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さて、昨夜のライヴでも幾つか新曲を演っていましたが、次の作品についての計画をもう少し詳しく教えてくれませんか。

Ian:半分はアコースティックで、半分はやかましいロックっていうアルバムを作りたいんだ。ちょっと違うことがやりたいんだよね。で、半分は恋愛がらみの曲で、あとの半分は……まだ自分でも分かってないけどそれ以外の内容の曲にしたい。かなり激しいタイプのものにね。5〜6曲聴いてみんなメロウな気分になったところで、グヮ〜ッって襲われるっていう(笑)。みんなが、片っぽのサイドは好きだけどもう片っぽは嫌いだ、みたいなさ。そういうことをこれまでにやった人ってニール・ヤングぐらいじゃないかな。『ラスト・ネヴァー・スリープス』がそうだったよね。まあ、僕が時々やるライヴみたいなもんだよ、半分はアコースティックでやって、その後バンドでまた出てきて間違いなくロックするっていう。そういうアイデアなんだ。

名前が出たところで、ついでに聞いてしまいますけれども、再来週、武道館でニール・ヤングがライヴをやるんですよ。滞在を延長して観ていったらどうでしょう?

Ian:考えなかったわけじゃないんだけど(笑)。おまけに旧友のエコー&ザ・バニーメンも来週に来るそうだしさ。タイミング悪いよなあ……残念ながら自分のライヴがスコットランドであるから帰らなきゃならないんだ。そうでなきゃ残りたいけどね。とはいえ、最近のニール・ヤングのやってることっていまいち好きじゃないんだよ。僕もグリーン・デイル・ツアーは、ソロ・アコースティックのショウで6回観ていて、悪かないけど、彼の最高のセットとは言えないね。ニール・ヤングを観るなら、いろんなタイプの曲をやってほしいし。

たまたま昨日、ロンドンで少し前に行なわれたジュリアン・コープのライヴ・レポートを知人が送ってくれて、あなたに、ジュリアンに、バニーメン……と、とても不思議な気持ちになってしまったのですが、今のリバプールはどんな感じになっているのですか?

Ian:リバプールは昔も今もミュージシャンは山ほどいて、どんどん新しいバンドが出てきてるし、とにかくとても音楽的な街だね。出てきたばかりの色んな新人バンドが観られるのは素晴らしいことだし、新人を観るならそういうホヤホヤの状態の時がいちばんだと思う。ズートンズっていうすごくいい新人がいて、コーラルと同じレーベルなんだけど、その辺を中心にちょっとしたシーンができてるよ。たぶんその中から生き残るのは2つか3つで、あとは消えていくだろうけどね。うん、今リバプールは行くと面白いよ、新しいハコもいっぱい出来てきてて毎晩いっぱいギグがあるし。

で、ちょっと懐古話になっちゃいますが、70年代末〜80年代頭にいろんなバンドが出てきた時のリバプールについて、どんな様子だったのかを教えてもらえると嬉しいです。

Ian:うん、素晴らしかったよ。いつでも、世間の注目が特定の街に集まればそこからどんどんバンドが出てきやすくなるからね。80年代にはエコー&ザ・バニーメン、ティアドロップ・エクスプローズ、OMD、チャイナ・クライシス、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ロータス・イータース、クリスチャンズと色んなバンドが出てきて、リバプールという街にもすごく可能性があったし、それでミュージシャンもずいぶん恩恵を蒙ったんだ。今もそれに近い状況だよね。大体2〜3組以上のバンドが出てくるとシーンとして語られるようになって、マスコミもシーンという扱いになると寄ってくるんだ。ただ、そういう熱はすごく冷めやすいのも確かで、その時こそがアーティストにとっての踏絵となるわけ。大半のバンドは金目当てで始めるものだけど、その中で本当に音楽が目的で始まったバンドだけが生き残るってことが多い。シーンに対する関心が薄れて金が流れてこなくなると本当に厳しくなるから、辞めていっちゃう連中が大勢いる。でも僕やイアン・マッカロク、そしてある程度まではジュリアン・コープも未だに現役でやってるね。自分でも信じられないけど。アイシクル・ワークスを始めた時には、20年後にまだやってるなんて全く予想もしなかったよ。最初のアルバムを出した時には、どうせ10曲ぐらいしか書けないんだからこれでおしまいだって思ってた。でも次のアルバムも作れるっていう風に運が巡ってきて、気がついたら5〜6年そうやって経ってて、もしかしたらこれって一生やってられるのかもなって思ったんだ。長くやってるアーティストの方が面白いよ。だって、年月とともに味が出てくるのは当然で、年月とともにダメになっていくなんて変な話だ。自分自身も今の方が22歳の時より遥かに優れたソングライターでありパフォーマーだと思うしさ。でも勿論、22の時は「自分はすっげえ」と思ってるもんだけどね。デビューして、レコードがラジオでかかった瞬間に「俺って天才!」って思ったもんな。すぐに、そんなことはないんだって気づいたけど……でも今は思ってるよ、俺は天才だって(笑)。

(笑)。ちなみにフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドも再結成という話が伝わってきていますね。

Ian:えっ? えっ? なんだって!?

