2002年9月18日→9月22日北海道旅行記
 
僕にとって長年、憧れの土地だった北海道。そして最北端の街[稚内]。その、念願の稚内へとうとう行って来ました!! たった一人で、しかも鉄道だけを使って!! その旅行記(らしきもの)をちょこっと書いてみようと思います。北海道の、稚内の魅力を少しでも伝えることが出来れば幸いです。
 
 
 
 
(6) 最北の地を後に〜そして札幌の街へ。
 
 
9月21日(土)。憧れの地[稚内]を去る日が来ました。今日は札幌へと向かいます。朝6時前には起きて、そして7時前には朝食。朝食は納豆、焼き魚、味噌汁、生卵…普通の和朝食です。ただ、変わってるな、と思ったのが牛乳。昨日泊まった[ホテル奥田屋]もなんですが、朝食が和食なのにコップ一杯の牛乳がついてきます。やっぱり酪農の地、北海道なんですね。
 
で、ホテルを後にします。タクシーに乗り込む時、宿の仲居さんがわざわざ出てきて見送ってくれたのがなんか嬉しかったです。
 
稚内の駅に7:15くらいに到着。僕が乗る特急[スーパー宗谷]2号は7:37分発。今回の旅の目的の一つに色々な列車に乗るというのがあるんですが、中でもこれから乗る261系[スーパー宗谷]は目玉の一つなのです。
 
列車が入線し、改札をくぐり抜けてホームへ…。[スーパー宗谷]に使われる261系は見た目は一見[スーパー北斗]281系に似ていますが、よくよく見ると色々と違う点に気付きます。前面の微妙なフォルムの違い。サイドビューに見る窓の並びの違い。配色の差。ちなみに、261系の入り口ドア横の黄色は、サロベツ原野に咲き誇るエゾカンゾウの花を表してるのだそう。281系と比較して全体的に、まるくてやさしい、どこか可愛らしい印象を受けます。 
 

261系特急[スーパー宗谷]

朝日を浴びる[スーパー宗谷]サイドビュー。
 
さあ、ワクワクしながら乗り込みます。この[スーパー宗谷]、奮発してグリーン車のチケットを購入してしまいました(笑) [スーパー宗谷]のグリーン車は半室構造で、一編成にたった9席しかない限られた空間。客室へと足を踏み入れると…わぁお!! ゴージャス!!!! 木目調の壁面、シートと天井の濃いブルー、床に敷かれた市松模様の絨毯、黄色がかった蛍光灯の照明…重厚感にあふれています。なかでも、天井一面を覆うブルーには目を魅かれます。なんでも、この車両の内装デザインはデンマーク国鉄のデザイナーとの共同作業によるものだとか。どうりで、従来の日本の列車にはない雰囲気を醸し出してるワケです。
 

[スーパー宗谷]グリーン車内。

グリーン車座席。本皮造り(喜)
 
シートに腰を降ろしてみます。この261系グリーン車のシート、なんと本皮で出来ています!! で、肘掛の部分が木製。そんな椅子、会社の社長室くらいでしか見たことありません(笑) 深々、どっしりとしていて座り心地も満点。シートピッチも広くて悠々と足を伸ばしてくつろげます。う〜ん、極楽極楽!!
 
ただ、清掃が不十分だったのか、窓の汚れ(外側からの)がちょっと気になりました。せっかく景色のいい路線を走るのにもったいない…。素晴らしい車両だけに余計に残念です。
 
何はともあれ、定刻通り、特急[スーパー宗谷]2号は7:37に稚内を出発。出発してすぐに車内改札。そして車内販売のおねいさんが来て、「ドリンクは何になさりますか?」 そうです。この[スーパー宗谷]のグリーン車、なんとウェルカムドリンクのサービスがあるのです!! 僕はコーヒーを注文。JR北海道の車販のホットコーヒー、なかなか美味しいです。
 
車窓からは稚内の街の風景が見えます。僕が泊まったホテルも見えました。町並みがどんどん遠くなります…さようなら、憧れの街、最北の街[稚内]。
 
そして列車は南稚内へ出て抜海へ。僕はここで身を乗り出します。一昨日、来る時に[サロベツ]車内から見た抜海〜南稚内間の絶景。それをもう一度この目に焼き付けます。…やっぱり見事な風景でした。夕暮れのぼんやりした感じも良かったけど、朝のくっきりとした風景。丘陵と湿原の緑。その真ん中を走るアスファルトの紺色。そして向こうに見える海の澄んだ青…。利尻富士もハッキリと見えました。
 

