9. 花火大会へ
 
ある日の学校。私の担任は千葉県出身である。それを知っている高橋君は
「先生、柏市って知ってる?」
 と言っていた。笑いを必死にこらえた。また、彼は自分が愛川さんとメールしていることを自分で言いふらしているらしい。彼の前の席の白石君が私に密告してくれた。もはや学校全体(主に男子)が高橋君の敵といった感じであった。
 そんなある日、私は白石君から驚くべき事実を耳にする。
 なんと高橋君が別れたのだという。(ちなみに彼の彼女は目が大きいという理由から、白石君は「デメキン」と呼んでいた)当然このチャンスを逃すわけにはいかない。だがいきなりアタックしてもよろしくないので、少しずつ近づいていくことに決めた。だが、彼から予想外のメールが来るのであった。そのメールとは
【こんちは。実は俺別れちゃいました。まぁ俺が悪かったんですけどね・・・(中略)わざわざ聞いてくれてありがとね!これからもよろしくね!】
 いや、こちらからお近づきメールを出す手間が省けたので、逆に私達から君に礼を言いたい。ところで、わざわざ聞いてくれてありがとうと書いてあったが、強制的に聞かされた(見せられた)も同然なのでこれには異様に腹が立った。そして最後は妙にハイテンションである。結局このメールは「後輩とは別れたけど、別に俺は本気じゃなかったし本当に悪いのはむこうだし、女なんて君をはじめ俺が一声かければ付き合ってくれるから、俺からの上っ面のくさい文章にいちいち感動して、最終的に俺の女になってくれるまでよろしくね!」と私達は解釈した。あながち間違いではないと今でも思っている。
 このメールに対して返信はしなかったが、次からは積極的にアピールできるようになった。ありがとう、デメキン。そして花火大会の日は刻一刻と近づいてきた。そこで
【久しぶりです☆高橋君も大変ですね・・・その気持ちよくわかります。で、代わりといってはなんですけど・・・花火大会一緒に行きませんか??】
 素晴らしい文章だ。
【希も(←呼び捨て!?)わかってくれるか。花火大会全然OKっすよ!行きましょう!】
 なんか本当に高橋君はすごいんだなぁと思ったメールであった。なんなんだ、「わかってくれるか」って。お前さんはリストラされた中年野郎かい?いきなり呼び捨てになっている点もナイスである。花火大会も全然OKということだ。さすが期待を裏切らない男、高橋。
【ホントですか!?じゃあ私が高橋君の所まで行きます!どの駅で降りればいいですか?】
 このメールに対し、彼は両国駅に7時に来てくれと送ってくれた。わかりました、楽しみにしてます!ってことで切り上げた。
「両国に行くの?」
「行かなきゃだめだろ。これは絶対おもしろい」
 一体この先、高橋君はどうなってしまうのか!!
                     過剰なまでの引きで10へ続く

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