Bob Dylan / Desire <1976>

おすすめ度★★★★★


前作発表後に開始した大規模な全米ツアーThe Rolling Thunder Revueを挟んで発表されたDylan20作目のアルバムで、まさに65年以来の第2期絶頂期の真ん中を突っ走っていたDylanの溢れるばかりの制作意欲を反映したかのような作品に仕上がっている。

Dylanはまずその楽曲製作の段階でByrdsのRoger McGuinnとブロードウェイ作品を共同製作しようとしてRock界でもその名を知らしめたJacques Levyを誘い、3週間の合宿の末に本作収録のナンバーを共作している。

この起用に関してはDylan自身、結局流産に終わりながらもByrdsのUntitledに収録されたLevyのRogerとの共作作品を気に入っていた事に起因しているようだ。

その成果は本作全体の表現を著しく豊かにし、Dylanの作品の中でも指折りのロマンチックな作風を与えることに成功している。(これは明らかにUntitled収録のByrdsの作品にも通じる)

またバックミュージシャンも成功を収めた前作に縛られること無く思い切って一新。その楽曲の雰囲気を一層引き立てるようなジプシー風の演奏振りが何処までも美しく、ゲストで迎えたEmmylou Harrisのヴォーカルも良く溶け込んでいる。

そのEmmylouの助けを借りたDylanの本作におけるヴォーカルも素晴らしいのひと言で、彼の作品を全て見渡してもこれだけ表情豊かに響く彼の声を聴くことはなかなか出来ない。

アルバム製作開始当初は新しい音を求めていたDylanは総勢24人ものミュージシャンをスタジオに呼びつけたそうだが流石に統率が取れず、最終的にはある程度絞った形での録音となったようだ。

その24人の内の1人だったEric Claptonは自身の作品へDylanに参加してもらったお礼にと現れたらしいが、余りの混乱にとりあえず酔っ払った後に何もせずに帰ったらしい。

 

 

〜特にお気に入りな曲達〜
(っていっぱいあってすんません^^;)

アルバムは60年代のDylanを思わすプロテストソングHurricaneで幕を開ける。無罪の黒人プロボクサーを歌った本作は自身の作品All Along The Watchtowerを彷彿させるカッティングに引き寄せられてフィンドルとEmmylouのヴォーカルも華麗に絡む名曲だ。

因みに近年このプロボクサーの伝記映画が公開された時は、本作がメインテーマとして当然の起用。お陰でリマスター盤のシングルが発売される棚ボタが拝めるに至った。

前述のRolling Thunder Revueでは鬼気迫るテンションで披露されていたIsisもシュールな作品。淡々と展開されるリアルな物語の中で響くDylanのヴォーカルとハープがとにかく素晴らしい。

一転して陽気な雰囲気が楽しいMozanmbiqueは本作のそれまでの緊張感をほぐしてくれるかのような暖かい作品。終始デュエットの形で展開していくDylanとEmmylouのヴォーカルが僕の部屋の空気を美味しくしてくれる。あ、タバコの煙もフィンドルの響きに溶けてるネ。

One More Cup Of Coffeeは独特のメロディーを持った作品。ジプシー風サウンドに乗ったメロディアスなベースラインが印象的。どこか古代のヨーロッパを思わすような雰囲気と深いアメリカンロックのスピリッツが融合したような仕上がりは出色!

再び二人がデュエットで歌うOh, Sisterは普遍的な愛をテーマにした名作。コーラスをする訳もなく、ハもる訳でもなく、お互い自由に歌っているかのようなスタイルが作品のテーマを端的に表しているかのよう。終始鳴り響くフィンドルとハープはここでも最高に効果的。

実在のマフィアを歌ったJoeyも味わい深い作品。ヨーロッパの縄張り争いで射殺されたという彼を思ってか、ここで登場するアコーディオンやきらびやかなギターの眼差しは大西洋の向こうの大陸を見つめている。じっくり歌い上げるDylanのヴォーカルはココでも素晴らしい。

再びジプシー風の雰囲気が美しいRomance In Durangoは個人的な本作のハイライトナンバー。途中にスペイン語も挟みながら歌い上げるその美しさはタメ息モノ。ココでもEmmylouのヴォーカルがラフに絡みバックの演奏振りも作品にトロトロと溶け込んでいく。とにかく美しい作品。

前作からメドレー式に流れ込むBlack Biamond Bayはカントリー調の作品。淡々とした曲調の中で展開されるシュールなストーリーに、タマに歌詞カードの対訳を見ながら聴くと惚れ込んでしまう。ともあれ、それ無しでも十分に堪能できる独特の世界が素晴らしい。John Wesley Hardingにも通じる味わいですね。

ラストのSaraは自身の妻へ贈った最高のラヴソング。こういった曲でも最後まで本作のコンセプト通りのアレンジで収録している所が素晴らしい。こういった名曲も本アルバムの空気で包んでいる所に彼のこだわりを感じる。

そして僕らはこの曲の素晴らしさを堪能しながらもアルバムを通して味わった余韻に浸れることが出来るのである。あぁ、おなか一杯。飯包了、不思家。

(あ、全曲書いちゃった...)

 


Desire1.gif (20534 バイト)

1 . Hurricane
2 . Isis
3 . Mozanmbique
4 . One More Cup Of Coffee
5 . Oh, Sister
6 . Joey
7 . Romance In Durango
8 . Black Biamond Bay
9 . Sara

 

 

 

 

 

 

 

 

Desire2.gif (8094 バイト)

混沌としているようで
統一感があって....

彼の感受性がふんだんに
堪能できる本作は最高!

(2003.6.29 更新)

 

 

 

 

 

順路はこちら(工事中)
Bob Dylan / Bob Dylan Live 1975
(Bootleg Series Vol. 5)

 

 

 

 

 

 

〜関連アーティスト/アルバムへのリンク〜
Byrds / Untitled

LevyとRogerの共作曲を含むByrdsの最高傑作!

Untitle1.gif (20945 バイト)

 

 

Gram Parsons / GP
Emmylouが世に出た記念すべき作品

GP1.gif (22185 バイト)

 

 

Eric Clapton / No Reason To Cry(工事中)
Dylanが書き下ろした作品も含むEric版アメリカンロックアルバム