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そうなんだ。じゃ、DVDはメモリアルですね。さて、メジャー第1弾となるアルバムを作り終えて、次の方向性も見えてきたというような話でしたが、今後の活動展開についてどう考えていますか? Adam:次のアルバムはまだずっと先の話だけどね。ショーについては、もう少し収益が出るようになってきたらライト・ショーを加えたいとは思ってる。ちょっとサイケデリックな感じに照明を凝ってみたいんだ。アルバムに関しては、プロデュース過多にならないようにしたいっていうアイディアはとりあえずあって、ギターをさらにサイケデリックな響きのあるサウンドにして、『アンテナ』よりももっと瞬発力のあるものにしたいね。よりヘヴィーにできるといいとも思ってるよ。 JR:そう、まだごく基礎的なアイディアしかないけどね。練習にも入ってないし。構想をお互いに投げかけ合ってる段階なんだ。具体的には何も決まってないよ。今はツアーに集中してるからね。 もう今から楽しみで仕方ないです。そして、明日から日本公演が始まりますが、それに向けての意気込みというか抱負なんかを教えてください。 Adam:とにかく、どれぐらいの人数が見に来てくれるか、気になってる。前回の時は、本当にあんなにたくさんの人が来てくれるなんて思わなくてね。今度はフル・アルバムも出てるってことで、どんなリアクションを観客から得ることができるか、楽しみだよ。 JR:メンバー全員、エキサイトしてるよ。 Adam:2日間のオフがあって休んだところだから、エネルギーは充電済みだしね。 やっぱり明日は最新作からの曲が中心になりますか? Adam:バランスは取ってるけど、『ジュピター』からはほとんどなくて、基本的には『タイズ・オブ・トゥモロウ』と『アンテナ』からプレイするよ。 JR:中心となるのは最新作の『アンテナ』だね。 ではここで、最近好きな音楽の傾向をそれぞれ教えてください。ちなみに、サイケに興味があるという話がさっき出ましたけども。 JR:ああ。例えば、キャプテン・ビヨンドっていう、少しプログレが入ってるハード・ロックのバンドを最近よく聴いてるんだ。それから、ザ・ダムドにも凝り始めてる。最近初めて聴いたんだけど。 Adam:僕は最近、ドイツのジャズ・レーベルで、Crippled Dick Hot Waxってところが出してるものを聴いてる。ドイツ南西部の“黒い森”にあるスタジオで録音された、誰も聴いたことがないような70年代初期のジャズなんだけどね。スペーシーで雰囲気のある、かなりサイケな音楽。今はそれに結構影響されてるかな。ものすごくエアリーで美しいサウンドなんだ。あとフレイミング・グルーヴィーズ(笑)。アメリカのローリング・ストーンズみたいなバンドだよ。ジョニー・サンダーズ&ザ・ハートブレイカーズも最近知って、聴き始めたところさ。ロックンロールとパンク・ロックの完璧なブレンドだね。 かなり範囲が広い印象を受けるんですけども、いわゆるハード・ロック、メタルから始まって、そうやって興味の範囲が広がってきたのは、どういう理由によるのでしょう? JR:その多くはウチのツアー・マネージャーの影響で聴くようになったんだよ。この業界でのキャリアが長い人で、いつも新しい音楽を紹介してくれるんだ。それが十中八九、素晴らしいんだよね。音楽の趣味がめちゃくちゃ良くてさ。 Adam:彼自身、昔バンドで歌ってた頃にいろいろ経験してきてて博識なんだよね。ピュアなロックンロール・スピリットを持ってて、まるでキース・リチャーズと知り合ったような感覚なんだ。音楽について本当にいろいろ教えてもらってて、バンドの全員が影響を受けてる。彼と出会えたことをすごく感謝してる。 そうやって日々いろんなものを聴いていると、やっぱり自身の創作活動にも反映してくると思いますか。 Adam:間違いなく反映してくると思う。次のケイヴ・インのアルバムは絶対に彼の影響があっちこっちに見られるものになってるよ。僕の場合、自分がインスパイアされる音楽を見つけるのに苦労してるんだ。「ワオ、これはすごい」って思える音楽って、なかなかないんだよね。でも彼の場合、素晴らしい音楽の知識に溢れてるから、「じゃあ、マハヴィシュヌ・オーケストラを聴いてみたら?」