The Byrds / (Untitled) <1970> |
おすすめ度 ★★★★★ |
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60年代も終焉に向かい元同僚達が華々しい再スタートを切ったこの時期に、Byrds本体を牽引し続けていたRogerは不遇の時間を過ごしていた。 ソフトな表情を浮かべた前作も不評に終わり、Byrdsも過去のバンドとしての烙印を押されかけていたその時、Rogerには密かな自信とハングリーな精神が宿り始めていたのである。 前作でByrdsに新たな風を吹き込んだJohn York(b)の脱退も何のその、ベテランベーシストのSkip Battinの獲得に成功。ココに演奏力ではByrds史上最強と言われるメンバーが揃う事となる。 Rogerは年間200本以上という驚異的なペースで精力的に全米を回るLive活動を開始。新たなファンの獲得に成功するとともに、バンドとしてのアンサンブルも飛躍的に向上させる。 更にこの活動と平行してRogerは、ブロードウェーの演出家となるJacques Levyとミュージカル用サントラの制作にも取り掛かり、次々と粒揃いの名曲を産んでいく事となる。 結果的に流産に終わったこの作品用の楽曲はそのまま本作に収録される事となり、この素晴らしい作品群と前述の強烈なLive音源を収録した本作は、ウェストコーストロックの金字塔と言われるまでの評価を得る事となる。 また本作で初めて顔を会わせるRogerとLevyの共作活動はその後もしばらく続き、これが切っ掛けとなりLevyはBob Dylanと共に名作Desireを制作する事となる。
〜特にお気に入りな曲達〜 アルバムはカッチョ良いMCと共に強烈なLiveパートからスタートする。Lover Of The Bayouは、この時期のオープニングナンバーに定着していたRogerとLevyとの共作ナンバー。 イントロからの独特の歪みをもったClarenceのギターが暴れまわり、Rogerのヴォーカルもそれに答えるかのように歪みながら絡み付く。Geneの叩き出すスワンピーなリズムにも注目だ。 Positivery 4th Streetは、もはやByrdsの代名詞的になったDylanのカヴァーソング。一転して爽やかに響くClarenceのカントリーギターが最高だ。 続くNashville WestはClarenceの独壇場的カントリーインスト。重心を低くしながらも馳走する強烈なリズム隊に乗って、Clarenceのギターが炸裂する。 一転してRogerの12弦ギターが活躍するSo You Want To Be A Rock'n Roll Starは初期のヒットナンバー。脱退しているメンバーとの共作であるナンバーをByrdsという名の元で惜しげもなく披露する姿もまた、彼らしい。 オリジナルではB面全部というEight Miles Highは、この時期の彼らの演奏力をまざまざと見せつけたトラックだ。 発表当時はサイケロックとして認識されたナンバーであるが、この時期になるとその本質とも感じられるジャズっぽいニュアンスが湧き出ている所が興味深い。特にSkip Battinによる後半のベースソロは圧巻。 スタジオパートは名曲Chestnut Mareで幕を開ける。Roger自身の最高傑作と言っても過言ではないこの素晴らしきナンバーも、Levyとの共作だ。 とてもドラマチックな展開を聴かせる詩の世界は、やはりLevyとの共同制作の成果か。しかしRoger自身の歌唱もこの上なく楽曲に溶け込み、ブリッジでのアレンジも見事。この曲だけでも本作を聴く価値あり♪です。 Truck Stop GirlはLittle Featの1stにて収録される事となるLowell GoergeのナンバーをClarenceが取り上げたもの。少しLowellを意識したかの様なClarenceのヴォーカルと彼にしては珍しいRock系の見事なソロが文句無しの聴き所だ。 Levyとの共作であるAll The Thingsもスケールを感じさせる名曲だ。Geneの表情豊かなドラムと流れるようなピアノに乗り、朗々と歌い上げるRogerが印象的。 Yesterday Trainは、Geneがヴォーカルを取るカントリーナンバー。Trainソングらしいハープをフューチャーしながらも、FBBのSneeky Peteが奏でるスティールギターが全体に不思議な浮遊感を注いでいる。 そしてJust A Seasonは、またしてもLevyとMcGuinnの共作による大名曲だ。巡りめくる人生を歌う詩の世界にピタリとハマル12弦ギターとその歌唱、そして見事なClarenceによるアコースティックソロは絶品だ。8と並ぶ、本作のハイライトナンバーである。
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1 . Lover Of The Bayou
この頃になるとまた渋くなる |
(2000.5.27 再更新)
〜関連アルバムの簡単な紹介〜
(Untitled)/(Unissued)
Byrdsのオリジナルアルバムのリィシューシリーズが待望の後半戦を迎えた。
僕が何よりも望んでいた本作のリィシューは、何と既存盤のリマスターと
完全未発表曲集の2枚組みという憎い構成になっていた。
2枚目の未発表曲集は6曲の
スタジオアウトテイクと8曲の未発表Live音源だ。
スタジオアウトテイクでは、ほとんどClarenceによる弾き語りと
言っていい素朴な魅力が溜まらないYesterday Train
そしてアーシーに響くLove Of The Bayouのスタジオ版
(少しエコーが邪魔です)更に意外にも力強く迫るGeneの
Willin'などがやはり聴き所。どれも素晴らしいテイクだ。
しかし正直あまり期待してなかったLive音源が本作の最大の魅力。
同時に正規盤として発売された69年辺りのソフトなタッチと
既存盤に収録されていたエッジの効いたByrdsの魅力が
ファジィに交差する魅力は極上だ。
特にIt's Alright Ma〜Ballad Of Easy Riderと流れるアーシーな
魅力は66年辺りからDylanによって受け継がれた
ニューフォークミュージックの馴れの果てと言っても過言では無い。
全アメリカンロックファン必修テイクだ。
またTake A Whiff On MeといったUntitledからの選曲も嬉しい。
っとココまで2枚目にべったりでしたが、ふと1枚目をトレイに乗せてみると...
そのリマスターの素晴らしさに気付くハズである。
特にClarenceによる素晴らしいアコギのひとつひとつの音が
美しく響き、Byrdsの素晴らしき世界が部屋中に蔓延していく。
何だかんだ言ってその音の素晴らしさに感動してしまい
結局既存盤である1枚目に再びハマりこんでしまった僕でした。
(あ、全然簡単じゃないですね...すんません。長いです)
順路はこちら
Byrds / Original Byrds へ
〜関連アーティスト / アルバムへのリンク〜
Little Feat / Sailn' Shoes
後にデビューしたLittle Featが制作した名作
Bob Dylan / Desire
Jacques LevyとDylanの共作も含め名作
FBB / The Gilded Palace Of Sin
Sneeky Peteが在籍した革命的カントリーバンド