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『ネイキッドセルフ』リリース後に、一度は決まったザ・ザの来日公演も中止になってしまって、非常にショックだったのですが、再来日の可能性はありそうでしょうか?

Matt:どういう事情かっていうとさ、前回も予定には入っていたんだけど、日本に行くならオーストラリア経由でっていうのがあって、オーストラリア・ツアーはもうブッキングされていたんだよ。その収入で日本にも行けるっていう考えだった。その時点ですでに相当な持ち出しになってはいたんだけどね。ともかくオーストラリア、日本、それからイスラエルほか幾つか中近東の国へとツアーしていこうっていうアイデアだった。そしたらオーストラリアのプロモーターはオリンピックの期間中に大赤字を出したんで、僕らのツアーを全部キャンセルするって言ってきたんだ。それでこっちは結局、奴を訴えて損失をカバーしなきゃならなかったんだけど……ともかくオーストラリアに行けなくなってしまったんで、来日も流れざるをえなくなってしまって。そうした事情がちゃんと日本のみんなに伝えられていればいいなと思っていたんだけど、そこまでは伝わらなかったろうね。こっちも、すごくがっかりだった。

今後、日本には来ていただけそうでしょうか?

Matt:そうしたいなとは思ってるんだよ。

正直、メジャーなレコード会社のバックアップがないと大きな会場でのライヴは難しそうです。かといって小さな会場だとギャランティーをペイできません。ここは一つ思い切って、まずあなた独りがアコギ1本持って来日し、ザ・ザ顕在をアピールしていただくしかないと思うのですが、ダメですかね?

Matt:あはは、悪くないね。ただアコースティック・ショウっていうのは好きじゃないんだ、どうも。今年の後半ツアーすることになっていて、そこでは規模縮小を考えてる。たぶん僕ともう一人のミュージシャン、そしてフィルムを流すのが担当の3人目のメンバーと。そういう感じになると思う。メルトダウンはその試験的な場なんだよね。

メルトダウンのようなイベントやフェスなどにあなたが参加することって、珍しいことかなとも思ったんですけど、どうして今回は出ようと思ったのでしょう?

Matt:デヴィッド・ボウイが個人的に僕たちを指名してくれたから、こりゃあ受けようじゃないかと。でもフェスは以前に出たことがあるんだよ、ちょこちょことね。ま、その時期に何をしてるかによったりするんだよ、スタジオに入って曲を作ってる最中だったら離れられないし。今回のメルトダウンはちょっと異例なんだ。今は僕はツアー中ではないし、今回のショウのために特別なものを企画するっていうことになる。結果がどうなるか、お楽しみというところだね。

さて、あなたが昨年9月11日のテロ事件について考えたことは、公式サイトにアップされていた声明で、だいたい把握したつもりなのですが、その後の予想された通りの世界情勢の展開を見ながら、自分の頭の中には“アーマゲドン・デイズ(アー・ヒア・アゲイン)”が流れ始めてしまいました。世紀末も過ぎたというのに、この「キリスト教vsイスラム教」の最終戦争を描いた自分の歌が予言的な意味合いすら持ち始めてしまったことについて、どのように受け止めていますか?

Matt:うーん……そうだな。時事情勢とかその手の事柄についていろいろ読んでる人なら誰でも、9月11日の事件は単発的な出来事じゃないんだってわかってると思う。真空の中で起きたわけじゃない、歴史をはるか遡ったところから来てるんだ。でもアメリカの大半の人々は、あの国のどうしょうもない報道状況のせいで、国外の事情について実に無知なんだよね。だから突然あの事件が起きたという感じになって、どうしてだ?なぜ自分達の身にこんなことが??っていう考え方になってしまう。僕に言わせたら、もっと早く起きなかったのが不思議だっていうくらい不可避な出来事だったよ。周囲の世界のことも気にかけて目を向けていさえしたら、どういうことが起こっていくか見抜くのは何も難しいことじゃない。“ハートランド”だってアメリカ文化帝国主義について歌っていたわけだし。自分が今いる歴史の一地点に立って、ここに至るまでの過去に目をやり、ここから先の未来がどうなっていくか考える、これはみんながもっとした方がいいことなんだ。そうすれば、歴史のコースを変えることもできるんだから。そろそろみんな知っていい頃じゃないのかな、自分たちの背後で何が起こっているのか、自分たちの政府は何をしているのか……。うん、だから、僕は悲しいよ、起きてしまった事件については。そして、“ハートランド”で言ったようなイギリスのアメリカ化が更に進行し、もう独自のアイデンティティが全然なくなってしまって、一体どこへ向かっているのかもわからなくなってるっていう、そのこともまた悲しい。そういえば聞いた? つい最近、イギリスのTVを統制解除しようっていう法案が出たんだぜ。要するにこれってどういうことかっていうと、アメリカがイギリスのTV局を買い取って動かしていけるってことなんだ。耳を疑ったねもう! この手の統制解除は次から次へと起こってきてる。ものすごく、腹が立つんだこういうの。だけど、誰も気にしてもいない。今から20年後に気がつくんだよ、あの時我々は一体何をしてしまったんだって。水道はフランスの運営、TVと電気はアメリカの運営、鉄道は……。

