microWAVE XTってなぁに?

今は亡きドイツの名門シンセサイザーメーカーであるWaldorf(ウォルドルフ)社が開発し、1998年に発売されたウェーブテーブル音源搭載シンセサイザー、それがmicroWAVE XTだ。



マットオレンジの5Uラックボディに44ものつまみが整然と並んだ強烈なデザインは一度見たら絶対に忘れられない。これはAxel Hartmann氏(Hartmann NeuronやAlesis Andromeda A6、ionなどのデザインも手掛けている)によるもの。 悪趣味(?)ながらも美しくかつ大変機能的で、このシンセがよりマニアックな信者に支持される要因のひとつとなっている。
(参考:XTデザインの変遷

さて、このmicroWAVE XTは先発のmicroWAVE2(下画像)という2Uラックマウント音源をより使いやすくするためにつまみを多数追加し、ラックからテーブルトップタイプへと改良させたもの。だからスペック的にはmicroWAVE2と全く同じだが、XTの方はバージョンアップに際してフィルタータイプが幾つか追加されているようなのでご注意を。




音源方式はウェーブテーブルシンセシスという、現在ではあまり一般的ではないものだ。アナログでもFMでもない、1周期のサンプル波形(ウェーブフォーム)が沢山内蔵されていて、それを呼び出して音を鳴らす。ただしこれではその辺のサンプラーやPCM音源と同じになってしまうから、もう少し説明しよう。

microWAVE XTにはサンプル波形を一度に最大64個しまうことのできる「ウェーブテーブル」が搭載されていて、どこにしまった波形をどんな順番で発音させるかを決めてやる事によって、あの独特なスィープサウンドを生み出している。

変な喩え方をするとウェーブテーブルとは一冊64枚のメモ帳で、そこにパラパラマンガを描くようなもの。各コマだけ見ると変化は無いけれど、前後のコマがうまく繋がるように様々な絵を描き、順番にパーッとめくることによって動きが生まれる。

ちなみにウェーブテーブルは全コマに波形を入れないとダメな訳じゃなくて、たとえばインデックス1にサイン波・インデックス64にノコギリ波を入れてやれば、残りの空いてるコマには滑らかに繋がるようにシンセ側が勝手に考えた波形を入れてくれる

あとはLFOや各種コントロールでインデックスNo.をごろごろ転がしてやれば音がどんどん表情を変えてモーフィングしていくという仕組み。
ウェーブテーブルにわざと滑らかじゃない並びで波形がセットされているものもあったりして、演奏しながらインデックス(startwave)つまみをいじるだけでも異次元にトリップ出来てしまう。

ただし音源の仕組み上、パルス波のスイープ用テーブルなんかでもゆっくりスイープさせると「パラパラマンガ感」が分かってしまう所がちょっぴり悲しい…。


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余談になるけどウェーブテーブルを音源部に搭載したシンセサイザーで言うと、同じドイツのシンセメーカーであるAccess社が2005年に発売したVirus TIがあるけど、デモを聴く限りあちらのウェーブテーブルの方がより滑らかで高品位な印象。
XTなんかのどうしようもなく粗くジャキジャキした質感は他では真似の出来ない個性といえるかもしれない。さすがは80年代ウェーブテーブルシンセPPG WAVEの波形を正当に受け継いだ真の末裔だけのことはある。




それから現行機種でもうひとつ、米D.S.I.(Dave Smith Instruments)社のEvolverシリーズにも96種のデジタルウェーブが搭載されていて、内蔵シーケンサなどでステップごとに波形をどんどん変えていける。
こちらのウェーブテーブルはモーフィングしないので厳密にはウェーブテーブルと言えないような気もするけど、御大デイブスミスがそう言ってるんだからきっとそうなんでしょう(笑


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