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ロックの歴史の中での繰り返しというのがあります。パンクが出て来たのに、結局それがレコード会社を中心にした商業主義・資本主義に吸収され、その後ニルヴァーナが出て来たのに、オルタナティヴも結局、資本主義に吸収されてしまった。せっかく音楽的に新鮮な、意識の高い新しいバンドが出て来ても、結局そうなってしまうということに関して絶望して、暗い気持ちになってしまうことはありますか?

Brian:そうだな……。商業主義を嫌うことには矛盾が孕んでいることは知ってる。最終的にはバンドという商品を売ろうとしているんだからね。企業は嫌いだけど、自分の好きなことをやって生計を立てようとする個人が嫌いなのではない。ラジオ局や雑誌やレコード会社に勤めている人々を憎んではいない。スニーカーを売ってる人々を憎んでもいないよ。僕が憎むのは、搾取しようとする者たちだ。金が唯一のモチベーションである彼らは、自分たちの都合でたくさんの道をふさいでしまう。何と言うか……マーケティングが全てで、安全な方法しか選ばない。おかげで言いたいことが言えずにビクビクしているバンドがたくさんいるんだ。契約を切られたり、曲が放送されなかったりするのを恐れてね。結果、何もかもが中和されてしまっている。僕らは商業主義の世界に住んでいるわけで、資本主義的な思考様式から逃れるのは難しい。バンドをやること自体は簡単だよ。誰を傷つけることもなく、音楽を提供するだけだ。でも、レコード会社も他の企業と同じように合併を繰り返していて、彼らはアンダーグラウンドのバンドに投資する必要なんか感じていないんだ。ルックスのいい少年少女を5人選んで、マーケティングに金を注いで、エアプレイを操作すれば、商品は完成するからね。これではイノベーターたちを絶滅させてしまう。音楽はデンジャラスでなければいけないと思う。政府に向かって“ファック・ユー”と叫ぶような奴らが音楽をやるべきなんだ。均質化され、コマーシャライズされきったこの状況には恐怖を感じるよ。音楽的にではなく、ビジネスの面でね。問題はバンドや人々じゃなくて、企業の方だ。アメリカの帝国主義的な政府は、世界中の国々のいい所を破壊する。それぞれの文化の美しい面を、米企業が自由市場を通して踏みにじっている。あと10年もすれば、日本の経済も米企業にやられるだろうし、アジアやアフリカ、ヨーロッパの国々も帝国主義にやられるだろう。スニーカー、音楽、中性子爆弾、石油……どれも同じ事だ。金を生み出す商品に過ぎない。商品になってしまったら、自分自身というものがなくなってしまうんだ。

えーと、それでは、ライヴの会場で観客を見ていて、「こいつらに本当に自分の言いたい事が伝わっているのだろうか」というような疑問が湧いてきてしまうことはないでしょうか? 例えば、ニュー・アルバムに“ルーフ・オブ・ザ・ワールド”という曲があって、そこで「リトル・ボーイ/ファット・マン/エノラ・ゲイ」っていう言葉が出てきますが、今晩のショウに来る日本の男の子達に「これらが何のことか知ってるか?」と訊ねてみても、ちゃんと知っている子は半数にも満たないかもしれません。そういうことも含めて、観客にメッセージがどれだけ伝わってるかという事に関して、気にすることはありますか?

Brian:目標は千人に1人に理解されることなんだ。オーディエンスの半数を目標にしてはいないわけで、千人に1人以上ならそれに越したことはないよ。ロック・バンドが世界を変えることはできない。でも人々は世界を変えることができる。今までもずっとそうだった。少数派の人々が世界を変えてきた。僕はたまたまバンドをやっていて、バンド活動を通して自分の意見を表明する場が与えられている。僕らのメッセージがたとえ1人の少年にしか伝わらなかったとしても、ゼロよりはましだ。だからポジティブな事と言える。一滴の水が、大きな滝に繋がる。僕が読んでる政治の本の作家たちは、僕が読むことを想定して本を書いたわけではない。彼らは特定の読者数を念頭に置いてはいないと思う。メッセージは届く所に届くんだ。そして僕に届いた。僕は自分の活動の場を使ってなるべく多くのキッズにメッセージを届けたいだけだ。実はもう既に、君の指摘したその一節について質問してきた子たちだっているんだよ。

