ヴィオラ・ダ・ガンバ

 

ヴィオラ・ダ・ガンバはバロック時代を通じてポピュラーな弦楽器でしたが、古典派時代に廃れてしまったため、今日でもオーケストラで使われることはありません。1900年頃から始まった古楽復興運動により、チェンバロ、リコーダー、リュートなどとともに復活しましたが、「ヴィオラ・ダ・ガンバはチェロの前身であり、チェロで代用できる」という誤った認識が広まり、正しい理解と評価を妨げてきました。また、チェンバロやリュートのような独奏の(一人だけで演奏する)レパートリーが少なく、リコーダーのように教育に取り入れられることもなかったため、一般愛好家への普及という点でも後れをとりました。しかし今日では、状況は大きく変わりつつあります。

名称とサイズ

ヴィオラ・ダ・ガンバ viola da gamba(またはヴィオラ・ディ・ガンバ viola di gamba)はイタリア語で、「(あし)のヴィオラ」という意味です。楽器を脚(膝、またはふくらはぎ)で支えることから、このように名付けられました。古い時代の「ヴィオラ」は弓で弾く弦楽器の総称で、この中には2つの有力なグループ(属)がありました。その一つがこのヴィオラ・ダ・ガンバです。もう一つのグループは腕で支えるヴィオラ・ダ・ブラッチョ viola da braccio(腕のヴィオラ)で、こちらはその後、ヴィオリーノ(英語はヴァイオリン)、ヴィオラ、チェロと、各サイズが別々の名前で呼ばれるようになり、今日ではまとめて「ヴァイオリン属」と呼ばれています(古い時代のヴァイオリン属(=ヴィオラ・ダ・ブラッチョ属)には、この他にもいくつか特殊なサイズがありました。詳しくは別項を参照して下さい)。

  viola     弓で弾く弦楽器の総称
  da (di)     英語の for、by、of などに相当する前置詞
  gamba     脚(正確には膝から足首まで)

ヴィオラ・ダ・ガンバは、英語ではヴァイオル viol、フランス語ではヴィオール viole です。英語でもフランス語でも、もともとはイタリア語を外来語としてそのまま(つづりと発音を多少変えて?)使っていたと思われますが、この楽器はこれらの国でよく使われるようになったため、長い名前で呼ぶのは面倒なので省略形の名前が定着したのかもしれません。一方、この楽器はイタリアではあまり人気がなかったので、イタリア語の名前は省略形にならなかったと思われます。ドイツ語にはガンベ Gambe という言葉がありますが、当時のドイツではふつう楽器の名前はイタリア語で呼ばれていました。

ソプラノ、アルト、テノール、バスの基本サイズがあります。ただし、「ソプラノ」の語は今日ほとんど使われず、英語のトレブル、またはドイツ語のディスカントがよく使われます。フランス語ではデュシュといいます(これらはすべて高音域の意味)。大きさと音域は、トレブル(およびアルト)がヴァイオリンと、バスがチェロと、それぞれほぼ同じで、テノールはその中間です。独奏用としてはバスがもっともよく使われたので、単にヴィオラ・ダ・ガンバ(またはヴィオール)といえばふつうはバスのことです註-1

これら基本サイズの他に、特殊な用途のための変則的なサイズがあります。イギリスのリラ・ヴァイオル、ディヴィジョン・ヴァイオル、イタリアのヴィオラ・バスタルダ、以上はいずれも小型のバス。フランスのパルデュシュ・ド・ヴィオールはデュシュ(ソプラノ)よりもさらに小さく高音域で、たいていは5弦。また、バスよりも大きく、床に置いて弾くサイズ(コントラバス)はヴィオローネ violone(大きなヴィオラの意味)と呼ばれます註-2。これらもすべてヴィオラ・ダ・ガンバ(属)です。

