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London, 2004.11.11
text by Yoshiyuki Suzuki
interview and translation by Erika Yamashita

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最新作『BEYOND ELYSIAN FIELDS』のリリースに合わせ、ついに念願叶ってヒュー・コーンウェルにインタビューすることができた。もう何も言うことはない……あ、ひとつだけあった! 日本国内でのアルバム・リリース元を探してます。ご興味を持たれたA&R/レーベル・オーナーの方はお気軽にご連絡ください。あと日本でのソロ公演を企画してくださる方も。マジです。よろしく。

「ストラングラーズは『黒豹』の時点で、全員が大人になって独立した個人になってしまったんだ。何か悪いってわけじゃない。そういうものなんだよ。物事は変わっていくし、そのことを受け容れていかなきゃならない。新しい組合せが生まれて、人生は進んでいく。それを拒否するってことは人生を拒否するってことだからね」

ストラングラーズの頃からファンになって約4半世紀、ついにあなたにインタビューすることができて本当に光栄です。まずは新作『BEYOND ELYSIAN FIELDS』について質問します。今回のアルバムはアメリカに渡ってニューオーリンズで録音、ニューヨークでミキシングされて完成したそうですね。渡米前に曲は書き上がっていたとは思いますが、そうした創作環境がアルバムの作風にどんな影響をもたらしたと自分では感じていますか?

Hugh:すごく手早いレコーディングだったんだ。その前に1ヵ月ぐらいかけてベーシストとドラマーと3人でアレンジを固めていたから、実際にスタジオに入った時には準備万端整っていて、ただ演奏すればいいという感じだった。それでも、レコーディングが終わった時点で、何かまだ足りないものがあるかなという感じはしてたんだよね。ここはもう少しギターを入れなきゃとか、ピアノだとかオルガンだとか少しだけどもそういうのがあってさ。ともかく、ニューオーリンズとニューヨークという2箇所の土地でやったのはとてもよかったと思うよ。もともとはトニー・ヴィスコンティと全部ニューヨークでやる心積もりだったんだけども、彼はフィン・ブラザーズの仕事が終わってなくて「申し訳ないけど手を放せないんだ。半年後――つまり翌年まで全面的にプロジェクトを動かすか、それとも最初の半分はニューオーリンズにいる僕の友達と一緒にやるという手もあるけど」と言われてね。で、「その友達はダニー・ケイダーといってもともとニューヨーク出身のやつだからニューオーリンズから呼び寄せられるよ」と提案されたんだけど、そこで「待った待った、俺たちがニューオーリンズに行くっていうのはどうだい」って話になってさ。で、本人に電話してみたら、これがまさにぴったりの仕切りでね。というのも彼は3週間後にニューオーリンズで結婚することになってて、今ニューヨークに消えたらかみさんにブッ殺されそうだし、こっちに来てもらえたら実に有難いと。そういうわけでニューオーリンズでやることになったんだけど、すごく良かったと思ってる。ずっとニューヨークでやるというのとはまた違う雰囲気が出たんじゃないかな。ニューオーリンズはとてもリラックスした土地で、ニューヨークとは全然違うからね。ニューヨークはニューヨークでエネルギッシュでいいんだけど、ニューオーリンズのエネルギーというのも好きだな。すごく音楽に溢れてる感じなんだ、あの街は。どこへ行っても24時間音楽があって、その雰囲気はアルバムにも貢献したと思う。ニューオーリンズってのはなんというか音楽の学校みたいなところで、学ぶことだらけという感じでさ。それにケイジャン・ミュージックやルーツ・ミュージックなんかの歴史的背景もあるし。

ダニー・ケイダーとの仕事はどうでした?

Hugh:すごく良かった。ほら、結婚式前にニューオーリンズを離れずに済むからそれだけでも彼はハッピーだったし、ハッピーな人間と仕事するのは楽だよ。とても気が合ったし、うちのドラマーとベーシストもロンドンから飛んできてね。10日しか時間がないんだけど、と言うと、彼は大丈夫大丈夫ってすごくリラックスしたムードでさ。リラックスした人なんだよね。ダニーはニューヨークからニューオーリンズに移り住んで、南部のノリを吸収したんだよ。

彼はマイ・モーニング・ジャケットも手がけていますよね。

Hugh:うんうん。安心してレコーディングを任せられるっていう感じだったよ。それに、トニーが途中から引き継ぐってことについても異存なかったみたいだし。トニーも実際にはミキシングだけをやったというと語弊があるんだ。ニューヨークに行ってから結構いろいろアレンジ面で手を加えたりしたんだよ。そういうのはトニーと一緒にやり始めた時点で見えてきたことだったからね。一曲一曲聴き直して、曲のポテンシャルが最も引き出せるように必要なものを足していったんだ。で“Cadiz”なんか、聴いたらいきなり(トニーが)興奮してさ、「こいつは俺のベース・フルートを入れなきゃ!」って。何だいそりゃ、って訊いたら「待て待て、見たら納得するから」って。ボウイの『世界を売った男』で使ったっていう、その楽器が実際に登場したらほんとに巨大なフルートで、まるでサーカスか何かから持ってきたみたいだったよ。人間の声みたいなすばらしい音が出るんだ。というわけで……いや話が逸れたけど。

