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そうでしたか。では“Japan Trees”ですが、どうしてこういうタイトルになったんですか?

Yva:「日本の木」っていうのは日本のことわざの「猿も木から落ちる」から生まれたアイディアなの。これってわたしがアメリカに移住してきて英語学校に通ってた時に聞いたフレーズなんだけど、クラスメートに日本人の子も大勢いて、ある日の授業でいろんな国のいろんなことわざについて話し合ってた時に、逆に世界共通のことわざという話になって、特にこのことわざは言い方は違ってもどの言語でも存在するという結論に達したの。そんなわけで、ずっとこのフレーズが頭の中に残ってて、しかもすごく意味深い言葉だったから、そこから曲を書くことにしたのよ。いつもそうなんだけど、わたしが書く歌詞のほとんどはかなり象徴的で、必ずしも字義通りに解釈できないの。唯一の例外は“Ode to Dolly”で、わたしたちドリー・パートンがマジで大好きなんだけど、それ以外の曲は言葉通りの意味で取ることはできないのよ。どの歌詞も、世界で起きていることのメタファーでしかないんだから、っていうか「世界」じゃなく「わたし」の周りで起きてることね。わたしは全世界のことを歌ってしまうほど傲慢な人間にはなりたくないわ(笑)。だから、単にわたし自身の生活の中で起きてることや、わたしがよく知っていて愛している人たちに起きていることね。

歌詞の内容は薬物依存の否定がテーマになっているような気もしたのですが。

Yva:んー、そういうテーマではないと思うんだけどな。今も言ったようにわたしの歌詞はすべて何かのメタファーになってるから。だからこの曲も人生に目的も何も持っていないということのメタファーであって、ドラッグとは関係ないの。そもそもわたしはドラッグの世界に住んではいないもの。ただ、そういう書き方をすることですごく強烈なインパクトを出せるのは事実でしょ。ドラッグがあらゆるところではびこっているこの時代、この世の中に、実際わたしも生きてるんだから。

“Fetch”も僕には麻薬のことを歌っているように聞こえたんですけど……。

Yva:ゴホッ、ゴホッ! アハハハーノー、ノー! 全然違うわ。“Fetch”は100%純粋なラヴ・ソングよ。ガールフレンドに捧げた曲なの。

なるほど。あのー、ちょっと話が戻るんですが“Poor Kitty”はある女性のことを歌っているということでしたけど、それは女性の視点からその人について歌ってるんですか? それとも男性の立場から歌っているという設定なんでしょうか。

Yva:もちろんわたし自身女だし、女性の視点で歌ってるわ。男の気持ちを想像しながら歌うのは大変だろうと思うし。

そうですよね。わかりました。では次に、曲作りのプロセスについて教えてほしいんですが、バンド全体で一緒に取り組まれることが多いんですか?

Krist:ほとんど一緒だね。イヴァがヴォーカルのメロディとリフを思いついてそれをバンドに持ってきて、それを全員でいじくりながらそれぞれのリフを考えてくって感じで、だからちょうど挽き肉機と同じだよ。ラフなアイディアを機械に入れてハンドルを回してると、出口からスウィート75の曲が出てくるってわけ。どの曲もすごい時間をかけてるんだぜ。普段通りの俺たちの味が出ている正しい音が手に入るまで、何度も通しでプレイしながらいろんなことをトライするんだ。

ちなみに、R.E.M.のピーター・バックが参加しているトラディショナル・ナンバーの“Cantos De Pilon”で、クリストはアコーディオンを弾いているそうですね。

Krist:ああ、すごくおもしろかったよ。ピーターがマンドリンを弾いて、イヴァがヴォーカルとアコースティック・ギターを担当して、ビルもピアノを弾いてるんだけど、とにかく楽しい経験だった。ピーターがスタジオに来てくれて、何度か曲をプレイして3〜4テイク録ってみて、その中からベストのテイクを選んだんだけど、生録のすごくフォークっぽいサウンドになっててとても良かったんだ。で、そこにイヴァがバック・ヴォーカルを加えて、ドラムもちょこっと入れて、それで完了さ。すごくベーシックでピュアなサウンドに仕上がってるだろ。

そういえばMTVのアンプラグドでヴァセリンズのカヴァーをやった時もアコーディオンを弾いてましたよね。一体いつ習ったんですか?

