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わかりました。では、ここで少し過去を振り返って質問をさせてください。アルバム『BE A CRIMINAL』では、そのJ.ロビンズをプロデューサーに迎えていますし、他の作品ではアンドリュー・シュナイダーと一緒にやっていますけれども、それぞれと仕事をしてみて良かったところや、2人のプロデューサーのスタジオワークにおけるアプローチの違いなどを教えて下さい。 Ed:2人ともこれまで一緒に仕事をしてきた人間の中でも最高に素晴らしい人達だよ。J.ロビンズとの作業が(アンドリュ−の時と)違っていたのは、俺達はボストン在住だから、J.ロビンズのいるワシントンD.C.に2週間滞在して、毎日スタジオにこもりきりだったことだね。物凄く集中したレコーディングだった。スタジオに入る何ヵ月も前からデモを作っていたこともあって、とても熱の入ったレコーディングだったよ。アンドリューの場合は、彼もボストンに住んでいるから俺達も家を離れる必要はなくて、もうちょっとリラックスした感じだったね。J.ロビンズとアンドリューの違いって言うと……とにかく2人とも素晴らしいよ。アンドリューの方が少しスムーズな気はするけど……。 J:アンドリューはクラシック・ロックに近いサウンドだと思うけど、それに比べてJ.ロビンズはもうちょっとだけインディー・ポップ寄りじゃないかな。2人ともプロ意識の高い人達だよ。J.ロビンズは人間的にも素晴らしい人で、すごく謙虚な人当たりの良い人物なんだ。いつも一緒にいたくなるようなタイプの人でね、彼と一緒にいると本当に落ち着くんだ。そしてアンドリューはとにかくプロフェッショナルの一言に尽きるかな。 Ed:うん。あの2人と一緒に仕事できて光栄だね。またいっしょにしたい、って心から思うよ。彼らならこれからもどんどん良い音を作り出していくのは確実だし。どちらも同じくらい素晴らしい人達なんで、うまく違いを説明できないけど……強いて言うとすれば、まあ、俺はアンドリューとは以前から友達だったんで、俺個人としては付き合いの長いアンドリューの方が肩の力が抜けるんじゃないかな。だって、俺にとってJ.ロビンズは「あのJ.ロビンズ!」って感じだったからね(笑)。 J:Garrisonの曲は、ほとんど僕がドラムを叩いているんだけど、アンドリューとのレコーディングの前にいったん脱退したから、あの作品では初代のドラマーが叩いてるんだ。それで、今回のジャパン・ツアーではベーシストが行けないって言うもんだから、僕が(パートを変えて)代役を引き受けることになったわけ(笑)。引退から一時復帰したっていうかね(笑)。 Ed:前にも一度ライヴでベースを弾いたことがあったしな。 J:そう、Garrisonでベースを覚えたんだ。そんなわけで、僕はアンドリューとは一緒に仕事してないんだよ。 Ed:ガイ→ジェイ→ガイ→ジョン……って具合にドラマーが変わったんだ。 J:とにかくJ.ロビンズは素晴らしい人で、彼と一緒にいると楽しいんだよ。最高のサウンドを作るし、プロ意識も高い。本当に最高のプロデューサーだ。 ところで、『BE A CRIMINAL』の2曲目“choose a weapon”の中間部には、ピーター・ガブリエルの“Intruder”という曲の口笛の部分が流用されていますが、これは誰のアイディアだったんですか? Ed:オー・マイ・ゴッド!!(拍手)スゴい! よく分かったね! J:ワオ! ほんとスゴいな(笑)! Ed:あれはジョーのアイディアだったんだ。 J:J.ロビンズは関係してなかったっけ? Ed:いやJ.ロビンズは関係してない。彼は知ってたけどね。あれについては、他に誰も気付かなかったよ。 J:そう、部外者で気が付いたのは君が初めてだ。 Ed:どうせ誰も気付かないだろう、ってジョーが入れたんだ。クールなビートになると思ったからね。そしてJ.ロビンズに聴かせたら、「これ、“Intruder”だろ?」って。歌詞はジョーが書いたんだけど、俺も少し手伝った。内容としては、アメリカのような帝国が他国の文化を侵略するっていう……だから“Intruder”が相応しいだろうと思ってね。 J:自国の文化を押付けてくるというか。 Ed:そう。相手が望む望まないにかかわらず、「コーラを飲め!」だの「マクドナルドを食え!」だの。「世界中を資本主義に変えちまえ!」みたいなさ。 なるほど。で、31日の新宿ロフトでのライヴでは、かつてJ.ロビンズがやっていたバンド=ジョウボックスのカバーを披露していましたね。あなた方もハードコアを代表するRevelationレーベルの所属ですが、一方でD.C.シーンやディスコードからはどのような影響を受けたのでしょうか? Ed:この手の音楽を始めたのは18歳ぐらいの頃で、フガジの“Repeater”を練習してた。