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では次に、作品について質問していきたいと思います。デビュー・アルバムのレコーディング作業は実際にはどういった感じで進んでいったのでしょう?

Daniel:ああ、まずは自分達がどういう音を出したいか明確なヴィジョンを持っていたから、最終的にセルフ・プロデュースをしたんだ。ライヴとスタジオ内の僕ら、その両面を見せる形にしたかったのさ。最初のレコードを出した時にはアルバムを作ることは全く意識していなかった。その頃といえば、曲を作ったらライヴでプレイするって事の連続だったし、それこそがバンドの存在理由だったしね。そして実際にアルバムを作る段階になっても、ゴールは「僕達らしいサウンドを作る」という非常にシンプルなものだった。ギャレス・ジョーンズがレコーディングとミックスをして……あ、スタジオ内でのレコーディングはピーター・ケイティスがしてくれたんだっけな。で、ギャレス・ジョーンズにミックスをしてもらったんだけど、実際に出来上がった音を聞いてみたら、本来の僕らとは全くかけ離れたサウンドになってしまっていたんだ。ギャレスはニック・ケイヴやワイヤーといったバンドのレコーディングを手掛けてきた実績のある人で、いっしょに仕事が出来たのは素晴らしい経験だったと思うけど、まぁ、彼は僕らのライヴを見たことがないから仕方なかったのさ。そんなわけで、それをそのままリリースするのには違和感を感じて、もう一度スタジオに戻ったんだよ。で、普通のバンドの場合、メンバーの誰かがサウンドに対する決定権を持っているんだろうけど、このバンドは誰かが命令を下すわけではなくって、それぞれが同じ立場からコラボレーションしながら曲を作っていくんだ。だからミックスが終了した段階で、「これはやり直そう」っていう曲をスタジオに持っていって、全員で自分達らしい音に作り替えたのさ。そうしてとても良かったと思う。

なるほど。「コラボレーションしながら」ということですが、インターポールはどのような形で作曲作業を進めていくのかを、もう少し具体的に教えてください。

Daniel:僕らの場合、ギター・リフひとつとか、すごくシンプルなものからスタートする。それにメロディを乗せたりベースをつけたりっていうようなバンド・アレンジを加えていくんだ。ディレクションは全員でやってるよ。きっかけは非常に自然発生的なんだ。だいたい僕が最初のアイデアを持っていくことが多いんだけど、それをアレンジしていくのはメンバー全員。僕らにとってはバンドであることが重要なわけで、その辺は全く関係ない人と曲作りをするのとは違うと思うね。で、最終的にポールが歌詞を書いてヴォーカルの方向性を決めるんだ。

ポールの書く歌詞について、どう評価していますか?

Daniel:僕はポールの歌詞が大好きだ。共感できるし、とても良い歌詞だと思うし、何よりこのバンドに合ってると思う。このバンドが「ベイビー、アイ・ラヴ・ユー」みたいな詞の曲をやるってのも考えられないしね。でも何故こういう歌詞なのかってことについてはポールに質問してよ。

はい。さて、日本から見る限り、ここ2〜3年のうちに、ニューヨークのミュージック・シーンが再び活気づいてきているような印象があるんですが、現地にいるあなた自身はどんな風に感じていますか?

Daniel:ん〜、僕らがバンドを始めた頃は、ニューヨークの街全体のバンド人口が非常に少なかったね。ニューヨークという街自体がバンドを生む環境ではなかったとも思う。音楽シーンに関して言うと、当時は誰もがヒップホップとエレクトロニック・ミュージックに夢中になっていた。バンドにとっては辛い環境だけど、だからこそ僕らはこの土地に魅力を感じたんだ。すでに何かが起きている場所で始めるより、何もない場所から始めることに魅力を感じたのさ。もし僕が今から音楽を始めるのなら、ニューヨークという場所は選ばないと思う。今はまたバンドが増えて、バンドを生む土地として認知されているからね。僕らは誰かの二番煎じにはなりたくない。常にオリジネーターでいたいんだ。

ニューヨーク出身のバンドというと、例えばストロークスとか、他にもヤー・ヤー・ヤーズとかライアーズとかいますが、彼らとは交流があったりするのですか?

