8. 質問の意味
 
何様だこの野郎。愛川さんに向かって、しかも知り合った次の日に彼氏がいるかどうかを聞くなんて。そんじょそこらの男には真似のできない芸当である。このメールに対し、彼氏がいると答えれば奴にそれなりのダメージを与えることができるのだが、それではこれからのメールにお互い身が入らなくなるだろう。かといって、全くいないと答えてしまうのは愛川さんのイメージダウンに繋がると考えたので、
【彼氏は今いないんですよー。昔はいたんですけどね・・・】
 うん。これはいい。早速星也に送ろうとしたが、なんかちょっと物足りない。そこで少し付け足してみた。
【それじゃあ高橋君は彼女がいるのかなぁ??】
 語尾につけた。軽い挑発である。いや、むしろ男同士の本気の口喧嘩にも登場しそうな勢いの内容である。 私はこのメールを星也に送る。つまり、
   私
 ↓  ↑
星也(愛川さん)
 ↓  ↑
 高橋君
 という形になる。多少面倒くさいが、より確実に仕事が行える。
 星也からのメールがきた。急いで目を通す。すると・・・
うん、いるよ!二年生だよ。】
 ・・・。言葉が出なかった。読者の皆さんも冷静になって考えていただきたい。彼は愛川さんに「彼氏がいるのか」と聞いた。この時点で彼は少なからずとも愛川さんに好意を持っているものと考えられる。なのに彼は彼女がいると答えたのだ。これからのメールに支障が出てもいいのか!?
 このメールを見てちょっぴりやる気をなくした私は、星也に適当に送ってもらうことにした。彼は語彙力だけは人一倍すぐれているので大丈夫だろう。
 まさかとは思うが、彼は彼女がいることを愛川さんに自慢しようとしたのだろうか?それだったら救いようの無いアホである。この日の寝つきは悪かった。
 
 次の日。学校で私と星也は二つに分かれ、高橋君の今までの偉業を事細かに学校中に広めた。だがまだまだである。彼への仕打ちは始まったばかりだ。
                                  9へ続く

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