朝の抜海〜南稚内間。

抜海〜南稚内間より臨む利尻富士。
 
ちなみにこの宗谷本線最深部には夏のシーズン中、トロッコ列車も走っているそうです。で、この[抜海]〜[南稚内]間(約8キロ)を30分もかけてのんびり走るのだとか。特急列車だとほんの一瞬で通り過ぎてしまうこの絶景、トロッコ列車ならじっくりと楽しめそうです。機会があればぜひ一度乗ってみたい…。
 
列車はひたすら走ります。札幌に着くのはお昼過ぎ。これから約5時間の長旅です。でもこの261系ならとても快適に過ごせそう。と言うか快適そのものです。グリーン車に乗ったからと言うのもあるかもしれませんが、乗り心地がとにかくイイです。[スーパー北斗]281系の様な横揺れもなければ、[サロベツ]183系の様な発車時の衝撃もありません。気動車とは思えないほどに良い乗り心地でした。
 
さて、せっかくなので車販でも…まずは缶ビールを頼みました(朝からかよヲイ!!) 憧れの車両の中で飲む缶ビールの味はまた格別。それからアイスクリームを頼みます。北海道のバニラアイスはこれまた味が濃くって格別。それから…て何か色々買ってますね(笑) まあ実際のところ、やることが無いんですよ。5時間にも及ぶ長旅、車窓に飽きてきたらあとはもう寝るか食うしかありません(笑) でもせっかくの[スーパー宗谷]のグリーン車、寝てしまうのはあまりに勿体無い。別に眠くもないし…。てなワケで僕は後者を選択。色々と車販で買うことに決定。あ、念の為言っときますけど、車販のおねいさんがとても可愛かった為についつい色々買っちゃったとかではありません。断じて。
 
で、今度はチーズケーキみたいなのを買ってみました。そのついでにホットコーヒーも注文。すると…請求された金額はチーズケーキ代のみ。「ホットコーヒーのお代は…」 尋ねるとおねいさん、「サービスです」 …凄い!! 凄すぎますJR北海道のグリーン車。ウェルカムドリンクだけじゃなく、まさかホットコーヒー飲み放題とは!! 僕は過去に2度ほど、JR他社のグリーン車に乗ったことはあるのですが、こんなサービスはありませんでした。[スーパー宗谷]のグリーン車、雰囲気も一級品ならサービスも一級品です。くぅぅ…乗って良かった(感激)
 
と言うか、JR北海道、全般的にサービスが凄くイイ気がします。まあ今回、特急列車しか乗ってないのでそれだけじゃ判断は出来ないのですが…でも車掌さんも車販の方も皆さんとても感じが良かったです。(おねいさん可愛かったし>爆) 少なくとも、東海圏の鉄道よりは絶対サービスいいハズ、です。例えば駅員がやたら横柄な某M鉄、そう、赤い電車のM鉄とかよりはね(笑)
 
こうして、初めて乗る憧れの[スーパー宗谷]に感激! 素晴らしい車窓に感激!! グリーン車の重厚かつ豪華な雰囲気に感激!!! JR北海道の誠意あるサービスに大感激!!!!と、感激しっぱなしのまま、5時間の列車の旅は終了。12:35、定刻通りに札幌駅のホームへと滑り込みました。
 
さて、こっから半日使って札幌観光に出発します。まずは地下鉄南北線に乗って[大通公園]へ。
 

札幌市営地下鉄・南北線の車両。

同じく札幌市営地下鉄。こちらは東西線。
 
札幌からわずか一駅で大通公園駅に到着。ちなみに札幌の地下鉄、ちょっと変わっています。と言うかかなり変わってます。普通の電車って鉄製の車輪で走ってるもんなんですが、札幌の地下鉄、なんとゴムタイヤを履いているのです。ホームから下の線路を見てみれば分かりますが、そこには本来あるべき鉄のレールが敷かれてなく、代わりに2本の太い溝があります。この中をタイヤが走っていくわけですね。そのせいか乗り心地もちょっと変わってます。バスと電車の中間みたいなちょっと妙な乗り心地。
 
