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今後の活動について、どういうヴィジョンを持っていますか? Matthew:フフ。それについては最近よく話し合ってるんだよな。ハッキリとしたことは言えないけど、今は新曲を書いてるところだよ。最初の2枚のアルバムで用いた方法に戻るってことを、意識的にやってる。それと同時に、新しい方法も探ってる。もっとエレクトロニックにするとか、試行錯誤してるよ。もっと短い、キャッチーでポップなものを書いてみるとか。自分達に何ができるか、常に実験していきたいんだ。例えば、レディオヘッドみたいにね。僕らがレディオヘッドと似てるってわけじゃないよ。彼らはひとつの所に留まることなく、常に変化し続けてる。次々と新しいアイディア、新しいサウンドに挑戦してる。曲ごとに、アルバムごとに違う。音楽的にレディオヘッドみたいになりたいんじゃなくて、彼らの絶え間ない進歩を見習いたいんだ。すごくインスパイアされるんだよね。 Francis:政治的にも進歩していきたいね。状況は日々変わってるし、僕らもいろんなことを新しく学んで、考えを深めていってる。音楽の趣味も変わるしね。それぞれに自分の好きなスタイルを持ってて、それを持ち寄って音楽作りをしてる。マットが言うように、よりアトモスフェリックなエレクトロニック・ミュージックに近づくかも知れないし、短い曲が多くなるかも知れない。できれば1年後ぐらいには、ニュー・アルバムを発表したいな。 Matthew:次回作でもっと焦点を当てたいのは……『The Impossible Leap in 100 Simple Steps』は物語形式で、あるストーリーを語るような内容だったけど、次回はその同じストーリーの次の章みたいなものにしたいんだ。内容的にはまだどうなるか分からないけど。 Francis:うん、違うタイプの章にしたいね。スピーチのサンプルだけじゃなくて、エフェクトとか効果音とか、いろんなサウンドを使っていきたい。DJシャドウやなんかがヒップホップでやるように、他人のフレーズとかヴォーカルを借りてきてサンプリングするとか。もう少し成熟して洗練されたものができれば、と思ってる。 Matthew:まだツアーの予定も入ってるけどね。 Francis:1ヶ月後にはヨーロッパなんだ。1ヵ月間で、フランスとかUK、チェコ、ベルギー……。 Sergio:日本に呼んでくれたCATUNEと話してたんだけど、日本には是非また来たいんだ。新曲ができたら、それをいち早く日本で演奏したいね。数ヵ月後、あるいは半年後ぐらいに、アルバムに先行してEPを出すのもいいかな。他のバンドとのスプリットでもいいし。 Matthew:例えばTOEだったら最高だね。僕ら大好きなんだ。 Sergio:うん。日本には本当にいいバンドがあるね。それと……バンド結成時に話し合ってたにも関わらず、今まで実現できないでいたのが、演奏中にバックに流す映像のことなんだよね。実はフランシスはビデオ映像作家でもあって、僕はグラフィック・デザインと、映像も少しやるんだ。だから、視覚的な面にはとても興味があるバンドなんだよ。いつかライヴで流す映像で、自分達の考えを伝えることができれば、と思ってる。次回の来日時までには是非、何らかの形で準備したいね。それが当面の僕らの目標なんだ。 じゃあ最後の質問なんですけれども、バンド名の由来を教えてください。 Matthew:あはは……。 Francis:えーと(笑)……。 Sergio:バンド名をどういう風に決めたかっていうこと? バンド名の意味?。 ではその両方とも(笑)。 Francis:じゃ、まず僕から(笑)。最初、バンド名の候補はたくさん挙がってたんだけど、どれもいまいちだったんだ。お互いにメールと電話で「これはどう? あれは?」って訊きあってて。その中の名前から、気に入った言葉を選んでるうちに、モニュメント、マッシズ……フロム・モニュメント……トゥ・マッシズ。そうやってつなぎ合わせていったバンド名なんだ。いろんな意味が含まれてる名前だよ。長い名前だから発音しにくいし、覚えにくいって言う人もいるんだけどね。でもちゃんとした理由があってつけた名前なんだ。その辺はセルジオが説明する? Sergio:うん。いろんな言葉を組み合わせてるうちに、あるイメージが浮かび上がってきてね。フロム・モニュメント・トゥ・マッシズという言葉は、世界や歴史の見方をモニュメントからマスへと変える、という意味なんだ。日本ではどうか分からないけどアメリカだと、子供達や学生に、個人の偉業を中心に歴史を教えてるんだ。歴史を動かすのは英雄や偉人である、っていう、いわばモニュメント(記念碑)的な観点からね。初代大統領はジョージ・ワシントンです、リンカーン大統領が奴隷を解放しました、ってこと。一般市民が団結しました、とか、元奴隷や北部の人達が組織化して闘いました、とは教えないんだよね。リンカーン1人の偉業ってことになってる。公民権運動と言えばキング牧師にマルコムX。実際は、全米の何百万人もの人々が変化を求めて行動を起こしたのに、モニュメントに対してマス(大衆)が軽視されてきた。ここで、モニュメントからマスの方へ視点を移そう、というのがこのバンド名に込められた意味なんだ。マスの観点から歴史や世界を捉えることは、自分がその一部になることなんだよ。ある意味、大衆は一個人よりもパワフルだからね。大部分の人は、自分達が歴史にとって取るに足らない存在だと思ってる。でも実際は、世界を変えていったのは大衆なんだ。フィリピンでもアメリカでも、現状を変えようと闘ってる人々がいる。ここ日本でも、イラク派兵に反対するデモが行われてたんだってね。受け入れられないことは受け入れられないと声を上げるのは重要なことだよ。そうやってマスが力を持っていく。無視できない存在になっていくんだ。政権に就く人々は、公僕でなければならない。我々を代表しなければならない。彼らは我々の意見を聞くべきなんだ。本当にパワーを持っているのは、我々の方なんだよ。……っていうのが政治的な面からの意味合いだけど、音楽の面、ロックの世界での意味づけもできるんだよね。日本はどんな感じなのか分からないけど、アメリカではスターであるかどうかが全てでさ。例えば、レッド・ツェッペリンと言えば? Matthew:ロバート・プラント。 Sergio:そして? Francis:ジミー・ペイジ。 Sergio:そう。巨大なモニュメントふたつ。U2と言えば? Francis:U2と言えばボノ。 Sergio:エッジ。 Matthew:と、その他。 Sergio:そう、モニュメント達と、ムニャムニャムニャ……な人達。 Matthew:(笑)。 Sergio:僕らの場合はリード・シンガーがいない。モニュメント的な人物が中心になってるバンドじゃないんだ。フロム・モニュメント・トゥ・マッシズは、マシューとセルジオとフランシスの3人で作り出すサウンドと、サンプルで使わせてもらってる人々の声で成り立ってる。厳密に言うと、僕ら個人個人を越えたプロジェクトなんだよね。
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