R&R Fragments
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自爆シリーズA
第12回 |
Re: Child In Time |
From: mack |
Dated: '01/07/04 |
学祭が終わった・・・。
高一の秋のことだった。夏休み前に結成されたカヅミバンド(カヅミ・マツ・ヒデ・僕)は
早朝の体育館や試験休みの時には都内のスタジオで(それなりに)頑張って練習した。
もう、そのステージのことは遠い、忘却という霧の向こう側に隠されている。
こうやってこの文章を書いている現在だって霧のなかに仄かに見える、樹の翳や山の頂きを
こんな形だったっけ・・・
と想像で補いながら、頭のなかで構築しているに過ぎない。それは、再現不能な体験なのだ。
いや、随分と格好つけてしまったが、簡単に言えば、それだけの余裕が自分に無かった、
ということなんだろう。結局、曲のコード進行と構成を覚えきれなかった僕は
とりあえずステージにあがって堂々としてればなんとかなる!!
というカヅミのセリフを信じていたのだが自分の練習不足だけは(当然のことながら)
全くもってナンともならなかったし、途中から雨まで降ってきやがって、
カヅミバンドの 1stライブはいきなり
モッズ@伝説の雨の日比谷野音風になってしまった。
< びしょ濡れになった、という一点において、だけ、だが・・・
それ以外に特筆すべきことはあまり無い。
デイトリッパーのリードギターを任された僕が2小節も早くソロを終わってしまい、
残りの2小節の間かなり間が悪い思いをしたこと、とか
結局 イヤイヤながらコピーしたオフコースの曲でカヅミがギターソロを無音で通す、
という勇気ある行動をとったことぐらい、だ。
学祭の後は確か、期末試験が迫っていたように思う。
それなりに勉強もしていた僕は、『とりあえずバンドはお休み』にして期末試験の準備に集中した
(その頃は真面目だったものだ・・・)。
その結果、そこそこの成績をおさめた僕は、試験明けの開放感とともに冬休みがやってくる、という
期待感に心を躍らせていた。なんてったってクリスマスなのだ。
それまでに合コンでもダンパでもなんでも繰り出して彼女を作らねばならない。
そんな愚かな固定観念に完全に踊らされていた僕だったが
カヅミは親切にも(よく学祭のプレイをみて愛想をつかさなかったものだ)
「お、おい、次やる曲決めたぜ、ちょっと・・」と僕をまた誘ってくれた。
そのとき寮の階段でどんな話をしたかもう憶えてないのだが
「お、おまえさ、キーボードできないか? Under My Thumbでマリンバの音がやっぱり欲しくて、さ」
「こ、今度は子供バンドやるぜ!ビートルズなんかとは、ぱ、パワーが違うぜ」
と、カヅミ独特の熱い口調で語っていたように思う。
ただ、その頃僕は既に Deep Purpleに傾倒していて Smoke On The Waterのソロをたどたどしかったが何とかコピーしつつあった。
で、やっぱりハードロックバンドにはギターは独りなのだ!という固定観念で
凝り固まりつつあったのだ
(ここまでの文章を読み返してなんてアタマでっかちな高校生なんだろう、と今では思う)。
しかし、こんなにも熱いカヅミの誘いを断ることなんてその頃の僕にはできなかったし、
今でもできないだろう。
< 今カヅミが近くにいてまだあれだけの熱意を持っているのなら
僕は何をさしおいても一緒にバンドをやりたい。
僕は、また何となくカヅミバンドの体育館での練習に参加することになったのだが、
その練習に(確か)マツが来なかった。
放課後に行われた練習だったから、多分補習かなにかで来れなかったのだろう(笑)
ベースはいない、曲は覚えてない、しばらく練習していないから音が合うはずも無い・・・。
しまりの無い練習を終え、言葉少なく体育館から寮の部屋に戻る道程で
これもまた、何とはなしに、カヅミバンドは空中分解した・・・。喧嘩したわけでもなく、
はっきりとした話し合いがあったわけでもない。
いや、多分僕は態度で(このバンドに居るより、独りでギターを弾きたい)と現していたのだろう。
それをカヅミやマツが感じとって、わかってくれたのだろう。
寮の部屋に戻った僕は、まだ夕食の時間まで間があるのをみて、
2段ベッドの下段(そこが僕の場所だった)に寝転がり ウォークマンを耳にあてた。
あ、今日の夕食はカレーなのか・・・。1階の食堂から自室までカレーの柔らかい匂いが
漂ってくるのを感じながら、ウォークマンの再生ボタンを押しこむ。
リッチーブラックモアの火を噴くようなギターフレーズが聴こえてきた。
「これから自分でバンドをやろう」
「よくわからないけど、ハードロックをやってみよう」
「その為にはもっとギターも真面目に練習しなきゃダメだ」
カヅミと離れた僕は、まだ R&R LIFEの入口に立ったばかりだった。
テープは 24Carat、
曲は Child In Time、だった。
(続く)