The Beatles / Help ! <1965> |
おすすめ度 ★★★★ |
||
彼ら自身2作目となった主演映画のサントラとして発売された5枚目のオリジナルアルバム。前半の7曲が映画に使用されたナンバー、後半の7曲がアルバム用に録音されたナンバーとなっている。 映画の方は前作での魅力を引きづりながらも、よりポップでアイドル性に満ちた楽しい内容となり、その後のアイドル映画のお手本的作品に仕上がっている。 っがその輝く様な成功の影で、彼らは明らかに「成功」という名のプレッシャーに苦しみ、そしてアーティストとして成長していた。 アーティストとしてのBeatlesは次作Rubber Soulからというのが一般的な見方だが、本作にはRock界全体の流れを変えてしまう二つの功績がある。 最も大きな功績はYesterdayだろう。現在ではココ日本でも知らない人がいない程の超有名曲である本作が彼らにもたらしたモノは何だかんだ言ってもかなり大きなモノであったハズであり、彼ら、そしてロックアーティスト全体の社会的地位の向上にまで少なからず影響したであろう名曲である。(その直後にロッケンロ〜な14を持ってくるところにJohnのプライドを感じる....) Yesterdayの発表により、ロックアーティストはより深く多彩な作品を生み出していくことになり、その流れは後にサイケやプログレにまで行き着くことになる。 そして本作のもうひとつの功績、それはAct Naturallyのカバーではないだろうか。全体に一貫したアーシーなサウンドを持つ本作の中で、彼らの密かなカントリー志向が端的に現れたナンバーである。 イギリス人である彼にしてみては「カントリーも好きなのよん♪」なんて言う軽い気持ちで収録されたであろうこのカバーがアメリカのロックアーティストに与えたショックは計り知れないモノであったハズである。 何と言ってもドカントリーの大御所Buck OwensによるドカントリーチャートNo.1のドカントリーナンバーを、今をときめく超アイドルロックグループがカバーしたのである。 更に12なるオリジナルのカントリーナンバーが収録されてるんだからもう駄目押し。「え?そ、そんなんもあり??」なんて思ってるアメリカアーティストのポカンとした顔が想像できてしまう。 Act Naturallyの発表により、アメリカの、とりわけカントリー畑出身のロックアーティストは恥じらいも無く自分のルーツへ回帰できたハズである。「俺の時代だ!.....」っと一人ニヤけるChris Hillmanの顔が目に浮かぶ。これが無ければTime Betweenは未発表に終わっていたかもしれない。(もしレコーディングしても) っという事で、最近では前作を差してそういう方が多くいますが、僕にとっての「Beatlesによる早すぎたカントリーアルバム」は本作であるのです。
〜特にお気に入りな曲達〜 上記で指摘し忘れましたがこちらも名曲Help !で見事にアルバムは幕を開ける。この爽快はドライブ感を放つ本作の本当の意味を理解するリスナーは一人もいなかった。しかしそれもそのハズ、John自身も気付いていなかった。 サウンド的にはタイトルを叫ぶサビから入る展開から、アコギのカッティングを中心としたアーシーなサウンド、そして陰陽を見事に表現するドラムまで、アルバムタイトル曲に相応しい名曲に仕上がっている。 成功というプレッシャーに苦しんだ彼が生み出した素晴らしいRockナンバーは、今もその輝きを失っていない。 続いてはPaulによるRockナンバーThe Night Before。印象的な3声コーラスに乗って展開されるポップな世界はPaul特有のモノだ。エレピやちょっと間抜けなギターソロも楽しい。 Georgeによる不器用なリフが微笑ましいI Need Youは、彼のペンによる久々の収録ナンバー。じっくり聴くとメロディーまで不器用に響き、何だか全体もズッコケ気味。んでもこれが後に彼の持ち味となって定着していく。暖かい気持ちで聴いてやってください。 再びPaulによるポップ風味の心地良いRockナンバーAnother Girlはまた魅力的。ココでは何とギターまでPaulによるもので、そのカントリーフレーズ連発な音に心は奪われっぱなしと言ったところか。彼のセンスには頭が下がる。(Georgeの頭も下がる) JohnによるYou're Going To Lose That GirlはR&Bをベースにしながらもポップに彩られた素晴らしい仕上がり。Johnの渋いヴォーカルに絡みつく様なコーラスと隠し味的に加えられたRingoのボンゴが最高の味わい。 映画においても本ナンバーの録音シーンが収められているが、個人的なハイライトとして何度となく見てしまうシーンでもある。カッチョ良いっスよね! PaulのアイデアによるというRingoのドラムパターンが何と言っても印象的なTicket To Rideも間違いなく本作のハイライトのひとつ。 John曰く「Beatlesが演奏した初めてのヘビーサウンド」なる事だが、やはりこの曲の魅力はイントロのギターとドラムに集約されているだろう。Paulによるコーラスのタイミングも後のRockサウンドに大きく貢献したと言っても過言ではない。素晴らしいぞ。 この曲をアルバム最大の問題作と捕らえているのは僕だけか?Act Naturallyの登場である。んなこと言いながら改めて気合入れて聴いてみると、Ringoの間抜けなヴォーカルに思わず頬が緩むばかり。これの何処が問題作だ!? ま、それが彼の魅力である。変則チューニングというGeorgeによるギターも生き生きと響き渡り、Paulのコーラスも見事だ。 It's Only LoveはJohn自身によればあまり気に入ってる曲じゃないみたいだけど、どうして魅力的なナンバーである。フォーク調に展開されるシンプルなラブソングで、アコギによる美しいカッティングとエフェクトを効かせた浮遊感のあるエレキの絡みが美しい。 GeorgeによるYou Like Me Too Muchは、なかなかの出来。終始響き渡るエレピと間奏で登場するエレキとピアノの掛け合いが印象的。こっちが先に出来てたらねぇ〜、映画に入れたかったねぇ〜、George。 Paulによる本格的なカントリーナンバーI've Just Seen A Faceは、彼の懐の深さを見せつける作品。アコギを何本も重ねたようなイントロからブラシを使ったドラム、重たくもシンプルなアコギソロまで一気に聴かせるアレンジは見事のひとこと。これもまた魅力。 んでYesterday。Paulの持つ絶妙の音楽的ルーツとそれを見事に料理したGeorge Martinの手腕が生んだ奇跡の名曲。そしてその二人に全てを託したグループとしての彼らの友情と信頼関係も素晴らしい。実はアルバムのB面のケツから2曲目という地味な立ち位置も彼らしくてイイね。 そしてラストは必殺ロックンロールのDizzy Miss Lizzyでキマリ!Johnのクレイジーなヴォーカルは永遠だ!こういうナンバーを聴くと、Beatlesってやっぱりロックバンドだなっと何だかホっとする。
|
1 . Help !
この男が歌うC&Wに |
<2001.10.8更新>
順路はこちら
Beatles「Rubber Soul」へ!
〜関連アーティスト/アルバムへのリンク〜
The Byrds / Younger Than Yesterday
Time Betweenの登場はAct Naturallyの功績!?