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London, 2004.10. 26
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Mariko Shinbori


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デス・フロム・アバヴ1979は、ベースとドラムスだけで構成された特異なユニットだ。一見、奇をてらった編成から繰り出されるサウンドは決して実験的なものではなく、極めてキャッチーで勢いにあふれるロックンロール。一体どんな風にして、このような際立った個性が誕生したのか、以下のインタビューを読んでその背景を探ってみてほしい。その確信犯ぶりからは大いに頼もしさを感じさせられるはずだ。カナダから現れたこの2人組に今後も注目していこうと思う。

「よく『君達のやってることは他とは違うね。新しいことやってるね』って言われるけど、常にそうでなきゃいけないと思ってる。ライヴで『それ、前にも見たことあるぜ!』なんて言われてちゃダメなんだよ」

まずは2人の出会いについて聞かせてください。いつ、どんな場所でどのようにして出会ったのですか?

Sebastien:知り合ったのは4〜5年前。お互いに共通の知り合いがいて、ジェシーがドラマーを探している時にそいつが俺のことをジェシーに推薦したんだ。それでジェシーと何度か会うようになってね。どんな様子だったとかは詳しくは覚えてないけど、いつでも音楽に関係した状況だったよ。ナイト・クラブでとかコンサートでとか、そういった感じだったと思う。

お互いの第一印象はどんな感じでしたか?

Jesse:セバスチャンは凄く痩せていたね。今は当時よりも随分と体重が増えているよ(笑)。俺はどんなドラマーとでもやってみようと思ってたけど、実際に2人でプレイした時に、セバスチャンとだったらもっと前進できるって感じたんだよ。たまたま上手くいったんだ。

Sebastien:(ジェシーの第一印象は)自分のジーンズ姿がイケてるぜって考えてる奴なんだろうな、と思ったよ。

(笑)それまでは、それぞれどのような音楽遍歴を経てきたのですか?

Sebastien:できることは何でもやってきたね。以前、今と違う街に住んでいた時には、自分で曲を作って、それを自分で録音しながら、他の人とも一緒にプレイできるようにバンド活動もやっていた。基本的に子供の頃からずっとバンドはやっていたよ。

Jesse:16歳からバンド活動を続けているから、ずいぶん長い間バンドをやってることになるね。パンク・ロック・サークルの中ではそれなりに成功していたバンドにも在籍してたし、ヨーロッパやアメリカ中を何度もツアーしたりもしていたよ。だけど、パンク・ロックには飽きちゃってさ。これ以上もう成長できないだろう、と思ったんだ。子供の時って一度のめり込んでそればかりやった後、パッタリそれをやらなくなるってことあるだろ? まあ、退屈に思うようになったんだよ。それで、当時のバンドを辞めて、自分だけで曲作りをするようになったんだけど、自分で書いた曲をプレイしたくなってバンドを作ることにしたんだ。そのうちにセバスチャンと知り合ったのさ。

どんな音楽環境に育ったのですか?

Sebastien:俺の家族はかなりの音楽好きで、色んな音楽を聴いているよ。いつでも家の中に楽器があるような環境だった。俺の兄弟もお袋もピアノを弾けるしね。だからと言って本格的に弾けるわけじゃないんだけどさ。常に色んなレコードが、大音量でかかっていたよ。俺の親父はイギリス出身だから、イギリスに出かけては、人気が出そうだと思う曲を耳にすると、それを買ってカナダに持って帰ってきてくれていたんだ。そういった曲は、必ず2〜3ヵ月後には大ヒットしていたから、親父はセンスがいいんだな。THE PROCLAIMERSって覚えてる? 彼らのレコードが注目される前から親父は買って持っていたんだ。そういったことはこれまで何度もあるから、俺は親父のアドヴァイスや意見を信じてるよ。

Jesse:俺の家族は俺も含めて全員ミュージシャンだったんだ。ただ、他のみんなはミュージシャンでいることにうんざりしたり、興味を失ったりして、ミュージシャンでいることをやめてしまったけどね。俺のお祖母さんはトロントでバレエ団のピアニストをやっていたし、親父は自分が13歳の頃から、俺が生まれた後までプロのミュージシャンだった。兄弟もミュージシャンだけど、今は全然音楽とは関係ないことを学ぶために学校に通っているよ。

では、自分でも楽器を手にしようと思ったキッカケは?

Sebastien:子供の時、家の地下室におもちゃのドラムがあって、それを良く叩いていたんだ。それで、将来はドラマーになりたいとも思ったんだけど、本物のドラムを買う余裕なんて家にはなかったから、11歳か12歳の時にギターを始めた。そしたら、同じ年のクリスマスに両親がドラム・セットを買ってくれたんだ。実はそのドラム・セットを数日前までずっと使っていたんだよ。最近、引っ越ししたのと同時に新しいドラム・セットを買うまではね。だから、おもちゃとして遊んでいた物が、今では毎日の生活になったのさ。

Jesse:俺にとってベースは最も新しい楽器で、このバンドが始まるちょっと前から弾き始めたから、4年くらいになるかな。その前はギターをやっていて、15年間弾いている。ドラムはおむつをしてる時から叩いているよ。家にドラムがあって、家族の誰も叩いていなかったから俺が使うようになったんだ。今でもドラムは好きだよ。どんな楽器も使えるようになりたかったんだ。そうすれば、自分の曲作りに活かせるからね。

ミュージシャンになるのは自然なことだったんですね。

Sebastien:まあ、そうだけど、常にもっと上手くなりたいとは思っているよ。100%満足することなんてないね。自分の腕前に完璧に満足してしまうなんて危険なことだと思う。少し不安に思うくらいでいて、もっと上手くなりたいと思っている方がいいと思うな。

カナダのトロント出身だそうですが、地元にはどんな音楽シーンがありましたか?