以下、とくに必要な場合以外は「ガンバ」と書きます。

形と材質

胴体の形はヴァイオリン属(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど)と似ていますが、なで肩で中央部のくびれがやや少なく、全体に丸みがあり、裏板は平らです。しかし、変則的な形も多く、チェロをガンバに改造したので胴体はチェロのままというものもあります。表板の中央、駒(ブリッジ)の左右にある響孔の形は一般的には C 字型ですが、f 字型や火炎、蛇のような形もあります。表板は主にマツ、裏板と側板はカエデなどが使われ、ヴァイオリン属に比べて板は薄く作られています。(The Orpheon Foundation のサイトにはガンバの写真が大量にあります。とくに The Vázquez CollectionViola da gamba - DegustationOrpheon ConsortWords of Wisdom の各ページ)

弦は6本あり、材質はヴァイオリン属と同じくガット(羊の腸)で、低音弦にはガットの芯に金属が巻かれています。調弦法(隣接する弦の音の間隔)は、ヴァイオリン属の5度に対して、ガンバはギターに似て4度が基本で、中央の1ヵ所だけが長3度です。

指板にはフレットがありますが、ギターのフレットと異なり、材質は弦と同じガットで、指板に固定せず巻き着けてあるだけなので、上下に少し動かせます。当時はさまざまな調律・調弦法が行われていたので、フレットの位置を調節して対応していました。ときには同じ音でも、異なる和音に対しては微妙に音程を変える必要があるため、数mm間隔で二重にフレットを巻くこともありました。

特  徴

ガンバの最大の特徴は、小さなサイズでも脚で支えることです註-3。また、弓は現代のチェロのように上から木部をつかむのではなく、箸を持つように、掌を上に向けて下から木部と毛を支えて持ちます。ヴァイオリン属の中でもチェロは、ヴァイオリンやヴィオラと構え方が異なるので、持ち替えは容易ではなく、実際にこの3つを同等に弾きこなせる人はほとんどいないでしょう。しかしガンバは、どのサイズでも構え方と右手の動きが同じなので、多くの管楽器と同様に、一つのサイズをマスターすれば他のサイズもすぐに弾けるようになります。

ガンバのもう一つの特徴であるフレットは、左手の指で弦を押さえる音を、開放弦の場合と同じように澄んだ明瞭な音にすることに役立っています。フレットはまた、隣接する弦の音程が狭いこととも相俟って、多くの音からなる密集した和音を弾きやすくしています。

ヴァイオリン属と比べて、胴体の板が薄く、弦の張力が弱いガンバは、柔らかく繊細で、くすんだ音がします。その抑制された響きのメランコリックな印象から、当時ガンバは「高貴な楽器」とみなされていました。これは、ヴァイオリンがかつてはもっぱら社会的地位の低い職業音楽家の楽器であったのに対して、ガンバは王侯貴族や裕福な市民が愛好した楽器だったこととも関係があります。たとえば、バッハのブランデンブルク協奏曲第6番には平易に書かれたガンバのパートがあり、バッハが仕えていたケーテン宮廷の領主レオポルト侯が弾いたと考えられています。

歴  史

ルネサンス時代にスペインで人気があった、ギターによく似たヴィウエラという楽器には、指で弦をはじくヴィウエラ・デ・マーノと、弓で弾くヴィウエラ・デ・アルコがありました。前者がギターの前身で、後者がガンバの起源だという説が有力です。ガンバはその後イタリアに伝わり、16世紀中頃にはほぼ形とサイズが定まり、さらに脚で支える構え方とともにヴィオラ・ダ・ガンバの名前が定着したと考えられています。バロック時代に入ると、イタリアではヴァイオリン属の圧倒的人気に押されて、ガンバはほとんど忘れられてしまいますが、それに代わってイギリスで、続いてフランスとドイツで全盛期を迎え、これらの国々でも多くのガンバが作られました。

しかし、前述のようなガンバの特徴は、同時に楽器としての弱点でもあります。ヴァイオリンやチェロのように大きな音を出せず、フレットが邪魔して機動力と表現力に限界があり、大編成で合奏しても音量効果に乏しいガンバは、新しい時代の音楽的要求に応えることができなかったため、18世紀後半、すなわち古典派の時代になると、ほとんど使われなくなりました。モーツァルトやベートーヴェンはおそらくこの楽器のことを知らなかったと思われます。

16世紀の中頃以降、楽器の形、構造などはあまり変化していませんが、胴体内部に補強材が少しずつ加えられ、音量はいくらか大きくなりました。また、17世紀後半にフランスで低音弦を追加した7弦のバスが考案され、この7弦用の曲には当然のことながら6弦では出せない音が書かれています。