噂で聞いたんですけど……。

Ian:へえ〜、FGTH再結成かあ。そりゃ分かるよ、僕だってきっと観にいく。2時間ぐらいショウをやれるだけの中身はあるもんな、連中。まあ歳とってくるとそういうことってあるよね。実はアイシクル・ワークスもつい今週、再結成しないか?って、でっかいオファーがきたばかりなんだ。僕は首を横に振ったけどね。そういうことをしても、これまでやってきたソロ活動の歴史がアイシクル・ワークスに比べたら価値が低い、みたいな感じにしかならないだろ。アイシクル・ワークス名義でのショウとなったら、ソロになってからの曲はプレイできないし、25の時に自分が作った曲ばかり演ってまわることになるんだから。ノスタルジアはあんまり趣味じゃないんだよね。確かに誘惑にも駆られるけど、これまで金だけのために何かやったことは1度もないし、やっぱりそれはやっちゃダメだっていう直感があるんだ。

分かりました。ところで、今回のライヴで最後に演奏してくれた“バーズ・フライ(ウィスパー・トゥ・ア・スクリーム)”は個人的にも思い出深い1曲なんですが、あの曲がアメリカで突然いきなりヒットしたことで、後々の活動の枷になるようなことはあったのでしょうか。

Ian:あの曲のおかげで家にトイレがついたよ。

(笑)。

Ian:それが何より大事なことだった。

(笑)それ以外に、アイシクル・ワークスの活動に何か影響をもたらしたことはありましたか?

Ian:まあ、バンドを始めて、どうやればうまくいくかっていうカンがやっとつかめたところだったんだ。デビュー・シングルがインディー・チャートでまあまあいい線いって、その次に“バーズ・フライ”を出したらいきなり火がついて。その時点で、あれに競るぐらいの曲は出来てなくて、僕達はいきなり大プレッシャーを受けた。メジャーのレコード会社が、あれと同じぐらいのものを、って炊きつけてくるわけだからね。その結果どうなるかというと……まあ似たような曲で、でも最初のには及ばないっていうものが並ぶっていうことになるんだよ。それに僕1人だけがソングライターだったからそこでまた問題が起きて――バンドの収入はソングライティングに応じて分配されるから、曲を作る僕1人が他のメンバーよりずっと多く報酬を貰うわけ。そこですぐ軋轢が発生したわけだ。実際、あそこまで長く続いたのは驚きだったよね。売れたという意味では1枚目を超えるものは出てこなかったし。セカンド・アルバムはアメリカのレコード会社にすぐにそっぽ向かれたよ。いつも、人の期待に逆らうようなことばかりしていた。そういう性質なんだ。

メジャーのレコード会社と契約していなくても、今では機材が発達して安い制作費で質の高い作品が作れますし、インターネットも発達しているから宣伝費をかけなくても、すでに築き上げたコアなファン・ベースに向けて思い通りに作品を届けることができますよね。つまりミリオン・セールスを望まなければ、インディーの立場でやっていくには非常にいい時代が来ていると思うんです。そんな状況の中で今後アーティストとしてどんな風に活動していきたいですか? また、どんな目標を持っていますか。

Ian:今思ってるのは、誰か他の人に僕の曲をレコーディングしてもらって、それが何百万枚か売れるっていうシチュエーションなんだ。そこから印税収入があれば資金が回していける。もう子供向けの番組に出て稼がなきゃいけないような立場じゃないし、そんなことするには歳とりすぎてるしさ。だからランディ・ニューマンとかトム・ウェイツみたいに、他のアーティストにカバーされるソングライターになりたいね。彼らだって自分のレコードはたいして売れてないけど、曲をカバーされることですごく稼いでる。僕ももう充分な数の曲は書いてきたから他人にカバーしてもらってそれでやっていける立場になれると思うよ。今はもう、自分がブルース・スプリングスティーンには永遠にならないだろうっていうことに折り合いがついたしね。ただ、自分がやりたいことをやっていけるだけの資金は必要だからさ。もし、自分の曲がカバーされたことで何百万ポンド稼いだとしても、僕自身が変わることはほとんどないよ。せいぜいもっと頻繁にレコードを出すぐらいで、いきなりアビー・ロード・スタジオでえらく高いプロデューサーを雇ってレコーディングしちゃうなんてこともないし、出すレコードそのものも今と変わらないだろう。「もっと金があったら、もっといいレコードが作れるのに……」なんてことを考えながら作ってるわけじゃないからさ。出すものは全て気に入って、その通りにリリースしてるんだ。だから、誰かにカバーしてもらうっていうのが今の目標かな。だって考えてもごらんよ、もしティナ・ターナーが僕の曲を1曲レコーディングしてくれたら、今後一切、金の心配はいらなくなるんだよ。たった1曲でいいんだから。

そうなることを祈ります。そして、ベスト・アルバムと新譜、そして次回はバンドと一緒に来日してライヴをやってくれることを期待していますね。

Ian:ありがとう。それらは全て実現するからね!

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