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by telephone, 1999.12
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Kaori Yoshida

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ハイ・スタンダードらをサポートに迎えた2000年の初来日公演を大成功に終わらせたゲット・アップ・キッズ。1999年にこの電話取材を行なった時点では、アット・ザ・ドライヴ−イン、ジミー・イート・ワールド、そして彼らの3組が、アメリカのロック・バンドの中でキーポイント的な存在になっていくような予感を持っていた。その後3つのバンドは三者三様の道筋をたどってきているが、このゲット・アップ・キッズが最も堅実な路線を選んで歩を進めているという印象がある(ジョン・シルヴァに手を出されてないってだけかな……)。さておき、この時ベーシストのロブ・ポープに初めて話を聞いてみてすぐに、彼らには「パンクであること」という意識がごく自然にガッチリと根付いていることが分かった。以後、自分にとってゲット・アップ・キッズは、世紀が改まってから急激にもてはやされるようになった“エモ”と呼ばれる音楽を見極める時の基準になっていると言ってもいい。

「オレンジ・カウンティ周辺の自称パンク・バンドと僕たちとの間には大きな違いがあると思う。僕たちの方が、もっと誠実で、もっとクリエイティヴなことをやろうとしているんだ」

はじめまして。まず最初に、あなた自身の生い立ちについて簡単に質問させてください。子供の頃はどんな音楽環境に育ったのでしょうか?

Rob:基本的に、家庭の中で音楽は奨励されていた。子供の頃は両親に強制的にピアノ・レッスンに通わせられていたよ。4年間もね。12歳ぐらいの頃は「ピアノなんてもう散々だ!」と思ってた。練習とか、かったるかったしね。うちの両親はかなり宗教がかっていて、ピアノのレッスンでは聖歌みたいな、つまらない曲ばかり弾かされていたんだ。でも、今も時々ピアノを弾くけど「あの時もう少しガマンしてピアノを続けてたらよかったな……」と悔やんだりもするよ(笑)。で、15歳ぐらいから初めてギターを本格的にいじり出して、16歳か17歳の時にベースを弾きはじめたんだ。弟(ドラマーのライアン・ポープ)も当然同じような環境に育ってきたわけなんだけど、やつもピアノを強制的に習わされてた。でも、彼は高校で学校のバンドに入ってドラムをやりはじめたことで、なんとか逃れてたな。両親は、最終的にはどんな音楽でも楽器でも奨励してくれたから、それについては感謝してる。

習わされるものではなく、自分で音楽をやってみようと思った動機は何ですか?

Rob:今ではバンドも何とか波にのってきたけど、別にバンドで成功することが主な目的じゃないんだ。ただ、バンドでプレイしたかっただけ、というのが一番の動機だね。昔から家の中では音楽が盛んだったし、音楽を聴くことも大好きだったから、自然な選択という感じがしてる。なにしろ、きっかけとか動機とか言う前に、両親が子供のことを自慢したくてピアノを習わせていた、っていうノリだったし(笑)。今では、まったく思いもよらなかった状況になったけどね。だって、音楽を演奏してお金がもらえるなんて、夢にも思わなかったからさ。

では、これまでに最も強い影響を受けたアーティストといったら誰になりますか?

Rob:12歳から15歳ぐらまでのローティーンの頃は、パブリック・エネミーとか、ラップ・ミュージックにハマっていたよ。今でも一番好きなグループのひとつはパブリック・エネミーだ。その後、ニルヴァーナなどが台頭してきていわゆるグランジというシーンが勃発した時に、ロックに目覚めたんだ。ポップ・パンクはすっ飛ばしたような感じで、その後ジーザス・リザードみたいな、ハードなバンドを聴きはじめた。その後になって、自分でもバンドを組んだ、という感じだね。で、今名前のあがったようなバンドは、僕がギターを手にする直接の影響となったってわけ。

なるほど、さて、日本のレコード会社の資料には、あなた方はミネソタ州の出身とありますが……

Rob:いや、違うよ。ミネソタ州ではなくて、僕たちはカンザス州とその隣のミズーリ州の出身なんだ。

おっと、そうだったんですか。でも話のついでに、同じアメリカ中西部のミネアポリスの音楽シーンについて質問してもいいですか? リプレイスメンツやハスカー・ドゥ、ダイナソーJr、あるいはプリンスやボブ・ディランといったアーティストを生み出したミネアポリスの音楽シーンからは、何か影響を受けているでしょうか?

Rob:僕たちはミネアポリス出身ではないにしろ、今名前があがったようなバンド、特にリプレイスメンツや、ボブ・モールドとハスカー・ドゥ、そしてプリンスの大ファンなんだ。メンバー全員がね。たしかにミネアポリスのシーンというのは、アメリカの中では独特なシーンが存在していて、そういう意味では影響は受けていると思うよ。

偏見かもしれませんが、アメリカ中西部というのは、なにやら保守的ですさんだ土地柄、というイメージも抱きます。実際にはどうなのでしょうか?

Rob:この辺りは“バイブル・ベルト”と呼ばれていて、宗教色が強い地域だね。どこに行っても保守的な人は必ずいるけど、特に中西部は保守的な人が多いと思う。地理的にも、ニューヨークやロスといった、両海岸の外部から影響を受けることが少ないしね。かと言って、保守的な人がいれば、そうでない人も同じ場所に存在するものだよ。

『サムシング・トゥ・ライト・ホーム・アバウト』というタイトルが示す通り、アルバムに収められた各曲は、自分たちの故郷について歌ったものだと思うのですが、力強い決意表明をする歌詞がある一方で、どこか全般的にシニカルな響きが含まれている気がしてなりません。どうして、こういうトーンの言葉が出てきてしまうのでしょうか?

Rob:多分、そういう(シニカルになってしまうことの)背景にあるのは……もう4年もゲット・アップ・キッズをやっているのに、地元ではまったくウケないってことかなあ。だから、地元では1年に1回か2回ぐらいしかライヴをやらないんだけどね。地元から車で8時間も移動すれば、4倍もの人数の前でライヴをすることができるのに。なんでこんなに嫌われてしまっているのか本当に分からないよ。誰かをいじめたりもしていないしねえ(笑)……多分(笑)。まあ、そういった背景があることで、僕たちの中には地元に対するシニカルな気持ちが芽生えてしまったのは事実だね。地元の人間にインタビューを受けて、実際に記事を読んでみると、僕たちが地元をけなしているような感じで書かれてしまうんだ。実際にはそういうつもりは全然ないんだけどね。まあ、だからこそ(地元から離れる)ツアーは楽しい、ということは言えるけどね(笑)。

(笑)。ほとんど全曲に「YOU」という言葉が出てきますが、これらの歌詞は皆やはり特定の実在する個人について書かれたものなのでしょうか?

Rob:いくつかの曲に関してはそうだね。でも、ほとんどの場合は、ただ比喩的に他人を示すような感じで使われているだけだと思う。僕についての曲だってあるしね(笑)。でも、歌詞の中で“ROB”って言うかわりに“YOU”って言葉にしておくことで、曲をパーソナルに保っておくんだ。

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