第24回放送~ゲスト・小林信彦 その2
 
《キキトリ版(一部)》
大瀧;大瀧詠一のスピーチバルーン。
   本日は、小林信彦さんのパート2でございます。
 
(ピアノの鍵盤をともかくドカーンと叩いて弾き出した
 「ダイナマイトが150t」のイントロが始まる)
 
小林;だから、日活映画っていうのはね、その、今みんな笑って観てるけど、当時も笑って観てたんですよ。
大瀧;笑って、みてたんでしょうね。
小林;それが、僕はやっぱりね、あの頃はみんな一生懸命観てたんだっていうけれど、そうじゃないんですよ。
大瀧;日活映画は特に笑いに行ってたんじゃないですか?
小林;そうですよ。
大瀧;だって、他がねー、みんなマジメでしょー。
小林;真面目。
大瀧;大映にしても、松竹にしても。
小林;東宝は、まあ社長シリーズは笑わせるけれども。
大瀧;はい。
小林;あとは、ゴジラとかなんとかっていうのは、笑ってみるモノじゃないですよね(^_^)。
大瀧;(^_^)。
小林;今は笑うかも分かんないけれど、当時は笑わないですよね。まあ、“ゴジラ、怖い”っていう。
大瀧;ですよね。
小林;でしょ?そうすとねー、ないです。
 
大瀧;堀川さんのだって、社会派だったしね。東宝はやっぱりアレだから。
小林;まあまあね。松竹は全く真面目ですよ。小津安二郎とか木下恵介が上にいて。
大瀧;ええ、子供は新東宝、観に行かないし(^_^)
小林;新東宝、もう潰れてますもん。
大瀧;もう無いですか?
小林;あの辺で潰れてますよ。
大瀧;あー、もうないですか。一番子供が笑える。
小林;すると、大映でしょ?
大瀧;ええ。
小林;大映っていうのは、やっぱり大人の映画ですよね。
大瀧;ええ、暗いイメージしましたね。子供からみたら。
小林;あれは、あの、難しいですよね。難しいっていうか、良いけれどもちょっとついていけない。っていうね。
大瀧;はぁー。
小林;で、“座頭市”の方が、初めの方の“座頭市”だって良いんですが。
大瀧;今、観ると大映は面白いですけれどもね。
小林;つまり、キチッと作ってるってコトですよ(^_^)。
   カメラは宮川一夫だし。
大瀧;ですね。
小林;それはもうね。
大瀧;カッチリ出来てますよね。全体的に。
小林;カッチリ出来ている。だから、黒澤さんが『用心棒』を撮るときにわざわざ大映からカメラマンじゃなくて、カメラ全体を監修する人として、宮川一夫さんを呼んでるんですからね。
大瀧;なるほど。
小林;で、宮川さん、クレア(?キキトリ不明)だけでいじりますよ。こっちこうやれとか、だからアレはそれがそういうことやっているんですよ。
大瀧;なるほど。
 
小林;だからねー、日活映画とその用心棒っていうのは、用心棒はあれね、それまでの日本映画と全く違うの。ああいう、言ってみれば、ああいう流れ者がきてなんかやるっていうのは、日本映画にいくらでもありましたよね。
大瀧;はい。
 
小林;あれ、違うのはね、“屋根瓦”が違うんですよ。あの、それまで全部京都で撮ってたから、屋根瓦が関西風なんです。
大瀧;ほぉ。
小林;あれはね、黒澤さんの、多分群馬だと思うんですね、舞台はほぼ、黒澤さんの命令だと思うんですけども、美術監督が関東の群馬とかあの辺の瓦って違うんですよ。アレ全部その瓦焼いてあるんですよ。
大瀧;(^_^)
小林;(^_^)・・・いや、それは非常に有名な話でね。
大瀧;ああ、そうですか。
小林;ええ、有名な話だし、それはもう当人も美術監督もそういってますけれどもね。
大瀧;ふーん。
 