レパートリー

ガンバはバロック時代を通じて、軍楽隊とオペラ劇場を除くほとんどすべての音楽シーンで用いられました。しかし、ガンバ独自のレパートリーとして重要なのは、イギリスのコンソート音楽と無伴奏独奏曲、フランスおよびドイツの独奏曲や二重奏曲です。

コンソート consort」とは各パート1人ずつによる合奏(すなわち重奏)のことで、もともとは種類の異なる楽器の組合せでしたが、同属楽器の組合せもコンソートと呼ばれています。16世紀後半〜17世紀半ばのイギリスでは、主として愛好家の楽しみのために、おびただしい数のコンソート音楽が作られました。同属楽器のためのコンソート曲は、楽器の指定のないものが多いのですが、それらの多くはガンバ属で演奏されたと考えられます註-4。一方、無伴奏独奏曲は、和音を弾きやすいというガンバの特徴を活かして、ギターやリュートのように主旋律と伴奏を独りで同時に弾くものです。和音をさらに弾きやすくするために、さまざまな変則的調弦(スコルダトゥーラ)が行われていました。

17世紀半ば以降、フランスとドイツでガンバのための独奏曲(多くは通奏低音を伴う)や二重奏曲がたくさん書かれました。とくにフランスでは7弦のバスが好まれ、4オクターブに迫る広い音域と重音奏法を活かした作品が数多く残されています。その中には高度な技巧を要する曲も少なくありません。

ガンバの歴史全体を通じて、独奏楽器としてはバスが重用され、作品も最も多く残っています。小さいサイズが使われることが少なかったのは、膝に乗せて軽く挟むだけなので安定が悪く、また、とくに高音域の音量が乏しいために、演奏効果が上がらないからでしょう。それに対してバスは、楽器を脚だけでしっかりと保持でき、左手がかなり自由になるので、速いパッセージや重音も弾きやすく、響きの豊かな低音から伸びのある高音まで広い音域を駆使できます。

なお、バス・ガンバは通奏低音楽器としても用いられますが、チェロに比べると音量が小さいので、室内楽的な小編成の場合に限られます。弦楽合奏主体の大きな編成になると、通奏低音はガンバではなくチェロ+コントラバス(英語ではダブルベース)がふつうです。ただし、当時はコントラバスの代わりに、ガンバ属の一員であるヴィオローネもよく使われました。

アマチュアリズム

バロック時代にガンバは、王侯貴族から庶民に至るまで、広くアマチュアにも愛好された楽器でした。今日でもその事情は同じで、イギリス、アメリカ、フランス、イタリア、ベルギー、オーストラリア、そして日本にも愛好家が運営する団体(ヴィオラ・ダ・ガンバ協会)があり、会報の発行、楽譜出版(新作を含む)、講習会の開催など、盛んに活動しています。

ヴァイオリンは幼少期から習い始めないとある程度のレベルに達するのは困難ですが、ガンバは大人になってから始めても十分に楽しめます(幼少期にガンバを始める人はほとんどいません)。第一に、フレットがあるので比較的容易に、正確でしっかりした音を出せる。第二に、隣接する弦の音程が狭いので、左手のポジション移動が少なくてすむ。第三に、弦の張力が弱く、また弓を持つ右手・右腕の形が自然なので、楽に音を出せる。第四に、すべてのサイズを弾くことが容易。そして第五に、レパートリーの中心はガンバ仲間による親密な合奏(コンソート)で、しかもアマチュア向きのやさしい曲が多い。

1991年に封切られ、本国で大ヒットしたというフランス映画「この世のすべての朝は Tous les matins du monde」(監督アラン・コルノー、原作はパスカル・キニャールの小説)は、日本でも1993年に「めぐり逢う朝」のタイトルで公開されました。ヴェルサイユの宮廷音楽家となった不世出のヴィオール奏者とその師匠の葛藤を描いたこの作品は、ガンバが一般社会に認知されるのに貢献したようです。

よくある誤解

一般向けの本や事典などにおける「ヴィオラ・ダ・ガンバ」「ヴィオール」の説明には、多くの誤りや誤解を招く表現が見られます(ときには専門書にも)。代表的な例をご紹介しましょう。

