ALBUMS 10 - 1


順位 アルバム名 アーティスト YEAR
10 VANESSA PARADIS Vanessa Paradis 1992
9 PHANTOMS The Fixx 1984
8 SPACE AGE PLAYBOYS Warrior Soul 1994
7 PARADE Prince & The Revolution 1986
6 THE POWER STATION The Power Station 1985
5 LITTLE EARTHQUAKES Tori Amos 1992
4 CLOSE TO THE EDGE Yes 1972
3 IMAGES AND WORDS Dream Theater 1992
2 THE EDGES OF TWILIGHT The Tea Party 1995
1 AJA Steely Dan 1997


10. VANESSA PARADIS - Vanessa Paradis

 断言します。これぞレニー・クラヴィッツの最高傑作。いや、別にアルバム間違ってませんから。ヴァネッサ・パラディ? 誰ですかそれは。

 …ちょっと言い過ぎましたね。制作したのは確かにレニー・クラヴィッツですが、彼の想像力を大いに刺激したのがこのフランス娘だったのは事実。どこまで も舌足らずなロリータ声で囁く小悪魔ヴァネッサという逸材あってこそ、レニーも本気出しちゃったというものです。ていうか2人揃って確信犯だろこれは。

 1曲目、"Natural High" のイントロだけでもう腰砕け。Wulrlitzer のエレピが8分で刻むリフに、レニー自身が叩くもっさりしたドラム、乗っかってくるヴァネッサのヴォーカルも軽くイッちゃってますから。これぞまさしくナ チュラル・ハイ。アルバム全曲、徹底して懐古趣味丸出しです。Velvet Underground だったり Rolling Stones だったり Monkees だったり、恥ずかしげもなくルーツ(というか元ネタ)を晒しまくるレニーは、この時期が一番迷いがなかったような気がするのは、まさか自分だけじゃないで しょう?



9. PHANTOMS - The Fixx

  まだ純真さのカケラを心に隠し持っていた中学2年の夏。発売日を心待ちにしていたこのレコード。灼熱の午後をすり抜けて自分の部屋に連れ帰 り、針を落としました。1曲目の "Lose Face" のイントロのギターが始めた瞬間にぞくぞくっと背筋に走ったあの寒気を、僕は一生忘れることはないでしょう。むしろ悪寒といってもいい。

 一般的には前作 "REACH THE BEACH" をベストに挙げる方が多いと思います。商業的な成功という点では間違いなくあちらですが、その勢いを借りて一歩も二歩も自分たちの世界に踏み込んでしまっ たのがこのアルバム。派手な装飾音は削ぎ落とし、真の意味でポップ・ロックの藝術性を極めています。溝が減るのがもったいなくてアナログでは聴かず、カ セットテープに落として擦り切れるほど聴きました。

 80sブリティッシュ・インヴェイジョンの視点だけで捉えた「The Police の廉価版」的評価は不当です。争いをやめない人類の愚かさや、死ぬことへの興味/恐怖、現代社会の孤独や疎外感などをありありと描き出す Cy Curnin は、僕にとって20世紀最高の詩人でした。鋭いカミソリのような Jamie West-Oram のリズムギターにシャープに切り刻まれながら、グルーヴィかつタイトなリズムセクションの上で、Rupert Greenall のキーボードが映し出す幻影に、何度も何度もトリップしていたのです。

 "Less Cities, More Moving People" や "Lost In Battle Overseas" などは、9/11以降の今こそ正しく評価されるべきでしょう。"Question"、"In Suspense"、"Facing The Wind" といった楽曲が投げかける人間存在自体への深く重い洞察は言うに及ばず。ローティーン時代の自分に決定的な影響を与えたマスターピース中のマスターピー ス。



8. SPACE AGE PLAYBOYS - Warrior Soul

 音楽業界と闘い、どこまでも闘い抜いて敵地に倒れた男、Kory Clarke。彼はいつもこの世の何かに対して怒りを発散していたし、それを言葉と音にしようともがき苦しんでいました。初期のアルバムがヘヴィ・メタル 的な範疇で捉えられたのはかえってマイナスだったのかもしれません。日本でもBurrn!誌で伊藤政則氏が絶賛していましたが、その結果は中古CD屋の HR/HMコーナーのW欄に残る膨大な在庫です。

