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わかりました。それから7日のライヴでは、あなたがギターで出したノイズがその場でサンプリングされてループになってましたけれども、あれはどういう風にしてやっているんでしょうか? 足元でやれることなんですか?

Omar:ああ、全部ペダルだよ。僕のギター・サウンドはみんなペダルで操作してる。だからあんなにたくさんあるわけで(笑)。

ループはライン6で?

Omar:そう。あれは本当に楽しんでやってる。単に音やノイズをループさせるだけじゃなくて、ギターで弾いたフレーズをループさせてそれにハーモニーをのせたりするのが気に入ってるよ。でもAXのショーでは集中力が散漫気味になってたんだよね。飛行機で移動してきたばかりで疲れててさ(笑)。

じゃあ今夜のライヴはもっと凄いのが期待できそうですね。続けて、生演奏中のサウンド加工に関してもう少し質問させてください。残念ながら亡くなってしまいましたが、マーズ・ヴォルタにはサウンド・マニピュレーターのジェレミーがメンバーにいましたね。彼がいた時のライヴでは、ライヴ演奏が第3者の手によって音響的な変化を加えられていたわけですが、それによってバンドの演奏に混乱が生じることはなかったんでしょうか?

Omar:ジェレミーがマニピュレートしてたのはヴォーカルの部分だから、僕には影響なかったよ。それとドラムの音も時々やってた。でもほとんど、ヴォーカルとサンプリングが彼の担当だったんだ。以前のライヴと今のライヴの違いは、まさにそれなんだけどね。初期の頃、去年の3月以前に僕らのライヴを観た人だったらわかると思うけど、ヴォーカルの処理とサンプルされてる部分がかなり変わってる。今でもディレイをかけたり、セーブしてあったサンプルを幾つか使ったりはしてるけど、でもジェレミーがいないから……。彼は狂人だったからね。ヴォーカル部にいろんな組み合わせのエフェクトをかけて、豊かでクレイジーなサウンドにしてくれてたんだ。曲間と曲中のサンプル部を作ってくれてたのも彼だし。当時のライヴの大きな部分を占めてた要素が、彼のいなくなった今は欠けてるんだ。でも彼の死後、不思議なことに彼のエネルギーがバンドに浸透したかのようになって、プレイの仕方が変わったんだよ。彼のいない分を埋め合わせるように、彼の仕事の記憶をたどりながら、違った演奏をするようになったんだ。うん、昔の演奏を聴いたことある人なら、すごく変わったと思うだろうね。

ちなみに、以前のバンドメイトだったポール(現スパルタ)が代役をやるという噂も聞いたんですが、その真相はどういうことだったんでしょうか?

Omar:いやいや。一時的に手伝ってくれただけだよ。ジェレミーが亡くなってすぐのツアーはキャンセルして、その次のツアーではポールがサウンド・マニピュレーションをやってくれたんだ。ごく短期間やってもらった後、彼はスパルタに戻って活動してる。なにもかもが突然のことだったから、誰かの手を借りる必要を感じて、彼に手伝ってもらったんだ。

なるほど。今後的にも替わりのメンバーが入ることはありえないのでしょうかね?

Omar:ゆくゆくは誰かにやってもらいたいとは思ってるよ。でも難しいんだよね。とてもデリケートな役割なんだ。フェミニンな仕事だよ。細かい配慮と鋭い美的感覚が必要だからさ。誰にでもできるってものじゃないんだ。常に周囲に耳をそばだててるソフトな性格の人じゃないと務まらないと思う。

わかりました。一方で、今回のツアーではあなたの兄弟がパーカッションとして参加していますけども、どういう経緯で参加が実現したのか教えてください。

Omar:実は、しばらくパーカッショニストを探してたんだよね。でもこのバンドに合う奴っていうと難しくて、なかなか決まらなかったんだ。性格もプレイも合わないとやっていけないしさ。そしたら、自分でも、なんでもっと早く気付かなかったのか不思議なんだけど、ある日、親父に「Marcelはどうだ?」って電話で言われたんだ。Marcelは親父のサルサ・バンドでパーカッションを叩いてたんだよ。エル・パソでは幾つかのバンドでプレイしたこともある。だからそう言われた時に「なんだ、ちょうどいいじゃん」ってね。このバンドのメンバーを捜すのは本当に難しいんだ。ある種のタイプの人間じゃないと合わないから。

アルバムが完成してみて、ツアーでのパーカッショニストの必要性を実感した、という部分はありますか?

Omar:あー、アルバムの前からパーカッショニストが欲しいと思ってたよ。アルバムを作り始める前から、リズムをかなり強調したリズム・セクションにする、っていう考えはあって、サルサのオーケストレーションに近いようなものを望んでたんだ。でも、パンク・ロックのバックグラウンドがあって、サルサのパーカッションのように叩けて、手っ取り早く稼ぐことだけを考えてるセッション・ミュージシャンじゃない奴で、本当にハートからこの音楽を一緒にやってくれる奴を探してたから、なかなか見つからなかったんだよね。

なるほど。ところで、あなたたちがライヴで爆発させるエネルギーをスタジオ作品でどういう形でまとめるかというのは、すごく難しい作業だと思うんですが、自分たちの音楽をレコーディングする時に、どういうアプローチを心がけますか?