誤解1 ヴィオラ・ダ・ガンバはヴァイオリンやチェロの前身楽器

ガンバ属とヴァイオリン属(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)は、ほぼ同時期に誕生した、別系統の楽器です。ヴァイオリン属の起源については別項を参照してください。

誤解2 ヴィオラ・ダ・ガンバとは「脚のヴィオール」の意味

イタリア語の意味の説明にフランス語を用いるという混乱がみられ、また「ヴィオール」の意味が説明されていないので不十分です註-5。「ヴィオラ・ダ・ガンバとは“脚のヴィオラ”の意味で、ヴィオラは弓奏弦楽器の総称」というのが適切な説明です。

誤解3 ヴィオラ・ダ・ガンバはヴィオール属の低音楽器

ヴィオラ・ダ・ガンバとヴィオールは、イタリア語とフランス語の違いだけで、同じ楽器(属)の名前です。上記はヴィオラ・ダ・ガンバ=バス・ド・ヴィオールという誤解で、ここでもイタリア語とフランス語の混在がみられます。もっとも、単に「ヴィオラ・ダ・ガンバ」といえばバスを指すという17世紀半ば以降の習慣は、今日でもちょっと変わった形で英語圏の一部に残っていて、「ヴァイオル」で属全体を表し、バスだけを指すときに「ヴィオラ・ダ・ガンバ」と呼ぶことがあります。

誤解4 ヴィオール属にはヴィオラ・ダ・ガンバやヴィオラ・ダモーレなどがある

「〜属」という表現は通常、一つの楽器にいくつかのサイズがあることを示すために使われます。ヴィオラ・ダ・ガンバとヴィオラ・ダモーレは、サイズの違いではありません。ヴィオラ・ダモーレは胴体の形と構造はガンバによく似ていますが、腕で支え、フレットがなく、弦の数は通常7本(4度+5度+3度調弦)で、それとほぼ同数の金属製の共鳴弦があり、これらの点はすべてガンバと異なります。ヴィオラ・ダモーレの起源はよくわかっていません。

この他にもガンバの変種、特殊形と考えられる楽器がいくつかあります。当時の人々が、これらの楽器のいくつかをヴィオラ・ダ・ガンバ(=ヴィオール)の仲間だと認識していたのかどうか、確かなことはわかりません。また、イタリア語の「ヴィオラ」と同様に、フランス語の「ヴィオール」も古くはヴァイオリン属も含めた弓奏弦楽器の総称だったといわれていますが、たとえそうだとしても、この意味での「ヴィオール」に「属」を付けるのは、やはり適切ではありません。いずれにしても、今日のヴァイオリン属以外の古い弓奏弦楽器をまとめてヴィオール属とするのは、(廃れてしまったヴァイオリン属の楽器やその変種もあるので)事実として間違っているし、今日の一般的な「属」の使い方からみて不適切だし、「属」を付けるときだけあえてフランス語を使うという点で不自然です。

バロック時代の弓奏弦楽器は下の表のようにまとめられます。(下線付きはサイズの名称)

ヴィオラ・ダ・ガンバ属[伊]=ヴィオール属[仏]=ヴァイオル属[英]
  パルデュシュ[仏]
  ソプラノトレブル[英]、ディスカント[独]、デュシュ[仏])
  アルト
  テノール
  バス(=狭義のヴィオラ・ダ・ガンバ[英])
  ヴィオローネ[伊]
  その他の各種サイズ
(ヴィオラ・バスタルダ、リラ・ヴァイオル、ディヴィジョン・ヴァイオルなど)
ヴィオラ・ダ・ブラッチョ属[伊]=ヴァイオリン属[英]
  ヴァイオリン[英]
  ヴィオラ[伊](=狭義のヴィオラ・ダ・ブラッチョ)
  チェロ[英]
  コントラバス[独]
  その他の各種サイズ
(ヴィオリーノ・ピッコロ、ヴィオロンチェロ・ピッコロ、ヴィオラ・ダ・スパラ、ヴィオラ・ポンポーサなど)
その他(上記の2つの属いずれかの変種、特殊形、両者の雑種などを含む)
  ヴィオラ・ダモーレ[伊]
  ヴィオラ・ディ・ボルドーネ[伊]=バリトン[英]
  リラ・ダ・ブラッチョ[伊]
  リラ・ダ・ガンバ[伊]