ああ、そしてパブは日本が運営してるという……。

Matt:そうそう、イギリス中の6000軒のパブは野村證券グループが買い取ったんだぜ! 一体みんなどうして平気なんだろう、無知なのか馬鹿なのか……。歌を書きながら僕が思ってたのはそういうことだった。何故誰もこれから起こることに気がつかないんだ!?って。で、それが現実化するとみんな「どうしてわかったんだ?」って聞く。でも僕にはあまりに明白なことだったんだよ。けど人って、遅すぎる時になるまで物事に気づこうとしないんだよね。そう、だから、あれは予言じゃなくて常識だよ。僕に言わせればね。

分かりました。ところで前回インタヴューしたときにイギリスの音楽シーンはレイヴによってダメになったというような話になったのですが、覚えてますか?

Matt:えーと、実際にどう言ったたんだっけ。ダンス・ミュージックね……そりゃレイヴ・シーンとともに面白い音楽はいろいろ出てきたけど、僕はレイヴ・シーンには興味もてなかったんだよな。音楽をダメにしたとは思わない、でも路線を変えたね。突然ダンス・ミュージックが主流になってソングライターというのは端に追いやられた。いいんだけどね、そういうサイクルは定期的にあるものだと思うし。僕も今はもう少し、そのへんは許容できるようになったかもしれない。脅威だとは感じないし。でもエクスタシー文化って、サム・ビザールの連中はみんな80〜81年ごろにさんざん経験してたものなんだよね。他の連中よりずっと先に。だから一般化して普及したころには僕なんかは飽きちゃってたってのもあって。

なるほど。ただ音楽的なことでいえば、ダンス・カルチャーの興隆は後退したロックに新しいビートをもたらす新鮮な刺激になった、という意見もありますよね。

Matt:んー、とも言えるけど、そうとも言えない。だってあのファンキーなドラムのバック・ビートって、出てきたら誰もかれもが使い始めただろ? クローン製造みたいな状況だよ。ヒップホップだって、ドラムンベースだって、いつもそうなってしまう。僕の眼には、半ダースほどの発明家と1万人の物まね野郎って感じで。何聴いても同じに聴こえて退屈したよ。

ブレイクビーツやトランスといった新しいリズムに全く興味はないのでしょうか?

Matt:いや、っていうか僕の初期のアルバムを思い出してもらえばさ、『バーニング・ブルー・ソウル』なんかで人より先にその手のテープ・ループを使ってたわけだし。その後そういうのから離れていったけど、エスニック・パーカッションのループとかさ、いろんな珍しいリズムに興味あったよ、すごく前はね。でも……いや、たしかにすごく面白いものも巷にあるし、何もかも否定するつもりはないんだけど、一般的に右むけ右的なメンタリティが全然面白く感じられないんだ。

実にあなたらしい意見だと思います。ところで、ご家族はお元気ですか?

Matt:元気だ元気だ。息子は5つになったし。いい子でね、離れてるとつらくなるよ、いつも。

お子さんも大きくなってくると家庭というものが人生の多くを占めてくる事になると思いますが、そのことが創作活動に影響することがありますか?

Matt:あると思うんだけど、意外な具合に影響してるっていうのかな。最近の僕が書いてる曲はわりとメロウでメロディアスな曲調のものが多いんだけども、これって言葉では表現できない部分が音楽そのものに表れてるんだと思うんだ。そうだね、影響はすごくされてる。無条件の愛っていうのかな、それは昔の僕は知らないものだった。子どもに対して感じる愛情っていうのは、友達やパートナーに対して抱く愛情とは明らかに別種のものなんだね。で、子どもに抱く無条件の愛っていうのは、たまにだけど、どういうわけだか、地球に対して無条件の愛を感じるという方につながっていくんだよね……(笑)……。

なるほど。ちなみに最近聴いてる音楽はどんなものですか?

Matt:日本の音楽だよ。尺八の音楽。

へえー。どうしてまたそんなものを?

Matt:いや、ニューヨークでいつも行く韓国系のスパでかかってて。オーサカっていうスパで、実は日本人がやってるわけじゃないんだけど(笑)。座って冷たい水と熱い湯を交互に浴びて、スチームに入って、シャワーに入って、それから寝転がって背中を上へ下へと歩いてもらう。指圧マッサージだよ。最高なんだ。ああ、今ここにあったらいいのになあ。

(笑)。

Matt:でね、そこでいつもかかってるCDがあって。『ミュージック・フォー・ゼン・メディテーション』っていうんだ。トニー・スコットって知ってるかな? 60年代にアジアを横断して日本にも長くいて琴や尺八の音楽を録音した人なんだよ。とても美しい音楽で、思わず買ってしまった。それ以来ずっと聴いてる(笑)……。あと、アベル・パートっていうアストニアの作曲家の音楽とかね。かなりメロウで平和で内省的で物思いに耽ったような音楽が好きだね、今は。ギャアギャア叫ばれるようなやつはちょっとね。

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