 まあそれはそれで気に入っていた自分ですが、94年のこのアルバムには本当にぶっ飛ばされた。メタルと呼ぶべきではないでしょう。むしろパンク色の濃い ロックンロールです。しかも相当にカッコいい。当初は意外な気もしましたが、ロンドンでそのライヴを 観て確信しました。Kory がやりたかったのはこれだったんだと。ひどくグラマラスで猥雑な魅力に溢れたパンキッシュなロック。米国市場が見向きもしないならロンドンに乗り込んでや る。そんな彼らをKERRANG!誌を始めとした現地メディアは極めて好意的にレビューしました。

 オープニングの "Rocket Engines" から "The Drug"、"Let's Get Wasted" と休む間もなく叩きつける疾走ナンバーの数々。しかもいちいちキャッチーで歌いやすくて。ひょっとしたらひょっとするかも?と思わせたのも束の間、バンド の絶頂期は長く続きませんでした。でもこのアルバムには彼のギラギラした輝きがぎっしり詰まっています。今でも、そしていつまでも。



7. PARADE - Prince & The Revolution

 このALL-TIMEセレクションは「1アーティスト1枚(or1曲)」のルールで作っています。ということはつまり、大好きなアーティストの場合、枠 が全然足りません。例えばこの Prince。逆に言えば「どれを入れてもいい」ということでもあるわけで、今日の気分で "PARADE" を仮置きしますけど、別に "AROUND THE WORLD IN A DAY" でも "SIGN OF THE TIMES" でもよかったのです。以上、業務連絡終わり。

 それにしてもこの異様な音世界は一体何でしょう。特に、ほぼノンストップで展開するアナログA面の鬼気迫るテンションは聴く者を圧倒します。アレンジメ ントってのはこうやるんだ、と言わんばかりのゴージャスな1曲目 "Christopher Tracy's Parade"、一転して金属的な打楽器に支配されたファンク "New Position"、かと思えば無駄にメロウな "Under The Cherry Moon"。もちろんB面も負けていません。「愛は勝つ」的ポジティヴィティに溢れた "Mountains" や全米#1ヒット "Kiss" はこちらに収録されています。驚異的なファルセットを聴かせる後者なんて、ベース音すら入っておらずただ「ゴワッ、ゴワッ」という異様な音が入っているだ けの究極のソリッドファンク。あり得ない。

 そして目くるめく異界を見せてくれた殿下の「大行進」はピアノ・バラード "Sometimes It Snows In April" で幕を閉じます。「♪時には4月に雪が降ることもある。時にはひどく傷つくこともある。永遠に生きられたらと思うこともあるけれど、良いことには必ず終わ りが訪れるものだから…」。死者に捧げる曲としてこれほど美しいものを、僕は他に知りません。



6. THE POWER STATION - The Power Station

 この娘とも一晩きりだと思えば、飛び散る汗も気にならない。要するにそういうアルバム。

 もう少し言葉を足せば、このプロジェクトには「どうせこれっきりだから、好き勝手やっちまおうぜ」的な怒濤の如き熱さがある。ほとんど面識のなかった者 同士、もちろん最後はプロデュースの Bernard Edwards(CHIC)が手堅くまとめているわけですが、やってる本人たちは「売れりゃまあ嬉しいけど、売れなくても別にいいんじゃね?」くらいのつ もりでガシガシ録音しちゃったのではないか。

 蓋を開けてみれば、Duran Duran で檻に入れられていた Andy Taylor が火を噴くようなギターを弾いているのを始め、黒っぽいファンキーなベースを聴かせる John Taylor、スティックも折れよとばかりに叩きまくる Tony Thompson、そして伊達男 Robert Palmer の弾けっぷりがすべてプラスの方向に作用して、予想もできなかったほどの大当たりに。人生なんてそんなもんです。

 火傷しそうなロックからラストのバラードに向けて超特急、途中に The Isley Brothers の "Harvest For The World"(Andy が vocal!)のカヴァーまで挟みながら駆け抜ける35分弱。頭で考えたんじゃなくて先に身体が反応しちゃった、そんな夜だったからこそ飛び散る汗も気に ならなかった… はずなのですが、どういうわけか1996年に "LIVING IN FEAR" という2枚目をリリースしてしまい、しかも出来が貧弱だったことから大いに後味を悪くしちゃいました。結論:「二晩寝るんなら、汗はよく拭いとけ」。



