住宅問題の次元の違いを明確に教えてくれる本
「欧米では中古住宅流通市場が日本とは比較にならないほどの規模で存在する」とは、私もこの前までなんとも思わないで言ってました。実際、2003年におけるアメリカのそれは700万戸にのぼりますが、日本では通常25万戸程度なのだそうです。一見、かっこ書きの内容の証明のように思えますが、そんな単純なものでないことがこの本でわかりました。 中古住宅を英語で表現しようとすると、Used House だと思っていました。Used Car が中古車ですから、中古住宅はUsed House です。しかし、住宅流通市場で取引されているものは Existing Houese 、つまり「既存住宅」と言います。自動車は Used ですが 住宅は Existing なのです。 Used は劣化する耐久消費財です。自動車は数年で価値が消滅する耐久消費財です。住宅は流通を前提とした「資産」なので、Existingなのです。日本では、住宅は資産劣化しますので、Usedです。20年で建物の価値がゼロに近づきます。実は、既存住宅流通市場は、規模の差ではなく、次元の違いだったわけです。 「住宅で資産を築く国、失う国」は、「失う国・日本」で住宅建築に携わりながら、資産になる住宅を追求しているビルダー経営者たちとその理論的支柱になっている戸谷英世氏の共著でありますが、住宅問題を現象の差のみならず次元の違いをはっきりと理解させて解決のためのスタートポイントを示してくれる本だとおもいます。
海外の住宅事情をヒントに日本国内の住宅市場改革に取り組むための本。
一般消費者、住宅購入検討者というよりは、この本、都市計画立案者、デベロッパー、住宅税制立案者とか「川上」のひとが読むべき内容でした。どうして日本の住宅はスクラップ&ビルド前提でウワモノがわずか20年で価値ゼロになるのか、主として米国の事情と対比しつつ、所有権を絶対視しないことで一定の環境を保持し、適切な維持管理によって確実に国富として蓄積されるかの国の住宅財とわが国の事情を徹底比較。ただ、このあたりはわれわれ住宅ほしい、マンションほしい組の一般市民には「は〜アメリカはいいなあ」とため息が出るだけで何かの役に立つわけではないところはいたい。住宅を選ぶにあたって著者が言う「サステイナブル(ずっと維持していける)」という視点を養う意味では読むことに一定の意味はあると思いますが、「買い」のマンションを教えてくれ!という方には向かないとおもいます。
井上書院
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