R&R Fragments

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自爆シリーズC

第14回
Re:
Smoke On The Water
From:
mack
Dated:
'01/07/12

ピップエレキバンド()の初舞台はこれまた学祭のステージだった。
# 高2の秋のことだ。

え?!ちょっと待て、この前結成してバンド名決めたばかりだろう?!とお嘆きの貴方、
この話のなかでは早くも8ヶ月あまりの月日が過ぎているのだ。8ヶ月といえば、
この世に生を受けた赤ん坊が、おかゆなどをもぐもぐと食べはじめ、そろそろ伝い歩きも始めようかというかなり感動的な月齢であるのだが・・・

このバンドについて言えば決して感動的でも、何かをやり遂げたわけでもなく、
要するに「曲は覚えたけど・・・」レベルで留まっており、当初から結束力・演奏力ともに進歩していなかった。

その訳を列挙してみよう:

・こーしん(仮名‐ドラム)こいつは兎に角、朝が弱かった。
だいたい我々の高校ではバンド練習は、朝4:00以降、体育館で、と決まっていたのだが、
朝わざわざ僕が起こしに行っても、一発で起きたためしがない。23回と、寝ているこいつを揺り起こそうとするのだが、当然の如くこの攻防に時間をとられ僕達の練習時間は段々と無くなっていくのだ。
たまに(寝る前にオ●ニーしたらしく)明らかにそれと判るにほいを漂わせて熟睡していることもあったが、潔癖な青少年であった僕は踵を返して独りで体育館に向かうのであった。

・あべちゃん(仮名‐キーボード)結局彼は自分で買ったにもかかわらず
シンセ( JUNO 6 だったけな)のconfiguを憶えきれなかった。
練習のたんびに「これどうやるんだっけ?」とまだキカイに強いいとうちゃんに泣きつき、その設定さえ前の日にやっておいてくれたら、あと2,3曲練習できたのに〜、と我々は歯噛みするのであった。
で、楽譜がないと音がとれない、という彼のタメに僕はわざわざ某プレイヤーから譜面をコピーしてあげたのだが、それを演奏できるまでにまた時間がかり、しまいには「キーボードの無い曲をやろうよ♪」と地味なヒトなりに地味な意見を口にするのであった。
(それってあべちゃん何するのよ?と聴き返す我々に彼は哀しげに微笑むばかりだった)

・いとうちゃん(仮名‐ベース)彼がキーマンだった。音楽的素養もあるし、ラーメン小池なルックスは、音がまとまらなくて険悪な雰囲気のときも我々の気持ちを和ませてくれた。
あえて難をいえば、彼は本職のピアノ(キーボード)のほうで、わきたたちのRCバンドに加入しており、スケジュールがタイトだったことくらいだ。
「あの曲、もう音採れた?」と聞くと、大体彼の答えは「今、サマーツアー(RCの曲)やってるから、その後でね」だった。
イイ奴なんだけど・・・、と僕は彼に器用貧乏の称号を進呈した。

・わきた(仮名‐ボーカル)バンドの顔であるボーカルにもかかわらず、練習に参加したのって確か23回だったのではなかろうか?その2回とも自分のやりたい曲だけを重点的に演り、ギターパートを勝手にアレンジし(彼はサイドギターもやっていた)しまいには 学祭 3週間前に「なんかつまんねー」とバックレた。
当然残された我々は憤慨したが、当時わきたはその学年の番長とホモ関係にあると噂されていて
我侭の限りを尽くしていたので、演奏力以上に腕力に自信の無い僕達は

ふざけんなよ

と小声でわきたに背中に向かって毒づき、あと3週間しかないのに代わりにボーカルを引き受けてくれるようなお人よしはいないものかと学内をさまようのであった。

mack(僕‐ギター)さてここまでメンバーの悪口を言ったのだ。
自分のことも書かねば片手落ち、というものだろう。
ただしあまり客観的に語る自信がないので事実の列挙に留めさせていただこう;