5. LITTLE EARTHQUAKES - Tori Amos

 90年代の初め、御茶ノ水近辺で外回り営業をやっていた頃。空き時間にはディスクユニオンに入り浸って、新入荷コーナーに入りたてのCDをざくざく拾っ てました。ちょうど女性ヴォーカルものにハマり始めた頃で、ジャケに女の子が写っていればとりあえず何でも買う、という時期でもありました。そして出会っ たのが、出たばかりだったこのアルバム。

 小さなおもちゃのピアノと一緒に閉じ込められた木枠から外に出ようとする Tori Amos。アートワークがアルバムのトーンを象徴しています。一聴しただけでは Kate Bush のフォロワーのような印象を受けるかもしれませんが、全く異なる性質の音楽というべきでしょう。美しすぎるピアノに導かれて聴き進めるにつれて、どんどん 深みにはまっていきます。4曲目の "Precious Things" における過激な歌詞とほとんど暴力的といっていいアレンジなどはまさに鳥肌もの。自身のレイプ体験をアカペラで淡々と歌う "Me and A Gun" に至る頃にはもはや彼女から逃げられなくなっているはず。

 それにしてもこの感情の起伏の大きさといったら。どうしようもなく陽気な歌から静かに沁みこむ弾き語りまで、宗教やジェンダーやセックスや親子関係な ど、ありとあらゆる題材で思いの丈をぶつけた Tori が後世に与えた影響は計り知れません。彼女がいなかったら Alanis Morissette も Avril Lavigne も出てこなかったのではないか。ちなみに、Tori のピアノを中心に、Nick DeCaro が美しすぎるストリングスをアレンジした "Winter" は僕のハンドル名の由来になっています。



4. CLOSE TO THE EDGE - Yes

 邦題『危機』。まさに世界制覇に乗り出そうとした矢先、ドラマーの脱退問題を抱えてバンド内のテンションが高まっていたことを象徴した原題をうまく凝縮 したものだと思います。創造力のピークに達していた Yes が大作に真正面から取り組んだ、プログレッシヴ・ロックの歴史に燦然と輝く金字塔。

 18分を超えるタイトル曲(アナログA面全部)と10分弱の中篇2作(アナログB面)。いずれもが Yes の良い面を最大限に引き出した演奏です。地鳴りのような Chris Squire のベースラインと Bill Bruford が刻む複雑なリズムの上で、より磨きのかかった Rick Wakeman のキーボードと Steve Howe のギターが派手なフレーズを応酬し合います。Jon Anderson の歌詞は非常に難解かつ抽象的で、ほとんど何も言っていないに等しい。何かを伝えるというより、透き通ったその声をひとつの楽器としてアレンジに組み込ん だ、という印象を受けます。

 起承転結のはっきりした4部構成のタイトル曲は何度聴いても飽きるということがありませんし、牧歌的なイントロから壮大な盛り上がりを見せるB面1曲目 の『同志』も捨てがたい。でも個人的なお気に入りは、スリリングなギターでスタートし、3声のコーラスが複雑に絡み合いながら目まぐるしい場面展開を聴か せるラストの "Siberian Khatru"。これら全てをライヴで再現しちゃうんだから驚くしかないのです。



3. IMAGES AND WORDS - Dream Theater

 音楽って何だろう。極端に言えば音符と歌詞の組み合わせでしょう。もしまっさらなキャンバスに絵を描く作業に例えるならば、そこに描かれたイメージと詩 の総体こそが、音楽家が伝えたい「何か」であるはずです。Dream Theater の2ndアルバムはまさに「イメージ」と「言葉」の有機的結合と言えるでしょう。

 ヴォーカリストが脱退し、レコード契約を失ってもめげることなくじっと作品を温め続け、アレンジにアレンジを重ねた日々が、この知的で冒険的で野心に溢 れたアルバムに結実しています。バンドの演奏が巧いのは当然なのですが、James LaBrie という新ヴォーカリストに出会えたのはまさに奇跡だったと言っていい。音域の広いメロディラインを楽々と歌いこなすヴォーカルには爽快な感動すら覚えま す。辛い時期に前向きな気持ちで書き溜めたポジティヴな楽曲が多いのも好印象。