そうなんですか。

Brian:少し分かりにくいみたいで、逆に「何だろう」と思うらしい。哀しいことに欧米には、ホロコーストや原爆投下のことを知らない子供達さえいるんだ。投下されたのは君の国だけど、僕の住む地球でもあるんだよね(笑)。誰にも伝わらないかもしれないから、言いたいことを言うのをやめる、なんてことは僕にはできない。そんなのアパシーだ。表彰されたり褒められたり認められたりしたいからやってるんじゃない。同じ事をやってる人々は他にもたくさんいる。これから僕らのオーディエンスが広がろうと、逆に小さくなろうと関係なく、僕は言いたいことを言い続けるつもりだよ。ロンドンではライヴ会場で、世界の出来事についてのアンダーグラウンド・インフォメーションを配布してる。その多くはすぐにゴミ箱に捨てられてしまうんだろうけど、一万人に一人くらいは持ち帰ってくれる人がいるかもしれない。僕自身、こういった地道な活動をしてる人から知識を得たんだ。だから本当に……どんなプラットフォームも有効に使うべきだと思う。この雑誌(※取材を受けた日本のファッション誌)も含めてね。メディアは徐々に包囲されつつある。テレビ局はどんどん独占されてコントロールされていく。人々は歴史を短い映像クリップでしか知らされない。原爆は広島と長崎に投下されたけど、そこは僕の住む地球の一部でもある。広島の損失は、地球上の全人類にとっての損失だ。僕はここにいる資格があるし、君にはアイルランドに来る資格がある。なぜなら、皆同じ地球に住んでいるから。僕らを地球から追い出すことは誰にもできない。時の権力者がコントロールするための、国境と呼ばれる任意の境界線なんか無くしてしまえ、というのが僕の主張だ。キッズに伝えたいのは……歌が歴史の授業の役目をすることはできないだろうけど、少年を新しい方向に導く火花を、音楽がスパークさせることはできると思う。それがきっかけとなって、新たな学習をスタートさせたり、情報を探し始めたりする子は必ずいると思う。何事もひとつのスパーク、ひとつの言葉から始まるんだ。どの水滴も滝になりうる。いつか大きな滝になればいいんだけどね。僕は水滴の一つに過ぎないんだ。

こういう質問をしたのは、別にあなたをやり込めたいと思っているからではないんです。あなたから頼もしい言葉を聞きたいと思って、こんな質問をしてみました。

Brian:僕が思うのは、自分の人生哲学や政治信条を、同意する人間が多いことを条件に決めちゃだめだってことだ。それでは駆け引きになってしまう。新しいラジカルな思想というものは大抵マジョリティの考え方に反するものだ。キッズは娯楽を求めてライヴ会場にやってくる。ほとんどが政治に関心のない子供達だ。世間一般を見渡しても、ほとんどの人は政治的なものに興味がない。「一万人の愚者に対抗するのがたった一人であっても、その一人の方が正しい」と思う。くり返しになるけど、世界を変えるのは少数派だ。歴史上のどの革命を見たってそうだ。社会変革をスタートさせるのはいつでも一人からの少数派なんだ。例を言えば……アイルランドでは1916年にマイケル・コリンズが急進派を率いて、アイルランドの独立を宣言した。当時アイルランド人の多くはイギリスの文化に同化させられていた。そして、急進派に石を投げた。イギリスによる支配のため、アイルランド独自の文化というものがかつてあったことさえ知らない人が多かったんだ。だから新しいイデオロギーは容易に理解されなかった。今では義勇軍のことは歴史が認めていて、誰もがありがたく思っている。彼らは少数派で……大きな山に立ち向かった小さな小石達だった。世の中の全ての人たちがもっと政治に関心を持ってくれたら、とは僕も思う。でも、それは無理だ。だからといって、自分の信条が揺らぐことはない。僕がリスペクトし賞賛して止まないレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがやっていることは、僕らも手本にしていきたいと思ってる。バンドが大きくなるに連れて、僕らもいろいろな組織と関係を持っていきたい。既にアムネスティ・インターナショナルには賛同している。重要なのは、ムミア・アブ・ジャマルが処刑されないこと。キッズが会場でもらったチラシを紙飛行機にして飛ばすかどうかじゃなくてね。何のための闘いであり連帯なのか、が問題なんだ。僕らに何ができるだろう? イギリスではエメリン・パンクハーストが婦人参政権運動を起こした。彼女は自分の国の人々を敵に回し、世界を敵に回した。女性達はついに権利と平等を手に入れた。でも、未だに完全に平等とは言えない。世界中で、全ての国で、女性は男性と平等に扱われるべきなんだ。多数派が偏見に満ちて心が狭いからといって諦めてはいけないんだよ。

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