Krist:子供の頃はずっとアコーディオンをプレイしてたんだよ。でもブラック・サバスはアコーディオンではプレイできないとわかってエレクトリック・ギターを手に入れたというわけ。

スペイン語で歌われる“La Vita”は、これはまたちょっと毛色の変わった曲ですが、人生を達観したかのような歌詞になっていますね。実際にはどういった意味合いの曲なんですか?

Yva:あの曲は18の時に書いたものなの。18歳つまりティーンエイジャーの頃って、すべてのものが絶望の源になるでしょ(笑)――“人生なんてつまらない”ってね。だからあの曲も、人生の悲しみとそれでも生き続けなきゃならない自分、みたいなことを歌った寂しい曲なの。

そんな曲を18歳で書いてしまいますか。

Yva:そう、18歳でね(笑)。だけど自分は何でも知っていると思ってしまうのが18歳でしょ? あの齢でもう老いくたびれたと思ってるんだから(笑)。

で、この曲のホーン・アレンジを、あなたたちは“パワーラウンジ”と呼んでいるそうですね。

Krist & Yva:そうそう(笑)。

どうしてそんな呼び名がついたんですか?

Krist:今アメリカではラウンジ・ミュージックのリヴァイヴァルが起きていて、あの曲のホーン・セクションもどことなくラウンジ・ミュージックを思い起こさせる音なんだけど、一方でへヴィなリフが満載のスウィート75ならではのパワフルな曲に仕上がってるだろ? パワフルな音楽とラウンジのハイブリッドっていうかね。ホーン・セクションのアレンジをやってくれたのは、タワー・オブ・パワーと仕事をしてたグレッグ・アダムスで、彼自身もプレイしてくれたし、あとテレビのトーク番組『トゥナイト』の専属バンドからも人が来てくれたし、しかも司会のジェイ・レノ自身までがホーンをプレーしてくれてるんだ。

そしてハーブ・アルパートまで参加していると。

Krist:最初はほんの冗談のつもりだったんだぜ。あの曲でソロ・パートをどうしようかってことになって、でもギター・ソロを入れるのは嫌だったから、俺が冗談めかしでふと「ハーブ・アルパートを呼んでトランペット・ソロをやってもらおうぜ」って言ったんだよ。そしたらプロデューサーのポールが「それいいじゃないか」って言い出して、たまたまエンジニアのエド・ザッカ−が、ハーブ・アルパートの関係者に知り合いがいたもんだから電話で連絡をとってもらったんだ。あとゲフィンの会長のエディ・ローゼンブラットもわざわざ電話をしてくれてね。で、バンドのテープをハーブ・アルパートに送ったらすごく気に入ってくれて、あの素晴らしいトランペット・ソロを提供してくれたってわけなんだ。彼はアルバム全体にすごく貢献してくれたよ。俺たちも彼のような偉大なアーティストと共演できて、ほんと嬉しかったしね。あとあの曲には、スカイ・クライズ・メアリーのニサ・ロメロもバック・ヴォーカルで参加してくれて、彼女はブラジル音楽をやってた人なんだけど、レコーディングでも自分は何をすべきかをきちんとわかってくれていて、超最高のヴォーカルを残してくれたんだ。

それにしても、どうしてスウィート75にホーン・セクションを導入しようと思ったんですか? 2人とも当初から関心があったんでしょうか?

Yva:プロデューサーが提案してくれるアイディアに対して、わたしたちが常にオープンだったからよ。それにホーン・セクションを入れたあの2曲は、どちらもそうするのが適切だと思ったの。それに、たとえば“Dogs”なんか、ライブで3人だけでプレーする時はホーンは使わないんだけど、それはそれでずっとアグレッシヴな感じが出せるのよね。でもレコードでホーンを使ったことに関しては、2人ともすごく満足しているの。

プロデューサーにポール・フォックスを起用した理由は何だったんですか?