 Mike Portnoy のスネアドラムが機械的で表情に乏しい点がよく指摘されますし、キーボードやギターも十分な機材が用意できたわけではないでしょう。だがここには音色の乏 しさを補って余りある音楽への情熱があります。90年代以降のプログレッシヴ・メタルと呼ばれるジャンルの頂点を極めたアルバムといってもいい。彼ら自身 もこれを超えてはいませんが、それはアルバムごとに別の山に登ろうとしているからだろうと思います。



2. THE EDGES OF TWILIGHT - The Tea Party

 乱暴にまとめれば "The Doors meets Led Zeppelin"。東洋風の神秘的なフレーズを持ち込んだZEP型ハードロックの上で、Jim Morrison が時に優しく囁き、時に激しくシャウトする。そんな音楽を想像してみてください。

 …想像できませんか。
 じゃあ俺たちが創造してやろうとばかりに登場したのがカナダ出身のトリオ、The Tea Party。もっとも、ヴォーカルの Jeff Martin は Doors には興味ないそうですし、むしろ同世代の Alice In Chains の Layne 的な深みのある声を思い浮かべる方がいいのかも。一度でも彼の声を耳にすれば、容易に忘れ難い刻印を貴方に残してくれるはずです。わずか3人とは思えない 厚みのある演奏。実際にライヴを観てみると、ギタリストがギターを持ち替えるだけでなく、ベーシストがフットペダルを踏んでシンセを鳴らしたり、全員が パーカッションを叩いたりと相当なマルチプレイヤーぶり。

 70年代ロックにずぶずぶにハマり込んだ本気の模倣作です。でも、たとえイミテーションであっても、リアルタイムで体験できなかった自分にとっては彼ら こそが「本物」だし、先か後かなんてどうでもいい。要は音楽としての出来の良し悪しで、このアルバムに収録された楽曲のクオリティは完全に年月を超越して いるからです。95年にロンドンで彼らのライヴを2回も観られたことにはきっと何かの意味があるのでしょう。生の音楽にあそこまで魂を揺さぶられたこと は、後にも先にもほとんどないから。



1. AJA - Steely Dan

 これまでに、一体何回このアルバムを聴いてきたのだろう。そして、これから死ぬまでに、一体何回聴くことになるのだろう。恐らく数え切れないほどの回数 になるはずですが、きっと最後の死の床にあっても、僕はこの音楽に包まれていたいと思うに違いない。そんなレコードに出会えて、つくづく自分は幸せ者だと 思うのです。

 70年代後半、当時最も勢いのあったスタジオミュージシャンたちをかき集め、長期間に渡って押さえたスタジオで毎日毎日同じパートを延々と録り直しさせ たという伝説のレコーディング。複雑なホーンセクションやコーラスを含め、綿密に計算され練り上げられたスコアを基に、妥協することなく一音ずつ精緻に構 築された音楽の完成型が、ここにパッケージされています。単なる表面上のお洒落さに留まらない、核心部分の歌ごころがしっかりしていてこそ僕らの耳に残る 音楽になる。そのことを彼らはよく分かっていたのだと思う。だからこそ、これだけ手間とお金をかけた力作でありながら、逆にイージーリスニングのように軽 く聞き流すこともできる作品になっているわけです。

スカスカなのにずっしりと重い "Black Cow" のリズムで幕を開け、"Aja" の似非東洋メロディの背後で炸裂するウェイン・ショーターとスティーヴ・ガッドのバトルに拳を握りしめ、"Deacon Blues" の豪華なホーンセクションが彩る「負け犬賛歌」に涙するA面から、スリリングな "Peg" に切り替わるB面への曲構成も実にお見事。リー・リトナーやラリー・カールトン、マイケル・マクドナルドといった大物が極めて贅沢に起用されており、参加 クレジットを眺めながら演奏を聴いていると飽きるということがありません。

 「ロック的なダイナミズムが足りない」という批判は適切ではないでしょう。Steely Dan が目指していたものは単なるロックでも、いわゆるフュージョンでもなかったはずですから。無人島に1枚しかアルバムを持っていけないとするならば、僕は間 違いなくこれを選びます。


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