小林;黒澤さんは、そういうこと、非常にアレなんです。
大瀧;あー、そうですか。
小林;だから、これはキチッとしてないと嫌なんですよ。
大瀧;うーん。
小林;で、だからアレはやっぱり厚みがあるのは・・・、
大瀧;そういうトコ。
小林;色々あってもね、まあ、元ネタは“ダシュール・ハメット”ですけどね。色々混ぜてあるけれども、ダシュールハメットの「コークスルー」っていう小説だけども、でもやっぱり、違っちゃうのは凄いトコ。
大瀧;上州のカワラ、出てこないですからね、それにはね(^_^)
小林;あれは上州の瓦なんですね。
大瀧;ふーん。
 
小林;だから、日本映画はその京都で発達したから、
大瀧;なるほど。
小林;チャンバラは全部京都で、京都の瓦でコッチでもやっちゃうんですよ。
大瀧;なるほど。
小林;有りモノでね。
大瀧;へぇ〜。
小林;ところが、それはやっぱりマズイと。
大瀧;それ、東映なんかが太秦でやってるのは、銭形平次とか、神田明神とかいっても関西の瓦ですか。
小林;そうれは、関西の瓦。そうですね。違うんですって。僕はそれも知らなかった。
大瀧;そうですか。
小林;それはこの間黒澤明のなんか関係のアレを読んでいて・・・。
大瀧;うーん。
 
小林;だから、黒澤さんは基本から全部いじっちゃう人だから、だからまあ「トラ、トラ、トラ」とかそういうのは無理ですよ(^_^)
大瀧;(^_^)
小林;基本が出来ないから、もうあの時代になったら。日本軍の。
大瀧;うーん、唸るしかないですねー。
小林;やっぱり、それはね、僕も若い時そんなの知らなかった。
   あとで、解説をみて、解説ややった人の話を聞いて知ったんですけれどもそれは、黒澤さんのは大変ですよね。そういうことは。だから、日活映画はそういうアレはなくて、とにかく日活銀座というモノが出来てましたからねー。日活を。
大瀧;しかし、よくできてますねー。
小林;撮影所の中に良くできててます。
大瀧;あの日活銀座は、出来てるんだそうですね。
小林;で、でもあれはなんていうんですか。とにかく、日活撮影所のは、出来たときは東洋一の撮影所だったんです。
大瀧;あー、
小林;というのは、冷暖房があったでしょ?他の撮影所って冷暖房無いんです。
大瀧;ないんですか?
小林;今だってないでしょ?
大瀧;はぁー。
小林;だから、東映の撮影所なんかでも、今どんなに偉い人がアレしても、カンカラみたいなあのー。
大瀧;あー、あのね。
小林;あの缶に。
大瀧;石油缶みたいなのに、穴空けて。
小林;ええ、それになんか入れて暖めたり。
大瀧;木屑とか集めてきてね。
小林;ええ、それはあの、吉永小百合が来ても、誰が来ても。
大瀧;田中絹代なんかもそれにあたっている写真、良くありますよね。
小林;そう、だけど、あそこは冷暖房があるのと、それから特撮のね。それは十分に使われたかどうかは別として、例えばその裕次郎の撮った戦争物のありますよね。
大瀧;ええ
小林;黒雲・・・
大瀧;『零戦黒雲』!
小林;「零戦黒雲(一家)」、家のアレなんかみると、実は特撮もかなり、凄くやったんですよ。円谷英二がいないだけであって。
大瀧;はぁはぁ、はあ。
小林;東宝と張るんですか?
大瀧;いあ、設備はアッチの方が良いんです。
小林;で、始めっから東洋一の撮影所を。
大瀧;なるほど。
小林;だから、松竹からどっと行ったっていうのはもちろん、給料が何倍かになるっていうこともあるんですけれども、かなりそれが大きいんですよ。
大瀧;うーん、環境がね。
小林;環境が、いい環境。もう非常にいい環境なんです。
   ただ、その出来た“ガワ”は作ったモノの、五社協定があるから人はいない。
大瀧;ええ、
小林;森繁さんなんか、要するに掛け持ちですからね。で、ココだけのスターとものがいないわけです。三国連太郎さんだけですよ。
(途中)
 
 
 
             
Speach Baloon Chapter 2
2002-3-16