トニー・ヴィスコンティの話が出たところで、彼と仕事したのは本当に久々ですよね。

Hugh:そうなんだよ。

あなたとの縁がずっと切れていた80年代後半からしばらくの間、ヴィスコンティの作るサウンドは私には少し古いものに聴こえました。しかし90年代も後半に入ってきた頃から、時代が一周したのか、ストラングラーズの『ラ・フォリー』と『黒豹』のサウンド・プロダクションが再び新鮮さを取り戻して聴こえるようになったんですね。そういえばボウイも最近作で久々に彼と一緒に仕事しましたが、なんとなく「今こそ彼の作る音が旬だ!」と感じるようなところがあったりしたのでしょうか?

Hugh:うん、自伝(『A Multitude of Sins』)の最後にも書いたんだけど、人生は環を描いて動いていてその一周の仕方は人によって速度が違うんだよね。で不思議なことにトニーの円周と僕の円周は今ちょうど同じ地点でぶつかったんだ。そう、君の言うとおりだと思うよ。

これまでのソロとしてのキャリアだけを見ても、ローリー・レイサム、ゲイリー・ランガン、クライヴ・ランガー&アラン・ウィンスタンレー、クリス・シェルダン、アンディ・ウォラス、ジョー・チカレリといった、そうそうたる面々と仕事をしてきたあなたですが、プロデューサーやエンジニアを選出する基準はどういうところに置いているのでしょう?

Hugh:その時に何を求めているか、何が必要かによるね。ストラングラーズを辞めた後『Wired』っていうアルバムを作ったんだけれども、その時に俺は、昔スティッフ・レコードをやってたデイヴ・ロビンソンのレーベルにいたんだよ。で、当初はローリー・レイサムと会ったり、いろいろ曲の話なんかもしてて良い感じだったんだけど、デイヴ・ロビンソンのところに新作の話をしに行ったら『もう一人紹介したいプロデューサーがいるからぜひ会ってくれ』って言われて、それがアート・オブ・ノイズのゲイリー・ランガンだったんだ。デイヴは俺とゲイリーが組むっていうアイデアで盛り上がってるな、っていうのが分かったよ。そうなりゃ、盛り上がった雰囲気に乗るしかないよな。もし俺が「いや俺はローリーとやりたいから」って言い張ったら、きっとデイヴは盛り下がっちゃって俺のレコードに対する興味も失せちゃうからね。レコードを作ったらそれを誰かに預けて出してもらうわけで、その段階で興味を持ってもらえなかったらやる意味がない。だからあれはすごく実利的な選択だった。で、あのアルバムを出した後いくつか面倒なことがあったりして、ようやく次の『Guilty』を出すという段になって思ったんだよ。前のやつは殆どローリーと一緒に作りかけてたんだよな、もしかしたら今度こそやってみるべきなんじゃないのかなって。そうして彼に電話したら「この前のアルバムはどうして作らせてくんなかったんだよ」って言うから、「いやぁ悪い悪い、あん時は世知辛い話があってさ。でもそれはもう終わった話だから、今度こそ一緒にやってくんないか?」って頼んでみると、「もちろん! 電話くれるの待ってたんだぜ」ってことになって。『オーラル・スカルプチャー』をやって以来「いつかまた何かの形で一緒に仕事しような」って言ってたし、俺がバンド時代にスタジオでソロを作ってる時も様子見に来てくれたりして、でもそん時の『ウルフ』も別のプロデューサーとやったから彼はそれでちょっとガッカリしてた。だから『Guilty』の時はお互い十分に準備できてたんだよね。その経験がすごく楽しかったから次の『Hi-Fi』も一緒にやったんだ。ローリーとは今も連絡とりあってるし、友達づきあいなんだよ。仕事するなら友達づきあいの出来る奴がいいな。ゲイリー・ランガンとはちょっとつきあいがなくなっちゃったけど、一緒に仕事してる時はすごくうまくいってた。やっぱりプロデューサーは友達になれないと。一緒に音楽作って同じ経験をしていくんだからね。トニーともそうさ。次のレコードを誰とやるかはまだ全然わからない。そこには時間的なタイミングっていうファクターも大いにあるからね。俺は来年また新しいアルバムを作るかもしれないけど、そのとき相手が2年後まで予定が詰まってたらどうしようもないだろ? でも、いつでも昔やった人とまたやるのはいいよ。ローリーともまた仕事したいな。

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