大通公園に着いてまずはちょっと腹ごしらえ。お昼ご飯代わりに焼きとうもろこしを屋台で購入。やっぱり北海道と言えばとうもろこし。甘くて美味しかったです。
 

久屋大通じゃないです。大通公園。

札幌のテレビ塔。
 
ところでこの大通公園、なんかどっかで見た風景にソックリなんですよね。東西へ抜ける大通に沿った細長い公園。園内には芝生やらいろんな花やら植えられてて、ハトなんかも飛んでて、屋台も出ててカップルや家族連れでにぎわってて…で、公園の両側には都会らしくビルの群れ。そして公園の真ん中にそびえ立つのはテレビ塔。…ねぇ、どっかで見たことありますよねこの光景。
 
コラ!! 誰だ今、「名古屋の久屋大通じゃん〜」とかって言ったのは!? せっかくの北海道気分が台無しじゃないか!! …ごめんなさい(涙)。でもホントに久屋大通そっくりなんですよ。
 
せっかくなので、テレビ塔に上って上から景色を眺めてみます。こうして見るとますますソックリです。どっかの公園に(笑) ただ、割と近くに山が見えるのが大きな違いでしょうか。
 

札幌のテレビ塔より。遠くを臨む。

有名な時計台。写真で観ると立派なんだけどね…
 
お次は有名な、あまりにも有名な[札幌時計台]へ。ここで…また迷いました僕(笑) まったくもう、本当に方向音痴なんだから…なんとか歩き回って、時計台へ到着。でも、見た瞬間、迷ったワケが分かりました。だって…あまりに分かりにくいんですよこの時計台。街の中にあって、完全に周りと同化しちゃってます。て言うかぶっちゃけ…結構ちゃちいですこの建物(笑) 写真とかで見ると凄く大きい、立派な建物に見えるのですが、実際は二階建てくらいの小さな建物。ここは、僕の知り合いなんかでも行ったことある人が全員同じ様にそう言いますから、多分本当にちゃちいのでしょう(苦笑) まあでも、一応記念写真とか撮りましたけど。
 
あと、中に入ると資料館みたいになっていました。時計台の歴史とか、そんなのが色々と展示されてました。この時計台、外観よりもむしろ内部の方が趣き深いです。古い建物、て感じがして。
 
さて、駆け足で時計台を観た後、再び地下鉄に乗ります。今度は東西線に乗って、二つ目の駅[西18丁目]で降ります。歩いて5分くらいで[北海道立近代美術館]へ到着。美術館好きを自称する僕としてはやっぱりここははずせません(笑) なんでもこの美術館、ガラス工芸品の所蔵にかけては国内トップクラスとかで楽しみ楽しみ♪
 

[北海道立近代美術館] 素晴らしかったです。

美術館中庭にあるオブジェ。
こ〜ゆ〜のがさりげに現代美術ぽいです。
 
しかし…この美術館がもう…本当に素晴らしかった。全くもって予想以上、いや予想外でしたこれは。僕も色々と美術館行きましたけど、その中で一気にトップにランクインされてしまいましたよここは。敷地・建物ともに結構大きな感じで、中へ入ると広々としたエントランス。天井が吹き抜けで高い造りで、とても開放感にあふれています。清潔・綺麗…典型的な最近の大きな美術館の造りですね。
 
展示室に入ります。この日は特別展示で、後藤純男と言う日本画家の展示が行われてました。入るとまず、北海道の風景を描いた風景画が何枚も並べられていました。流氷や、冬山を描いた風景画の数々…もうこの時点で僕はこの画家の世界に引き込まれてしまいました。憧れの北海道で、その風景が描かれた素晴らしい絵を鑑賞する…なんか出来すぎなシチュエーションです。
 
この後藤純男さんと言う方、なんでも仏門の生まれだそうで。そのせいか描かれている絵にはとてもストイックな厳しさの様なものを感じました。白黒のモノトーンで北海道の冬景色を描いた絵の数々からは、観ているだけでその厳しい寒さが伝わってきます。その素晴らしい風景画に僕は魅了され…ずっと鳥肌が立ちっ放しでした。中には足を止めざるを得ない、どうにも心魅かれてしまう絵もあって、そんな絵の前ではただただ、先へ歩くことも出来ずに立ち止まって無心に眺めてしまうのでした。「ああ…絵に引きずりこまれると言うのは、こういうのを言うんだなぁ…」
 