  - 僕達の練習を覗いていた下級生から「あの先輩なんかリズム狂ってるよな」と
   聞こえよがしに言われた。
  - 結局、ニールショーンのギター(ソロ)は全くといっていい程、コピーしなかった
  - メンバーにそれを指摘されると
   「ヒトのコピーなんかしてるうちはオリジナリティってのは生まれないのさ」と
   心のなかで呟いていた、そして情けないことに本当にそう思っていた
  - オーバードライブに加えて、コンプレッサーを購入し、
   「これで俺もフュージョンギタリスト」と固く信じていた。
  - 中学時代、ちょっと可愛いなと意識していた女のコとの文通にうつつを抜かしていて、
   どうやったら彼女をC葉の山奥にある当校の学祭に招待できるか、
   招待できたら寮の部屋に如何に連れこむか、
   その前に同室の奴等(4人部屋だった)を如何に外に追い出すか、
   コン●ームは次の外出日に買いにいかなければ
   でも学生服じゃやば(以下強制削除)というような妄想で頭を一杯にしていた。

・・・なんか強烈な自己嫌悪感に襲われてきたが、気を取りなおして話をすすめよう・・・

で、初ライブだ。


不安は色々とあったものの、兎に角自分のバンドでライブができるのだ。僕は張り切っていた。ステージ衣装をどうするか、メンバーと協議だ。嗚呼、昨年はそんなところまでアタマが全くまわらなかったのだ。今年の俺は違うぜ、と僕は心になかでガッツポーズをとっていた。(実力は全く進歩していなかったのだが)

結果、コンセプトをモノトーンに決めた僕達はそれぞれの衣装は個人の裁量で、という結論に落ちついた。当日、僕は白のジーンズにオフホワイトのジャケット(このジャケットは、3Fのツカダ-仮名-から強引に借りた)、こーしんはブラックジーンズに黒のTシャツ(この格好も冷静に考えるとローディーのようだが)とキメて現われた。

傑作だったのはいとうちゃんだった。彼はモノトーンを白黒のツートーンと勘違いしていて、上半身は原宿ブラックで売ってるようなヒラヒラのついたシャツ(黒)、ボトムはペラペラの白のパンツ、とニューロマンティックスのような格好で登場したのだが、そのアタマは見事に白のメッシュが入っており、いや、っていうか黒白ダンダラになっていてそれをご丁寧にもDEPでタテているもんだから死に損ないの鶏のようだ。

ダメだ、吹き出すのを堪えられない。
いとうちゃんはちょっと憤慨していたがそうこうしているうちに我々の出番だ。

今年は体育館に本格的にPAを導入し、ライティングまであるのだ。
結局、彼女は招待できなかったけど、せめて写真くらい送ってあげよう。
そのためにはカッコよくステージをこなすのだ!

一曲目は Keep On Runnin'だ!
こーしんのカウントにあわせて僕はイントロのリフを刻む、そしてブレークのあと、バンドは加速する。

と書くとそれなりに聞えるが、僕もこーしんも兎に角いとうちゃんの方は観ないように、観ないようにステージをすすめる。でもダメだ。ブレークの時や、ドラムのカウントを待つ間、どうしてもいとうちゃんが視界に入る。急遽ボーカルをお願いした、いさや(仮名)は完全にいとうちゃんに背を向けてる、そりゃそうだ、
あれが視界に入ったら、腸ねん転を起こして歌どころの騒ぎではない。

なんやかんやでアタマを真っ白にしながらステージは進行していく。

最後の曲だ、Smoke On The Water。イントロを弾くだけでも快感だ。この辺で漸く緊張(と笑いの発作)から解放されてきたのか、こーしんも歯切れのいいハイハットをきかせている。いとうちゃんは相変わらず死に損ないの鶏だがブンブンといいビートだ。この曲だけ、いさや(仮名)が声がでない、と泣きが入っていたため、僕が歌う。

We all came down to Montreux

そしてソロだ!この一瞬に僕は緊張とカタルシスの両方を覚えた。
去年、カズミバンドのステージでは得られなかったものだ。僕はアンプのボリュームをあげ、弾きまくった。気持ち悪かろうハズがない。
こんなに気持ちいいことを何で今まで知らなかったのだろう?!

そう思いながら、ステージを下りた僕は、ちょっとした虚脱感をも味わいながらも
これからのバンドに思いを馳せていた。

(後日談)
同級生に頼んで撮って貰った写真には殆ど、いとうちゃんが写っていて
逆上した僕はその殆どを破り捨ててしまった。
残ったうち「これはまぁまぁだな」と思ったものを 例の文通ギャルに愛のメッセージ付きで送った僕は、3週間後「そんなつもりで文通してたんじゃないの」という素っ気無い返事を貰い、玉砕した。かなり凹んだ。

(続く) 


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