だからギターの弾き方や音楽に対する考え方に少なからず影響を受けている。最初に観に行ったデカいライヴのひとつがフガジだったんだけど、とにかくブッ飛んだよ。音楽そのものだけじゃなく、その裏側に隠れたアイディアとか、たった5ドルしか払ってないのにあれだけのパフォーマンスを観れたこととか……とてもパワフルで影響力のあるライヴだった。だからディスコードやジョウボックス、そしてフガジには多大な影響を受けてるよ。他のシーンだったら、サンディエゴのロケット・フロム・ザ・クリプトやドライヴ・ライク・ジェイフーだね。ルイヴィル(ケンタッキー州)とかシカゴにも面白い連中はいるし、地元のボストンだったら…… J:友達全員(笑)。 Ed:とにかくフガジとジョウボックスには影響されてるね。 J:僕は高校と大学時代にドラムをやってたんだけど、当時はニューハンプシャーに住んでいて、とても小さな町だからインディー系の音楽は全く知らずに、クラシック・ロックばかり聴いてたんだ。で、大学を卒業した後、友達が車の中に忘れていったカセット・テープを見つけてね。それには、片面にジョウボックスの『For Your Own Special Sweetheart』、もう片面にはフガジの『13 Songs』が入ってたんだ。タイトルが書いてなかったから最初はどんなバンドなのか全く分からなかったんだけど(笑)、「こんなスゴいアルバム聴いたことない!」って、それからずっとそのテープを聴き続けたんだよ。たぶん卒業してから1〜2年経った頃だったかな、そのおかげで音楽をもう一度やりたいって思うようになったんだ。そしてボストンに引越してバンドを始めたんだよ。だから今挙げた2枚のアルバムが、僕がGarrisonに入ったそもそものきっかけってことだな(笑)。生まれて初めて耳にしたインディー・ミュージックはD.C.シーンだったんだ。 Ed:まあ俺は、他にもいろんなジャンルの音楽を聴くけどね。「バンドとしては」D.C.シーンの影響が強かったってことなんだ。 J:だから『BE A CRIMINAL』のレコーディングでD.C.行きの話が出た時も、至極当然のことに思えたね。 ちなみに、ディスコードと比べて、あなた達が所属していたRevelationは、どんなレーベルだったのでしょうか? Ed:ああ、全く違うよ(笑)。ディスコードは真のパンク・ロック・レーベルなんだ。イアン・マッケイと元マイナースレットのジェフ・ネルソンがオーナーで、彼らはバンドに余計な口出しは一切しないし、宣伝に大金を投じたりもしない。レコーディング費用だけ出して、バンドがツアーできるように取り計らってはくれるけど、音楽そのものをただ記録するためにそこにいるんであって、スーパースターをこの世に送り出そうなんてことは考えてない。その点に関してはとても率直なんだ。それにCDの値段も可能な限り低く設定してるし、バンドとの関係も50:50で、大袈裟な契約書もない。Revelationとは全く違うね。Revelationは……俺が思うに「自分達はバンドのスタート地点にいるレーベルだ」という自負があるんだろうな。ここからもっと大きなレーベルに羽ばたいていけばいい、というような……。だから契約書もブ厚いし、ラジオのプロモーションや広告もバンバン打ってる。他のインディー・レーベルに比べると、メジャーっぽい活動をしてるレーベルってことになるだろうね。それはそれで良いと思うし、悪いことじゃない。ただ、ディスコードとは全く違う、かけ離れてるってことなんだ。 じゃあ、時間もなくなってきてしまったので、最後に、今回こういった形でラスト・ツアーを実現できたことについて、改めて何か一言ずつお願いします。 Ed:まず、DRUM:KANのみんなに、すごく感謝してる。彼らは本当に素晴らしいバンドだよ。それに日本の音楽の質やライヴハウスのサウンドのクオリティーも素晴らしいと思った。みんな音作りにとても真剣なのが印象的だったな。そして、サトシには至れり尽せりの歓迎をしてもらったよ。彼の家族に紹介してくれて、家にまで泊めてくれて、そして日本を案内してくれて……俺の人生でも最高の経験のひとつになるだろう。彼らがどれほどよい人達か、言葉では言い尽くせないくらいだ。何から何までお世話になって、こんな機会に恵まれて本当に光栄だよ。どうもありがとう! J:DRUM:KANは、音楽もメンバーも素晴らしいバンドだ。まっすぐで正直な音楽を演ってると思う。すごくポジティヴだしね。アメリカのオーディエンスは何かとシニカルだったり嫌味っぽかったりするんだけど、もし彼らが日本の音楽シーンを表しているんだとしたら、なんてまっすぐでポジティヴで素晴らしいんだって思うよ。
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