Krist:俺たちがプロデューサーを探していたちょうどその時に、彼はシアトルでスカイ・クライズ・メアリーのレコーディングをやってたんだ。で、ある時俺たちのショウを観に来てくれて、バンドのことをすごく気に入ってくれてね。それで俺たちも過去にポールが手がけた作品をいくつか聴いてみて、すごい感銘を受けたんだ。俺もずっと、いわゆる「ロック系」のプロデューサーと仕事をしてきたけど、ポールはまさにロック専門のプロデューサーだし、すごく強力な女性シンガーたちと仕事をした経験もあったし、それに今回のアルバムを聴き返すと、彼がバンドのサウンドにいろんな強弱を与えてくれているのがすごくよくわかるんだよね。だから彼は、スウィート75のサウンドに大きな影響を与えてると思うよ。特に彼はもともとキーボード・プレーヤーでもあるから、メロトロンとかピアノとかオーケストロンなんかを実際プレーしてくれてもいて、それが作品にまた違った色を与えてくれてるんだ。

「アルバムのリリースが今になってしまったのは、自分たちが満足できるものが完成するまで出したくなかったからだ」と言っていましたが、そのプロセスの中で自分のやりたいことが形になって見え始めたのはいつ頃だったんですか?

Krist:多分、1995年のある時期なんじゃないかな。

それは初めてのショウをやる前ですか、それとも後ですか?

Krist:えーと、前だったと思うよ。とにかく3人でプレイするのが楽しかったし、衝動を抑えることができなかったんだ。自分にとってやらなきゃならない義務のような気がしたんだよ。以前はずっとバンドでプレイする生活を続けてきたわけだから、バンドをやってない状態っていうのが辛かったんだ。音楽と必ずしも関わりのない活動は続けてたけど、俺はやっぱりミュージシャンだし音楽に取り憑かれてるし……だから、とにかく最高だったよ。

確かにクリストはここ数年の間、スウィート75と並行してJAMPACの活動をしたり、イギリスのチャリティ・アルバム『HELP』にコメントを寄せたりと、政治的なことにも参加していました。しかし、スウィート75は特に政治的なバンドにはなっていないようですね。政治的な主張をこのバンドでもやっていこうとは考えなかったんですか?

Krist:政治的な部分に関してはこれまでもずっと、音楽活動とは切り離して考えてきてるからね。タイムリーな政治的主張を取り入れた音楽を作るのは簡単さ。だけど何らかのアートをクリエイトしたい時というのは、自分だけの小世界、時間を超越した世界をクリエイトしたいと思ってるんであって、現在進行中の政治的な出来事を曲にしても、それが時間を超えて生き残ることはないと思うんだ。それに政治活動は俺が個人的に関わっていることであって……。一方、バンドっていうのは複数の人間のコラボレーションなわけだからね。それに、いろんな政治活動に参加してきたけど、どれも必要なことだから関わってきたんだ。たとえばJAMPACの時も、シアトルのミュージック・コミュニティが社会工学をやってる奴らの攻撃にさらされて、放っとくとあの素晴らしい共同体の存続が阻害されそうだったから、ミュージック・コミュニティ全体で反撃したんだよ。で、たまたま、俺がその反撃の指揮をとったというだけなんだ。でももちろん音楽を優先させなきゃならない時というのもあって、実際、音楽と政治の間にはどうしても相容れない対立点があると気付いた時に、優先順位を決めなきゃダメだと思って、それで音楽を最優先事項にしようって決めたんだよ。何故なら音楽は政治を動かすことができるけど、一方の政治は音楽に対してほとんど何の影響も持っていないからさ。

イヴァはクリストのそういう政治性についてどう評価していますか?

Yva:彼らの勇気には本当に敬服しているわ。だって自ら前線に立ってわたしたちみんなの権利を護ってくれてるんですもの。要するに彼がやってるのはそういうことなのよ。ミュージック・コミュニティーをケアしてくれているの。彼も言ったようにシアトルのミュージック・コミュニティは保守派の攻撃にさらされているし、だからクリストの勇気には本当に頭が下がる思いよ。他の誰もやりたがらないようなことをやってくれてるんですもの。

Krist:それにいろんな意味で、イヴァと俺って政治的スタンスが似てるしね。2人ともいろんなものに広く関心を抱いてるし、社会の持つ欠点もたくさん見てきてるし、いろんな問題を認識してるし……それに、他人を思い遣る生き方をしよう、正しいことをして生きようと思ってるしね。

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