Sebastien:どんな音楽シーンも存在しているよ。トロントは世界の中でも多文化な街のひとつだから、音楽シーン、バンド・シーンに関して言えば、パンク、ハードコア、もっと普通のロック・シーンとか。西インド諸島の文化も盛んだし、レゲエやラップ……

Jesse:それに、カントリー・ミュージックのバンドも大勢いるし、本格的なメタル・シーンもある。本当に色んな種類の音楽が存在しているんだ。実際にトロントの音楽シーンを経験した人達以外には、世界的にあまり注目されたことがないってだけで、トロントはこれまでもずっと音楽にとって重要な街だったんだよ。NEW YORK DOLLSは彼らの活動初期にトロントでショウをやっているし……

Sebastien:毎晩、どんな音楽でも楽しめる街なんだ。例えば、水曜にブルーグラスやカントリー・ミュージックをビールを飲みながら楽しんだと思えば、木曜にはダンスホール・ミュージック、金曜はパンク・ロックといった具合に毎晩違った音楽を楽しめるのさ。

あなた方自身はどのような音楽シーンと関係を持ってきたのでしょう?

Sebastien:どのシーンにも属したことはないな。

Jesse:俺もそう。

Sebastien:ミシソーガの郊外でロック・ショウを企画してバンドを集めてプレイしてもらったりしていたこともあったけど、基本的にはどんな音楽シーンにも所属したことはないね。

では、この2人でバンドを結成しよう、ギターや専任のヴォーカリストを入れずに2人だけでやっていこう、という方向性はどのようにして決まっていったのですか?

Jesse:もともと俺がベースとドラムで曲作りをしていて、そのうちギターやシンガーなんかも入れようとは思っていたんだけど、初めはベースとドラムだけで録音していたんだ。それを車の中で聴いていたら、セバスチャンがこれでバンドをやるべきだと提案してきてね。その後、真剣にバンドでやることを考えて、何度か試した後、セバスチャンが、「俺、ドラムを叩きながら歌えると思う。地下室に行って試してみようぜ」と言い出してさ。当時、俺達は一緒に住んでいたから、さっそく地下室の練習室に行って試してみたんだけど、その時やったことは、今やっていることとあまり変わらないよ。お互いに顔を見合わせて「これだ、上手くいく」と感じたのさ。そこから始まったことなんだ。それ以降、プレスで取り上げられたり、ツアーしたり、失敗したり、成功したりといった毎日さ(笑)。

セバスチャンは、それまで歌ったことはあったのですか?

Sebastien:いや、自分のデモとかでは歌っていたけど、人前では歌ったことはなかったよ。

Jesse:セバスチャンが歌っているデモ音源を聴いて、こいつは歌えると思ったね。

なるほど。さて、あなた方の作る音楽はベースに非常に特徴がありますが、シンセサイザーを通して変調しているのですか?

Sebastien:いや、ベースの音がデカイってだけさ。ペダルを使って、ベースから出るシグナルを2つのアンプから出しているんだ。パワフルなライヴ・サウンドになってるだけなんだよ。

では、それとドラムの組み合わせだけで楽曲を成立させてしまう特異な手法は、どのようにして確立されてきたのでしょうか?

Jesse:ベースのサウンドに関しては、地下室にあるものを何でも利用して色々と試してみた。セットアップも変えてみたりとかね。俺は前から、ギターを使ってギターとベースの両方のサウンドを作るというアイディアを持ってたんだけど、今回はそれをベースでやってるってこと。結局は、凄くシンプルなセットアップでやるようになって、もともと持っている機材で充分だったね。ベースの弾き方やセットアップに関しては、何も特別なことはなくて、俺達のベースとドラムの作り出すパワーがこのバンドの音を形作っていったんだ。初めは自分達にあるものを使ってやっていて、それが自然とこのバンドのサウンドになっていったんだよ。おかしな話だけど。

意図的に作ったサウンドではないと?

Sebastien:いや、初めから、シンプルだけども音色的に欠けているようなものにしたくないとは考えてはいたよ。

Jesse:フル・サウンド、ステレオみたいなサウンドにしたいと思っていたんだ。

Sebastien:ジェシーはドラムに負けないくらいラウドにベースを弾かなきゃいけない。それがこのバンドの音量となっているわけだけど、アンプのセッティングに関しては、効率的でシンプルなものになっている。ただ、ベースとドラムだけのサウンドにならないようにはしているんだ。

ライヴでは、どうやってアルバムの音を再現しているのでしょう?

Sebastien:それは曲によるな。ライヴはアルバムとは違ったアプローチでやっている。レコーディングではもっと実験的にやっていて、自分達のアイディアを完璧に表現しようとしているんだ。ライヴでは曲を演奏するだけで、特にアルバムそのままを再現しようとしているわけじゃない。ライヴという状況に合わせて演奏しているだけなんだ。かと言って、レコーディングに関しても、どうやって曲がレコーディングされるべきかという方針があるわけでもないんだけどね。

あらかじめレコーディングされたものを流しながら演奏するような曲もあるのですか?

Sebastien:それはないよ。そういった意味では俺達はかなりパンク・ロックなバンドだね。

Jesse:ライヴで聴けるものは全てその場で俺達がやっていることさ。昔はヴォーカル以外PAすらなかったこともあったし、マイクが1本だけだったこともある。そういったライヴ環境に慣れることで曲作りもそれに合わせたものになったんだ。練習の時も同じような状況で、マイクが1本しかなかったり、ヴォコーダーを使おうとしたら、ヴォコーダーか、メインのヴォーカルかを選択しなければならなかったりとかね。ケーブルが1本しかなかったからさ(笑)。

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