Omar:んー……隔離状態を作る(笑)。世間と断絶してレコーディングする、っていうのが大きいかな。ほとんどのバンドは友達をスタジオに呼んだりして、リラックスした雰囲気でレコーディングするのが好きみたいだけど、僕らの場合はものすごく緊張感を大切にしてるんだ。ダークな雰囲気で真剣にやってる。もちろん笑いもあるけど、プロジェクトに関わりがない人物はスタジオに入れない。スタジオで具体的にすることがある者だけがいるようにしてるんだ。そこにいる目的がない人のエネルギーは邪魔なだけ、っていう考え方でね。そういうエネルギーは、レコーディングが終わってから発揮して楽しめばいいんだから、レコーディング中は必要最小限の人数でやることにしてるよ。例えば僕のギターのパートは、僕とエンジニアだけで録音してるんだ。なかなかハードなことでもあるけど、それと同時に、爽快なことでもあるんだよ。疲れるまで思い切り泣いた後って、気分がすごくすっきりするだろ? すべてを出し切った後だからね。リセットされて再出発できる気持ちになる。少し何か食べて、眠ったら、次の日は気分が良くなってるんだ。それとよく似てるよ。

わかりました。さて、では、これまでにあなたが最も影響を受けたミュージシャンを挙げるとしたら誰になるでしょうか?

Omar:それは間違いなくラリー・ハーロウだね。ファニア・オールスターズのピアノ奏者なんだ。ファニア・オールスターズは僕の祖国であるプエルトリコの最高のサルサ・グループだよ。なぜ最高かというと、それぞれ違うバンドから最高のミュージシャンたちが集まっているからなんだ。ベースもコンガもピアノも、みんな最高レベルの人達でね。プエルトリコでの子供時代、僕はラリー・ハーロウを見て、彼のレコードを聴いて育ったんだよ。まあ、僕のピアノは真似事程度だけどね。何故かギター・プレイヤーになっちゃったから(笑)。

ギタリストとしてはどうなんでしょう。誰か特に影響されたギタリストはいませんか? 例えばジョン・フルシアンテとか。

Omar:ああ、彼にはホントにインスパイアされるけど、影響を受けるっていうよりは、良い友達っていう感じなんだ。音楽よりも、つき合いの中でインスパイアされることが多いね。実は、ギターの面でも一番のインスピレーションと言えるのは、やっぱりラリー・ハーロウなんだよ。ピアノなんだけど、僕には何故かギターとして聴こえるんだよね。あえてギタリストに限って選ぶとしたら、シド・バレットになるかな……あるいは彼のように、音楽の正式な勉強をしてないミュージシャン。僕も音符や音楽理論のことは全くわからないんだけど、彼のアプローチがいいと思えるのは、彼もそういうことについて知らなかったからだね。

ちなみに、ジョン・フルシアンテの新しいソロ・アルバムに参加してるそうですね。どうでしたか?

Omar:うん。2曲ほど参加させてもらったんだけど、最高だったよ。すごく気楽にやれた。お互いのアルバムのレコーディングに関わる度に、すごくリラックスできるし、簡単にできるんだ。お互いに何をどんな風にやればいいかが完璧にわかってるみたいなんだよね。

そちらも楽しみです。さてここで、歌詞についてもちょっと質問させてください。セドリックが書いているわけですが、非常に難解で、歌詞カードも付いてないから日本人には内容が把握しづらいんですね。で、例えば内容について彼がメンバーに向けて説明したりするようなことはあるんでしょうか?

Omar:テーマ的なこととかはみんなで話し合うよ。でも、僕が作曲するのも独りでプライベートな環境であるのと同じく、彼が歌詞を書くのは彼のプライベートな時間なんだ。以前はジェレミーと2人で歌詞を書くことも多かったんだけどね。大抵は、主なテーマをバンドで話し合って、曲のコンセプトとかガイドラインになるものをはっきりさせてから、メンバーそれぞれが思ったようにプレイしていく。セドリックは歌詞を練ることにものすごく神経を注ぐし、僕は彼のコンセプトに合わせて音楽とプロダクションを形作ることに全神経を注ぐんだ。

わかりました。では最後に、今後マーズ・ヴォルタの音楽をどういう方向に進めていくのか、何かヴィジョンとか、考えていることなどがあれば教えてください。

Omar:次のアルバムのレコーディングは、2月の終わりにはもう始まる予定なんだ。まずビッグ・デイ・アウトでオーストラリアを回ってから、そのままオーストラリアでレコーディングを始めるつもりだよ。すでに曲はたくさんできてるし、アイディアもたくさんある。やっとファーストの曲から離れられることを、僕らみんな楽しみにしてるよ(笑)。

サウンド面で変化があるんでしょうかね?

Omar:そう希望してるよ。マーズ・ヴォルタとしての顔はそのままで、少し成長した僕らが見せられればと思ってる。バンドも人間と同じで、骨格が伸びたり、毛が生えたり、ちょっと大人になった姿になるはずさ。

プロデューサーは誰が勤めるのでしょう?

Omar:僕がプロデュースするんだ。

わかりました。ニュー・アルバムも、そして今日のライヴにも、ものすごく期待しています。

Omar:どうもありがとう。

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