R&R Fragments

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自爆シリーズI

第20回
Re:
' One Nite Blues '
From:
mack
Dated:
'01/08/07


鬱々とした気分で冬を過ごした僕であったが、そんな僕にはお構いなしに季節は巡り春がまたやってきた。キャンパスは桜の花が咲き、また新入生が色々な期待にムネを膨らませつつ闊歩するさまは、毎年のこととはいえ何か華やぎに満ちていて観るものも華やいだ気持ちになってくる。

しかし僕にはまだそこまでの余裕が無かった。大学に入って1年が経ったが、自分の存在証明(= Identity)を失ってしまった僕は「自分がどこから来て・どこに行こうとしているのか」ということを何とか見極めたい、と思いつつも、中途半端な自分から逃げ出したい、というような安易な逃避願望を抱え、ぎりぎりのところで踏みとどまっているような状態だった。

そんな僕にふたつの出会いがあった:

 ひとつは、僕が所属していたサークルにその春新入生として入ってきた、スドー達だ。

G. スドー / Bass ドマ(二浪中) / Dr. サガラ(他大学に進学) / Vo. ツダ

というメンバーで彼らは都内の私立高校でバンドを組んでいた。このなかのスドーとツダが目出度く(僕とも)同じ大学に進学したので、浪人中のドマを除いたメンバーで大学でもバンドをやろう、というわけでそのサークルにメンバー募集も兼ねて入ってきたのだった(ちなみに彼らは一年浪人していたので年齢は僕と同じ)。

最初の邂逅がどんなものであったのか、既に細部は忘れてしまっている。が、確か僕が King Snake Blues(Sonhouse) のリフを空弾きしているところを彼らのうちの誰かがみつけてくれたんだと思う・・・(その頃の僕の愛聴盤は 再結成サンハウスの Crazy Diamonds というライブ盤だった)。

なんとなく、彼らと一緒にサークル室で サンハウスを始めとする R&Rの曲をジャムるようになり(首尾よく同い年で九州からその大学に進学していたハナダというベーシストも見つかっていた)、その当時バンドの無かった僕は、彼らに惹かれ始めていた。自分の好きなモノがはっきりしていて、それを現実にバンドでやる!という素直でポジティブなところは、それまでのアタマデッカチな自分に欠けていたところだった。これでいいのか、と目を開かされたような思いが、した。

ただし、まだ同じサークルのなかの先輩・後輩、といった意識がお互いにあったのか打ち解けて話をするといったフンイキでは無かったようだ。今にして思えばその空白の時間が少し残念でもある。

 さて、もうひとつの出会いは、その頃僕のバイト先であった喫茶店でウエイトレスのバイトをしていた順ちゃん(仮名)との出会いだ。

同じバイト仲間であった酒井(仮名)の下宿でその頃はよく飲み会をやったりしていた。彼とは年齢が同じこともあって、酒を飲みながら色々な話をしたり悩み事を言い合ったりしていた。そんな席に他のバイトの女の子が一緒になることもあったのだが、順ちゃんは

a. 中卒で高校に進学せず、すぐ働きに出ていた
b. ちょっと不良っぽくてその当時では(一般人では)
  珍しかった茶髪だった
c. C大生の恋人が居て、頻繁に彼の下宿に入り浸っている、
  という噂があった、

、為なかなかそのメンバーに加わることは無かったのだ。必然的にあまりうちとけることも無く、他のバイト連中は遠巻きに彼女を眺めるというような格好だった。

ある晩、バイトがハネた後に何人かで酒を飲むことになった。そのとき珍しく順ちゃん(仮名)がついてきて、何か嬉しいことでもあったのか割と陽気に自分から話の輪に入ってきていた。酔払うサマが可愛い不良少女だった。よくよく考えると肩肘を張って大人達の間で仕事はしていてもまだ1●歳の女の子なのだ( 都条例に抵触する恐れあるため、自粛)。

ウィスキーのボトルが何本か空いたあたりだったか、それとも店が閉店時間を迎えただかで、酔っ払い集団は勢いで酒井の下宿に向かった(よくタクシー代が残ってたな・・・)。そこで本当に酔払っていた僕は撃沈してしまい、まわりでみんな・・・

といっても残っていたのは 酒井【仮名】とMちゃん♀19歳、と順ちゃん【仮名】だけだったが

・・・の話すのを訊いていた。そのうちに酒がきれたか、アルコールの入ってないものが欲しくなっただかして近くの自販機に再度買い出しに行こう・・・てな話になったらしい。勿論僕はぶっ倒れたままだ。で、何故か順ちゃん(仮名)が残った・・・。

僕「あれ、順ちゃん?!みんなは?」
順「大丈夫?今、酒井くん達がジュースとか買いに行ったよ」
僕「うーん、大丈夫、だと思う」
順「一人でボトル殆ど1本空けたもんねぇ・・、そんなにお酒強く無い
  のに、飲み過ぎよお」

酒井(仮名)の下宿は、母屋からちょっと距離のある、離れ、といった形態の部屋で、その窓から月の明かりがさしこんできていた。横になっている僕から見ると、順ちゃんの横顔を月光が照らしていて大層綺麗に見えた。それまで彼女を女性として意識したことが無かったぶん、この予期しなかった情景に少し狼狽した。深酒をしたせいだろうか喉がひどく乾いた。何か冷たいものが飲みたい。ふと横に目をやると、ちょっと距離のあるところにポカリスウェットの缶が見えた。手を伸ばせば届きそうだ・・・。

その視線を彼女も追っていたようだ。

順「あ、ワタシが・・・」

と伸ばした手が僕の手とぶつかり、支えを失った彼女の上半身が僕に重なった。

ごく自然に抱き合い、キスをした。衝動的、というよりむしろ突発的な出来事だった。

8月も終わりのことだった。まだ蒸し暑かった。夜も明けようとしており蝉の音がしていた。どこに行くあてもない、キスだった。そう、まるでワンナイトブルース のような・・・。

(多分、続く)


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