なんて、次から次へと提案してくれるわけ。それで実際、聴いてみて驚いちゃうんだ(笑)。 JR:ここ2〜3年の僕らにとって特に影響力が大きい人物の一人だね。今現在、彼なしのケイヴ・インは考えられないくらいだよ。第5のメンバーって言えるほどにね。 ケイヴ・インの過去の歴史を振り返ると、劇的な音楽性の変化というものを見て取れますが、普通は戸惑うかもしれないような変化を、躊躇なくどんどん前に推し進めてこれたのは何故だと思いますか? JR:自分たちにとって興味深くチャレンジングな音楽をやっていきたいだけだよ。 Adam:結局そうなんだよね。 JR:同じことの繰り返しになるのは避けたいんだ。どのアルバムも同じようなバンドって聴きたくないしね。 Adam:AC/DCは別だけど。 JR:(笑)そういう特別な例を除いてね。どのレコードにも何か新しい試みがあった方が刺激的だし、聞く側も嬉しいだろ? それだけだよ。常に新しいことに挑戦していって、バンドとして向上していきたい。そういう意識がレコーディングに反映されるんだ。自分たちでやってることをチェックしながら進められるのはレコーディングにおいてだからね。 ケイヴ・インが過去に所属してきたシーンには、例えばアイシズとかコンヴァージとかデリンジャー・エスケイプ・プランとか、メタル・ハードコアだけどちょっと変わった人達が多いんですけれども、やっぱりそのシーンのバンドには、そういう感じで独自のものを求める指向が強かったんでしょうか? Adam:そうそう。例えば、アイシズのやつらはすごくクリエイティヴだし、僕らを含めてみんなお互いをインスパイアし合ってたようなところがあるんだよね。少なくとも僕らは、アイシズのユニークさに触発されて、自分たちも「他にはないものを作り出さなきゃ」って気持ちにさせられたよ。クリエイティヴな面で前進しないと、って思ったんだ。 JR:ボストンの音楽シーンって、本当に多様なスタイルのバンドが活動してるんだけど、みんな友達同士で、お互いのショーを見に行ったり、感想を言い合ったり、サポートし合ってる。アイシズがいて、僕らがいて、シザーファイトみたいなバンドもいて――全然違うタイプのバンドだけど、みんな音楽が好きでたまらなくてさ。お互いにインスパイアし合ってると思う。バンドを続けていく励みにもなるし、どんどん新しいことにトライするきっかけにもなる。そういう意味ですごくいいシーンだよ。 ちなみにボストンというと、日本のリスナーはすぐにカレッジ・シーンを思い浮かべたりするんですけれども、そういうところとはあまり接点はなかったんでしょうか。 Adam:それはもう存在しないし、時代が違うんだ。カレッジ・シーンがあった頃、僕らはまだ小さくて郊外に住んでた。僕らがボストンへ出てきた時には、レモンヘッズもダイナソーJr.もいなくなってた。今も同じようなことが起こってるけどね。もうパイボールドもアイシズもLAに拠点を移したし、シザーファイトはニューハンプシャーへ引っ越した。コンヴァージもマサチューセッツを出たし……みんなだんだん離れていってる。次の段階に向かうってことは、どんなバンドにも必要なんだろうね。というわけで、もう昔ほど密接なシーンではなくなったんだ。 そうした中から、真っ先にケイヴ・インはメジャーに乗り込んできてガンガン展開してきてるわけですけれども、そういう自分たちと、まだアンダーグラウンドに留まっているバンドとの違いっていうのは、何だと思いますか。 Adam:うーん、特に大きな違いがあるわけじゃないと思うんだ。唯一、違うところは常にビジネス側の人達につきまとわれてるってことだけだよ。アンダーグラウンドではそういう煩わしさはないからね。でも、音楽作りのプロセス自体は5年前と全然変わってないし、アイシズやなんかと今でも問題なくつき合ってるよ。会えばレコード会社のことを話すわけじゃなくて、音楽のことなんかを話すわけだし。 JR:それか、普通の世間話だよね。音楽漬けの生活だから、普通のことが話せる友人たちはありがたいよ。 Adam:うん。ごく普通の友達同士だからね。 オーケー。今日はどうもありがとうございました。ライヴの方、楽しみにしてます。 Adam:ありがとう。それじゃ、また明日!
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