Daniel:彼らのことは、あまり知らないんだ。小さな町の場合は、同じ地域で活動してると、同じバーに通っていたり、同じスタジオで練習してたり、同じクラブでプレイしてたりするものなんだろうけど、ニューヨークは大きな街だからね。もちろん知り合いのバンドもいるけれど、実際にはメディアがそれぞれのバンドを並べて言うような共通点はないと思うよ。今では友人も増えたし、他のバンドを見に行く機会も増えたけど。まあ、どのバンドも好きだよ。いいバンドだと思う。でも、それは彼らがニューヨーク出身だからっていう理由ではないんだ。良い音楽をやってるかどうかが重要なわけであって、どこの土地の人間かなんて気にしないよ。

では、テロによるダメージや市政の変化などが、ニューヨークの音楽シーンに何かしらの影響を与えたと思いますか?

Daniel:他の人のことは知らないけど、僕達に関して言えばイエスだ。テロを題材に曲を書いたりもしたし……。それは僕らにとって、僕らの任務を果たすっていう感覚だった。自分達の感情を表現したんだ。僕らは音楽を作るのが仕事であって、その中でテロを題材にして曲作りをするのは僕達に必要なことだと思ったからね。だからといって、「今、こういう政治状況にある、だからそれについて曲を作らなければ」なんてことは思っちゃいないけど。

わかりました。ところで、あなた達はフガジのファンだと聞いています。あなた達自身もインディペンデント・レーベルと契約していますが、やはりインディペンデントな立場で活動をすることは自分達にとって重要だと考えているのでしょうか?

Daniel:ああ、でもインディペンデントというのは……うーん、若い頃は物事に白黒はっきりつけたがるから、例えば「メジャー・レーベルに対するところのインディペンデント・レーベル」とかって考えがちだけど、実際のインディペンデントというのは自分自身の舵取りを自分自身でする、つまり自らの頭で考えて自らが行動する、ということなんだ。僕達は信念には逆らえない。それはもう根本的に不可能なことなんだよ。自分にとって不自然なことはやってて気持ちが悪いし、やりたくない。誰だって最初は曲を作るのが好きだっていうところから全てが始まって、それを実際にプレイしたいからバンドを組む。それからアルバムを作ってツアーをする……ここまでは非常に自然な流れだと思うけど、そこにプレスだの何だのっていうのが登場して全てが不自然な方向へと曲がっていくんだよね。でも僕らがこうやって音楽をやっている究極的な理由は、曲を作るのが好きだっていうこと。音楽が好きだっていうこと。それ以外のことは僕らがアクションを起こしたわけではなく、後からついてきたものなんだ。これは最初っからそうだったし、今後も自分達が正しいと思ったことしかやらないよ。僕らはテレビにも出ないし、映画のサントラも作らない。僕らは誰からも指示されない。自分達がやりたい事だけをやっていくんだ。

それでは最後の質問なんですけど、初めて日本を訪れた感想を教えてください。

Daniel:すごく気に入ったよ。到着してからまだ48時間くらいしか経ってないけど、みんな礼儀正しいし、敬意を持って接してくれる。街並みや土地の風土はまだ見れていないけれど、僕らのように旅から旅への生活をしていると、その土地に対する感想は人々の態度で決まるんだ。人々がその土地を作っているんだからね。僕はよくクラブに行くんだけど、そこで印象に残るのはその場にいる人達だろ? 日本の人達は非常に礼儀正しいけど、他の文化圏の人達……特にアメリカ人はそういうところがないからね。とてもシンプルなことなんだけど、そういった細かい気使いに感動するんだ。うん、今のところ、日本にはいい印象を持ってるよ。

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