それぞれのキャラクターの視点が見えるように男女を分けているんだ。それによってストーリーがより明確になるんだよ。

また、キャレキシコというバンド名もそうだし、“クリスタル・フロンティア”っていう曲名にしてもそうだと思うんですが、あなた達の表現の中では「国境」というものが大きなテーマ、モチーフになっているようです。どうして国境というテーマに魅かれてしまうのだと思いますか?

Joey:ひとつの理由は、アメリカ南西部に住んでいるっていうことと関係していると思う。僕はカリフォルニア南部で育って、約8年くらい前にジョン(・コンヴェルティーノ)や他の友達と共にL.A.からアリゾナ州トゥーソンに移り住んだ。そこは、国境というものを意識せずにはいられない土地なんだよ。で、バンドを組んでバンド名を決めなきゃならない時が来て、それでキャレキシコっていう名前にしたんだけど、これは実在する国境の町の名前なんだ。サンディエゴからアリゾナ州トゥーソンへ向かう途中にある町の名前だよ。ちょうどその頃は、僕自身がどんどんラテン・ミュージックにのめり込んでいってた時だったし、僕達のアルバム・カヴァーを手掛けてくれているアーティストで友人でもあるヴィクター・ギャスラムの受けてきた影響ともうまくマッチしていた。それに僕自身、雑多なものが混ぜ合わされるっていう感覚、そのハーモニーが好きなんだ。よくヴィクターはハイブリッド・アートについて語ってた。つまり、パンク・ロック、ローライダー、チカノ・カルチャー、50'sスタイルのアメリカーナ……そういう全てが彼自身のアートに表現されているんだって。僕自身も自分達の音楽スタイルに同じような感覚を抱いていたんだ。で、キャレキシコっていうカリフォルニアとメキシコをハイブリッドに合体させた名前こそ自分達にピッタリだと思ったんだよ。そこには音楽は国境を超えるっていう思想も含まれている。それと同時に規律を守ってそれぞれの個性を際立たせるために国境は必要不可欠なんだっていう意味も込められているんだ。まぁ、僕らはオルタナティヴ・カントリーとかジャズとかロックとかカテゴライズされるわけだけど、音楽の内容だけが全てじゃない。実は音楽もアートも人生も全てがクロスオーヴァーして、1つの人生を形作っていくんだよ。それが人生なんだ……これ、訳するのが大変なんじゃない? 自分の思ってることを的確に表現するように頑張ってるんだけど、なんか転げ回る感じになっちゃってて(笑)。

(笑)いや、大丈夫ですよ。では次の質問なんですが、アメリカという国では、何もかもを巨大な資本主義の支配下に収めていこうという体制が出来ていて、音楽もビジネスとして扱おうとする風潮があるように思えるんですけど、一方であなた方がやっているような活動は、そうした流れには呑み込まれないようにしようとする意志が感じられます。自分達がインディペンデントなサブカルチャーだという自覚はありますか? また、それはパンクの精神と通じるところがあるように感じるんですが、どうでしょうか?

Joey:ああ、確かに。僕自身、80年代のDO IT YOURSELF精神、DIY哲学を持ったバンドから強く影響を受けているよ。パンクもそうだし、R.E.M.も最初はそういう精神を持ったバンドだったよね? R.E.M.がアルバムの中で使っていた『シンク・グローバル・アクト・ローカル』っていうスローガンは大好きなんだ。現在では多くのものが企業の支配下にあって、食品も服も音楽もアートもエンターテイメントも、全てが同じように売り捌かれている。そのことによって個々の特徴が無くなってしまった。今では日本でもニューオーリンズでもフランスでも、どこへ行っても同じようなショッピングモールやカフェを見つけることが出来るけど、それによって大事な個性が失われてしまったんだ。僕は個性というものを高く尊重している。これは自分達が培ってきた経験の中から感じ取ってきたことなんだけど……企業の良い面も悪い面も全て見てきた中で、最後に出したのが、インディペンデントな草の根運動の方が僕達らしいっていう結論だった。それに今の時代はインターネットを通じて、通常だったらツアー先でしか売らないような実験的な内容のCDを売ることも出来る。僕たちにも実験的な作品のCDが3枚ほどあって、これまではツアー会場でしか売ってなかったけど、今はインターネットでも販売しているんだ。僕自身、こうやって自分の手で全てをこなしていく事が好きだし、そういう風に自分をコントロールしているアーティストを尊敬しているよ――それが本であれ、絵であれ、音楽であれ、家族経営のカフェであれ、ね。

あ、マイク・ワットも同じようなことを言ってました。

Joey:へえ、そうなんだ! うん、彼もそんな匂いがするよね。

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