奥へと進むと、今度は北海道ではなく、京都の寺なんかを描いた絵がありました。景色も冬だけでなく、四季折々の絵が描かれてました。春の桜、秋の紅葉…。でもやはり、心魅かれるのは冬景色の絵でした。どうもこの方の本領は、冬の絵にある気がします。厳しい冬の寒さ。それそのものを描いた絵の中に。
 
あと、金色の使い方が上手いなぁ、と思いました。冬景色の中に、お寺のある風景の中に、紅葉の中に。随所に金色が入っているんですが、全然それが派手じゃなくて、むしろ渋く全体を引き締める様な感じで…。
 
更に奥へ進むと今度は、日本では無く中国を描いた絵がありました。正直、先ほどまでの日本の風景画の方が好みでしたけど、でも中にはやはり、どうにも心魅かれる絵が何枚かありました。揚子江やタクラマカン砂漠の風景…どうも僕は、絵にしろ実物の風景にしろ、雄大な自然に魅かれてしまうようです。
 
なんにせよ、一人の画家の絵を、その画家の名前をちゃんと認識して素晴らしいと感じたのは初めてでした。あまりにも心魅かれてしまった為に、この展覧会の図録も購入。ちょっと高かったしかさばるけどまあいいや(笑) 記念記念。
 
それと、富良野にこの方の美術館があるそうです。機会があればぜひ一度行ってみたい!!
 
さて、特別展示を観て、今度は2Fの通常展示室へ。こっちはうって変わって斬新・独創・前衛的な現代アートの数々が置いてありました。LED(電光掲示板)を使った作品や、ホログラフィーによる絵。こういう、現代アートなものも僕、大好きなんですよね。
 
そして展示室を奥へと進むと…ありました!! 国内一と言われるガラス工芸の所蔵品の数々が。エミール・ガレやルネ・ラリックの手によるガラス工芸作品がたくさん飾ってありました。ガラス作品は以前、長野県諏訪のとある美術館で観て「素晴らしいなぁ」と思ったのですが、久々に観たガラス工芸、やはり素晴らしく美しいものでした。ガラス作品のいいところは、この透明感にあるのでしょうね。加えてそのはかなさ。壊れやすいガラスだからこそのはかなさが、作品に自ずとにじみ出てしまう様な、そんな気がします。
 
ガラス展示を後にして、更に奥へ進むと、今度は色々な彫像なんかが置いてありました。そしてこのコーナーちょっと変わってて、「作品にご自由にお触りください」とあります。なんでも、目で見るだけでなく、手による感触も味わって作品全体を捉えて欲しいのだとか。僕、もちろん触りまくってやりました。手アカが付くくらいにベットリとね(ヲイ!!) でもこれはなかなか面白い試みだと思いました。展示物が前衛的現代アートなら展示方法まで前衛的だなんて、徹底していて素晴らしいです(笑)
 
さて…これで全て観終わって時計を見ると…ビックリ!! もう15:30をまわってました。この美術館で1時間半も過ごしてたことになります…。
 
さて、これからどうしたものか。本当はこの後、北大の植物園だとか行きたいところも色々あったのですが、なにぶん時間がありません。そこで美術館をもう一軒はしごすることに。
 
[近代美術館]から歩いてほんの3分ほどのところにある[北海道立三岸好太郎美術館]。ここに入りました。こちらはこじんまりとした感じの、小さいけどお洒落で綺麗な美術館。信州とかによくある感じの美術館です。ここでは[二人の超現実主義者]と題して、三岸好太郎と福沢一郎と言う二人の画家の絵が展示されてました。さすがに[超現実主義者]と謳ってるだけあって、その絵はシュールなテイスト満点。中には、どう理解したらいいのやらさっぱり不明な絵もあって、なかなか楽しかったです。
 
あと、この美術館の1階には感じの良さそうな休憩所(喫茶店?)もありました。本当は休んでゆっくりコーヒーでも飲んで行きたかったのですが…時間が無くて断念(涙) もし今度来ることがあったら、もっと時間にゆとりを持って来ようっと。
 

緑の木陰にたたずむ[三岸好太郎美術館]

札幌駅。
 
さて、これで札幌観光も全て終わりました。北海道旅行、最後の最後で素晴らしい美術館に出会えて大満足。タクシーで札幌駅へと向かいました。10分程で駅へ無事到着。いよいよ北海道ともお別れの時が近づいてきました。…でも、まだ旅は終わりじゃありません。これから、最後にして最大のイベントが僕を待っているのです。
 
それは、寝台特急[北斗星]による夢の一夜!!
 
 
 
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