 

誤解5 ヴァイオリンやチェロは金属弦だが、ヴィオラ・ダ・ガンバはガット弦なので音が柔らかい

ヴァイオリン属の楽器も、19世紀まではすべてガット弦(ガットの芯に金属を巻いた巻き線も含む)でした。今日のように純粋な金属製の弦がふつうに使われるようになったのは20世紀になってからです。したがって、バロック時代のヴァイオリン属とガンバ属の音色の違いは、弦の材質とは全く関係がありません。また、両者の音量の違いを魂柱(こんちゅう)の有無に帰する見方があるようですが、バロック時代のガンバにも魂柱があります。

誤解6 ヴィオラ・ダ・ガンバは中世に栄えた弦楽器

誕生したのは15世紀と考えられるので中世ともいえますが、栄えたのはバロック時代(16世紀末〜18世紀半ば)なので、近世というべきでしょう。



1
最高弦と最低弦はソプラノ(トレブル)d2−d、アルトc2−c、テノールg1−G、バスd1−D(7弦の場合は−A1)です。とくにバスであることを表すとき、イタリア語ではバッソ・ディ・ヴィオラ・ダ・ガンバ basso di viola da gamba、英語ではベース・ヴァイオル bass viol、フランス語ではバス・ド・ヴィオール basse de viole となります。ドイツ語は複雑で、テノール・サイズをアルト Alt-gambe、バス・サイズをテノール Tenor-gambe といいます。なお、ガンバのサイズはヴァイオリン属ほどには規格化されていないので、各サイズとも実際の大きさには幅があります。とくにバスの場合、大きな楽器と小さな楽器では、弦長(弦の振動する部分の長さ)にして3〜4センチの違いがあるので、自分の体や手の大きさに合った楽器を選ぶ(または注文する)ことができます。【本文に戻る】
2
ヴィオローネの音域はバス・ガンバと同じか、その1オクターブ下(コントラバスとほぼ同じ)です。床に置き、椅子に座るか立って弾きます。ただし、ヴィオローネという言葉は、17世紀半ば頃までは低音弓奏弦楽器の総称でもありました。【本文に戻る】
3
かつてはチェリストが余技でバス・ガンバを弾くときなどにエンドピンを付けることがありました。これは楽器が重いからではなく(実際に足に重さを感じることはありません)、楽器と床の成す角度をチェロと同じように小さくする(寝かせる)ためです。【本文に戻る】
4
ガンバ属のコンソートで使われるサイズはトレブル、テノール、バスが標準です。ガンバ属のみによるコンソートは一般に「ヴィオール・コンソート」と呼ばれていますが、コンソートは英語なので、「ヴァイオル・コンソート」というべきでしょう。【本文に戻る】
5
この「ヴィオラ・ダ・ガンバ=脚のヴィオール」という説明の起源はおそらく、世界で最も権威ある音楽事典とされる「ニューグローブ New Grove Music Dictionary」ではないかと思われます。その「ヴァイオル」の項には、「Viol [viola da gamba, gamba] (Fr. viole; Ger. Gambe; It. viola, viola da gamba)... It is usually played held downwards on the lap or between the legs (hence the name  'viola da gamba', literally  'leg viol' ).」とあります。訳すと「ヴァイオル [ヴィオラ・ダ・ガンバ、ガンバ] (フランス語はヴィオール、ドイツ語はガンベ、イタリア語はヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ)…通常膝の上または脚の間で下向きに構えて演奏する(そのため“ヴィオラ・ダ・ガンバ”すなわち“脚のヴァイオル”と呼ばれる」。これでは「ヴァイオル=ヴィオラ・ダ・ガンバ=脚のヴァイオル」となって、堂々めぐりです。困ったことに、この訳のわからない説明をほぼそのまま採用しているのが米国ガンバ協会のサイトで、そのためか、Wikipedia をはじめ多くの英語サイトで同様の説明が繰り返されています。【本文に戻る】

 


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